著者
中澤 千磨夫
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.44-56, 1991-11-10

後藤明生の『壁の中』は、<小説の小説>として、世界の最前線に位置付けられる。その要諦を二点挙げる。まず、小説という枠組を拡大したこと。具体的には、小説内で本格的な文学論が展開されていることである。本来、小説はかなり自由な(ルーズな)ジャンルであったはずで、本小説はかような地平を回復した。次に、本小説の結構自体が、長編小説の生成の一つの秘密を明かしていることである。それは、連続せる逸脱に、筋を展開させる力を持たせることであった。またこれは、方法自体を小説化する冒険でもあったのだ。

言及状況

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『壁の中』を荷風研究者が『壁の中』風に論じた「方法の小説あるいは後藤明生の華麗な冒険 『壁の中』へ」中澤千磨夫も読めなくなってる。まあこれは『荷風と踊る』に収録されてるけど。 https://t.co/ciCOIFY5SL

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