- 著者
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田中 貴子
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.6, pp.1-11, 1991-06-10
網野善彦氏の『異形の王権』以降南北朝時代への関心が高まっているが、特に文観と立川流と呼ばれる真言密教の一派については、それぞれ邪教、妖僧として特別視される傾向があった。しかし、こうした文観像は、彼を非難するために[ダ]枳尼天法の行者の姿をモデルとして作り出されたものであり、その背後には[ダ]枳尼天法をめぐる「異類」と性の問題が存在している。本論は、『渓嵐拾葉集』の説話を通して、「異類」と性の力が中世王権の体制の中に組み込まれている様相を探るものである。