- 著者
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岡田 一祐
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.97-83, 2014-10-01
一八八六年、文部省は尋常小学校読書科の教科書(読本)における平仮名字体の導入段階を整理し、ふたつの段階を設け、見本となる読本も刊行を始めた。まず、いろは歌手本に用いられる平仮名を学び、ついでそのほかの平仮名字体を導入したのである。民間出版者の読本も数年内にこの順序に従った。従来注意されてこなかったこの方針は、八六年前後の読本の平仮名字体の観察からあきらかになった。文部省著作教科書にまず現れたこの方針に、すべての民間出版者が自発的に従ったわけでないことは、八六年以降もこの順序どおりでない読本があること、そのなかに検定で不適と指摘されたもののあることから分る。これらの検定意見が採用されなかったことは、この方針が全面的に受け入れられるまでに数年を要したことを説明する。根拠となる法の欠如と消極的な検定により強制しがたかったのである。この方針の確立は一九〇〇年の平仮名字体統一の先蹤と位置附けられる。