- 著者
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色川 大輔
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.82-67, 2014-10
本稿は本居宣長『詞の玉緒』六之巻の助動詞「らむ」についての説である「かなの意に通ふらん」の所説から、『古今和歌集』七番歌と八四番歌についての解説を取り上げ、その説の拠って来るところについて、従来あまり関連が調査されていない歌学書や古典文学注釈書の解説との関連を探った。結果、七番歌について従来『顕注密勘抄』を引いているとされるところについては契沖『古今余材抄』とそれに後続する荷田春満や賀茂真淵の『古今和歌集』注釈に触発されたもの、八四番歌を「しづ心なく花のちるかな。何とてしづ心なく花のちるらん」と解するのは、賀茂真淵の『百人一首』注釈の説を取ったものであると結論した。そして以上の考証を通じ、本居宣長が『詞の玉緒』において当時新進の学問であった国学の古典注釈の成果を己の語法学説に取り入れたありさまについて考えた。