著者
色川 大輔
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.82-67, 2014-10

本稿は本居宣長『詞の玉緒』六之巻の助動詞「らむ」についての説である「かなの意に通ふらん」の所説から、『古今和歌集』七番歌と八四番歌についての解説を取り上げ、その説の拠って来るところについて、従来あまり関連が調査されていない歌学書や古典文学注釈書の解説との関連を探った。結果、七番歌について従来『顕注密勘抄』を引いているとされるところについては契沖『古今余材抄』とそれに後続する荷田春満や賀茂真淵の『古今和歌集』注釈に触発されたもの、八四番歌を「しづ心なく花のちるかな。何とてしづ心なく花のちるらん」と解するのは、賀茂真淵の『百人一首』注釈の説を取ったものであると結論した。そして以上の考証を通じ、本居宣長が『詞の玉緒』において当時新進の学問であった国学の古典注釈の成果を己の語法学説に取り入れたありさまについて考えた。
著者
富田 幸代 亀山 敦史 渡邉 直子 牧野 麻子 高山 沙織 細井 隆太郎 勢島 典 中西 万理子 色川 大輔 石井 善仁 杉山 利子 齋藤 淳 角田 正健
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.15-23, 2013-03-28 (Released:2014-04-10)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

本研究では,口臭外来を受診した患者の実態,口臭質問票の回答および客観的評価である臭気測定器(オーラルクロマTM)による口臭診断との関連性を分析し,心理的口臭症患者の不安障害の傾向を捉えることができるか検討することを目的とした。対象者は,2009 年 1 月から 2011 年 12 月までに東京歯科大学千葉病院口臭外来を受診した患者 363 名とした。口臭質問票の項目の一部(性別,年齢,口臭の自覚の有無,口臭を意識した時期,口臭を意識するようになった契機,口臭による社会生活や家庭生活への影響,口臭について相談できる人の有無)とオーラルクロマTMによる検査結果の関連性を分析した。臭気測定器による分析は,臭気物質の中で口臭の強弱と強い相関が認められるCH3SH 濃度を指標とし,対象者を臭気レベルを下げるための治療が必要か否かにより,口臭なし群と口臭あり群に分けた。その結果,対象者のうち口臭を自覚する者は 8 割を超えていたが,そのうち約半数は口臭なしと診断され,口臭の自覚と口臭の有無との明確な関連性は認められなかった。口臭の診断,治療には心理的側面も含めた様々な面からのアプローチが必要であると思われた。特に心理的口臭症患者への対応では,エゴグラム等の分析を待たずに,口臭質問票の一部の項目と口臭測定結果から,不安障害を有する患者の傾向をある程度捉えることが可能であると考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(1):15-23, 2013