- 著者
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諏訪 春雄
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.75-84, 1986
文学における虚構を同時代の意識的思索と無意識試行の両面から追った。前者は『三体詩』にはじまる虚実論を、後者は本歌、本説、本文、本意、世界などを考察の対象としたが、帰一するところは典拠の問題となる。典拠は虚構のパターン化であり、作り手と受け手が一体となって想像世界に遊ぶことである。この伝統尊重の可塑的な関係を共犯と呼ぶなら、これと対比される個我尊重の自己完結的な関係は侵犯と呼ぶことができる。