- 著者
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稗田 健志
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.2, pp.28-40, 2015-01-25
20世紀末辺りに社会政策の一つの転換点があったことは,多くの研究者に共有された認識であろう。しかしながら,そうした変化の内実をどのように特徴付ければよいかという問いに対しては,いまだ定まった解はない。上述の社会政策の変化を「新自由主義」の発露とみる論者は,社会給付における就労要件の強化や給付条件の厳格化といったワークフェア的側面を取り上げ,そこに資本側の労働者に対する市場を通じた規律の強化をみる。しかし,近年の社会政策の変化はそうした労働規律の強化にとどまらない。ドイツのハルツ改革やフランスのRSAにみられるように,賃労働によらない社会的包摂が進められているという側面も存在する。これをとらえて高田[2012]は「非能力主義的平等主義」と呼ぶ。本報告はこの二つの見方-「新自由主義」と「非能力主義的平等主義」-のどちらが妥当であるか,ルクセンブルグ家計調査(LIS)のマイクロデータの分析から答えることを試みる。具体的には,1980年代から2000年代半ばまでのスウェーデン,オランダ,ドイツ,フランス,イギリス,イタリアという欧州6ヶ国における家計データを分析し,「労働人口にしめる非就業者の割合」や「非就業者が受給する社会保障プログラムの所得代替率」といった指標の時系列での変化をみていく。