著者
鈴木 亘
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策学会誌 (ISSN:24331384)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.118-129, 2005-09-30 (Released:2018-04-01)

This study focused on the anti-economic measures of the Osaka welfare allowance program and calculated its effect and influence on the local economy. Using the example of Osaka, I performed calculations with concrete data of Osaka. As a result, I determined that in 2003, the welfare allowance of 206.0 billion yen finally caused demand increase in the local economy of 345.3 billion yen. On the other hand, a reduction of income taxes only had an economic influence of 241.7 billion yen, and also, public construction spending was only 337.3 billion yen. Therefore, welfare allowances are understood to be a superior policy for stimulating the economy. Furthermore, when calculating the effect upon creating employment, only 25,474 employment positions were created by public constructing spending, and 19,560 employment positions were created by a reduction of income taxes, whereas the welfare allowance program created 27,685 employment positions.
著者
二木 立
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.12-21, 2009

小泉政権の医療改革の新しさは,医療分野に新自由主義的改革方針を部分的にせよ初めて閣議決定したことである。それにより政権・体制内の医療改革シナリオが2つに分裂し,激しい論争が戦わされたが,最終的には「骨太の方針2001」に含まれていた3つの新自由主義的医療改革の全面実施は挫折した。他面,小泉政権は1980年代以降続けられてきた「世界一」厳しい医療費抑制政策をいっそう強め,その結果日本は,2004年には医療費水準は主要先進国中最低だが,患者負担は最高の国になった。安倍政権は大枠では小泉政権の医療費抑制政策を継承したが,ごく部分的にせよ,行き過ぎた医療費抑制政策の見直しも行った。さらに,政権・体制内での新自由主義派の影響力は急速に低下した。日本の医療制度の2つの柱を維持しつつ,医療の質を引き上げるためには公的医療費の総枠拡大が不可欠であり,そのための主財源としては社会保険料の引き上げが現実的である。
著者
嶋崎 量
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.75-82, 2015-03-30 (Released:2018-02-01)

若者を使い潰すブラック企業の被害救済と根絶のため,若手弁護士を中心に約200名の弁護士によりブラック企業被害対策弁護団が設立され,活動している。具体的な活動内容は,ブラック企業被害者に対する相談活動や,個別事件の訴訟活動だけでなく,ブラック企業対策プロジェクトを通じて他分野の専門家と連携しながら,ブラック企業被害に関する各種セミナーや相談会の開催,書籍の執筆,学校現場などでのワークルール教育の実施など多様な社会的活動を行っている。ブラック企業被害者を救済し,ブラック企業を根絶するためには,本稿に掲載するような具体的な被害実例を社会に周知させ,多くの労働者が声をあげやすくする状況を作り出すだけでなく,様々な専門家と連携して,社会的な取り組みを進めていくことが重要である。
著者
二木 立
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.12-21, 2009-04-25 (Released:2018-02-01)

小泉政権の医療改革の新しさは,医療分野に新自由主義的改革方針を部分的にせよ初めて閣議決定したことである。それにより政権・体制内の医療改革シナリオが2つに分裂し,激しい論争が戦わされたが,最終的には「骨太の方針2001」に含まれていた3つの新自由主義的医療改革の全面実施は挫折した。他面,小泉政権は1980年代以降続けられてきた「世界一」厳しい医療費抑制政策をいっそう強め,その結果日本は,2004年には医療費水準は主要先進国中最低だが,患者負担は最高の国になった。安倍政権は大枠では小泉政権の医療費抑制政策を継承したが,ごく部分的にせよ,行き過ぎた医療費抑制政策の見直しも行った。さらに,政権・体制内での新自由主義派の影響力は急速に低下した。日本の医療制度の2つの柱を維持しつつ,医療の質を引き上げるためには公的医療費の総枠拡大が不可欠であり,そのための主財源としては社会保険料の引き上げが現実的である。
著者
久保田 裕之
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-123, 2011-06-01

本稿では,「家族の個人化」と呼ばれる状況のもと,家族福祉論をその正当化根拠から批判的に検討することによって,家族か/個人かという政策単位に関する議論を一歩進めることを目的とする。具体的には,政策単位をめぐるこれまでの議論を概観することで,家族のニーズを個人の選択に還元する個人単位化論も,家族自体をある種のニーズとして扱い続ける家族福祉論も,「家族の個人化」と家族福祉の間の緊張関係を克服できないことを示す。次に,家族福祉とニーズ論との関係を整理することで,ニーズ概念の限定性と優先性から,ニーズに対する福祉の<過小>と<過剰>という二つの危険を抽出し,家族自体をニーズと捉えることのパターナリズムを批判する。その上で,フェミニスト法学・倫理学における<依存批判>の議論を援用することで,従来の家族に期待されてきたニーズの束を分節化し,家族を超えて福祉の対象とする新たなアプローチを提唱する。
著者
大沢 真理
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.12-28, 2017-06-05 (Released:2019-08-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

税・社会保障の純負担などを比較ジェンダー分析し,相対的貧困という側面において日本の生活保障システムの特徴を浮き彫りにしたい。貧困は当事者にとって深刻であるだけでなく,社会の安定を損ない経済成長も阻害するなど,恵まれた層にとっても克服対象である。相対的貧困概念については欠点も指摘されているため,この指標の意義を再確認する。公的社会支出以外の官民の福祉努力の機能を推定したうえで,OECD諸国の最近の貧困率と政府の福祉努力の関連を検討する。日本では低所得層こそ租税抵抗が大きくても不思議ではないこと,負担面を国際比較すると,日本のひとり親は税・社会保障制度によって虐待されているといっても過言ではないこと,所得格差の緩和においてタックス・ミックスよりも給付が重要と指摘されるが,貧困の緩和について累進的直接税の効果を軽視するべきではないことなどが,明らかとなる。そして,本特集全体から政策的含意を導いて結びに代える。
著者
垣田 裕介
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.41-55, 2016

2015年4月から実施されている新たな生活困窮者自立支援制度は,生活保護受給に至っていない生活困窮者に対する包括的・個別的支援を目的としており,支援方法の中心に現金給付ではなく支援サービス給付を置いている点に特徴がある。新制度の実施主体である地方自治体は,制度の事業や関連資源をいかに組み合わせて対処するかを選び取っていくこととなり,事業推進の企画力や,総合相談や就労支援等の実行力が問われている。本稿では,新制度の実施に先立って2013〜14年度に実施されたモデル事業における自治体の取り組み事例等にもとづき,生活困窮者の実像,具体的な支援の内容や結果,自治体が直面する諸課題などを明らかにする。その際,マクロの制度を実際に対象者の生活やニーズに機能させる,社会政策の実質化のプロセスとして,自治体での運営(メゾ)や個別的なケースの支援実践(ミクロ)のレベルを射程に入れて分析や論点提起を行う。
著者
柴田 徹平
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.134-145, 2015-03-30 (Released:2018-02-01)

バブル経済崩壊後,建設市場が急速に縮小する中で,企業が一人親方を安価な労働力として活用するようになった。こうした中で,先行研究において一人親方の賃金の低さが指摘されてきたが,生活保護基準以下の賃金しか得られない一人親方の量的把握を行った研究はない。従って,本研究の目的は,生活保護基準を下回る賃金を得ている一人親方の量的把握を行うことである。本研究で明らかになったのは,以下の点である。第一に一人親方の42.4%にあたる人の賃金が生活保護基準を下回っていること,第二に,生活保護基準を下回る一人親方の比率は,高齢世帯と就学児童のいる世帯で特に高いこと,第三に,生活保護基準を下回る一人親方の比率は,一般労働者より低いとはいえず,職種によっては一般労働者よりも高いこと,である。
著者
坂倉 昇平
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.68-74, 2015-03-30

「ブラックバイト」が社会問題化している。こうした職場では,本人の意思を尊重せずに過重な仕事や責任を課せられている。さらには,命令に従わない学生たちが脅されるような問題も起きている。だが,そこで寄せられる学生たちの声の多くは,「自分は仕事を辞めることができるか」というものだ。NPOや労働組合,弁護士らは,単に彼らを辞めさせるだけでなく,労働問題の解決をもたらす支援が必要とされている。
著者
五十嵐 仁
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.38-48, 2009-09-25 (Released:2018-02-01)

80年代の臨調・行革に始まる新自由主義政策の下で労働分野での規制緩和も進められてきた。このような労働の規制緩和はいくつかの段階を経て2000年前後から本格化し,小泉政権の下で雇用・労働政策は大きく変容することになった。本稿の課題は,このような新自由主義政策の具体化としての労働政策の変容をめぐるアクター間の配置と構造を検討し,規制緩和の現段階と対抗関係を明らかにすることにある。とりわけ,2006年以降の「反転の構図」に注目しながら,それが何故どのようにして生じてきたのか,最近の「潮目の変化」を生み出した背景と要因の解明に焦点をあてることにしたい。
著者
白瀬 由美香
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.102-112, 2011-06-01 (Released:2018-02-01)

本稿は,英国における看護師の職務領域の拡大について,特に医薬品の処方への従事にまつわる問題を中心に検討した。看護師の役割に関しては,現在日本でも活発に議論されていることから,アメリカ型のナース・プラクティショナーの英国への導入経緯,処方などの拡大された業務を担う看護師の現況とその制度的背景に関して考察を行った。職務拡大の要因は様々あるが,養成システムの改革および上級資格の創設,NHS改革による地域包括ケア推進の2つが相互に関連し合い,処方看護師の導入等の多職種機能の再編がもたらされた。処方看護師はいまだ少数であるものの,患者の医薬品へのアクセスの改善が評価されている。一連の改革において重要だったのは,看護助産審議会という国から独立した自主規制機関が教育・資格登録・安全管理に責任をもつ点,業務範囲の設定が法律ではなく雇主との職務記述書に任されている点であり,それらが看護師制度の基盤となっていた。
著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.99-111, 2015-07-25 (Released:2018-02-01)

本稿は2014年6月に行われた社会政策学会保健医療福祉部会のテーマ別分科会のなかで行った発表を元に作成されたものである。当初の発表では,合理的配慮の規定についての基本的部分を確認しつつ,実際に障害者と雇用主の間でどのように合理的配慮を形成していくのかという点について,実務的な観点から整理し,その課題を明らかにしていった。本稿では,その内容を踏まえた上で,分科会において示されたいくつかの質問,特に労働能力と賃金と配慮の関係性について焦点を移している。そして,合理的配慮の規定において重要な鍵となる,しかしこれまで日本においてあまり議論されてこなかった基幹的能力の概念を軸に,この問いに対する一つの答えを示すことを試みている。
著者
萩原 久美子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策学会誌 (ISSN:24331384)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.209-230, 2006-03-31 (Released:2018-04-01)

There has been much discussion regarding the measures required to disseminate child-care leave or family leave in the workplace, and correct gender disparities found in its application. However, "corporate climate," which has been pointed out as a barrier to said objectives, has not been analyzed with sufficient attention given to the dynamics that constitute it in the workplace. More importantly, it is a fact that the multi-layered gender issue that is both institutionally and historically embedded in child-care leave in Japan has yet to be scrutinized. This paper describes the bargaining process of the child-care leave contract negotiated by the Japan Telecommunications Workers' Union (in 1965), representing the initial case of child-care leave in Japan. This momentous case has not been studied independently, even though it is referred to as the pioneering work-family challenge. Thus, with little known about its actual process, the background of this contract is perceived simply as a response to the needs of working women who numbers rapidly increased in 1960s. This perception is based only on the domestic gender division of labor. With the main focus being on the forepart of the process or earlier discussions within the union, and with attention given to the gender dynamics among members of the workplace, this paper presents the following arguments. First, the concept and design of policy were devised from the idea of job security for telephone operators as a measure taken by the labor side to counter restructuring and technological innovations. Secondly, what constituted "family responsibilities" arose from motherhood ideology based on the modern family model that proliferated in the 1960s. Accordingly, the issue of leave itself has developed to include gender constraints within its application.
著者
金 成垣
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.21-33, 2013-12-30

本論文の目的は,「東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づける」ことである。壮大な目的であるが,そのためにここで解明すべき具体的な問いを2点設定すると,1つは,「なぜ」東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるのかということであり,もう1つは,「いかに」東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるのかということである。前者が,既存研究の限界を認識し,東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけることの理論的意味を明らかにする問いであれば,後者は,既存研究の限界を乗り越え,東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるための方法論的視点を明らかにする問いである。本論文においては,それぞれについて考察を行うことによって,「東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づける」ことの理論的意味(第1節)と方法論的視点(第2節)を明らかにし,それをふまえ,今後の本格的な東アジア福祉国家研究のための課題(第3節)を示すことを具体的な目的とする。
著者
大沢 真理
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.74-85, 2014-03-31
被引用文献数
1

リーマン・ショックと東日本大震災は,日本の社会・経済の脆弱性を露わにした。とはいえ日本ではリーマン・ショックの10年前から,年間3万人以上が自殺する事態が続いていた。出生率も世界最低レベルに低迷し,相対的貧困率もOECD諸国でワーストクラスにあった。本稿は生活保障システム論にガバナンスという概念を導入し,また脆弱性のなかでも所得貧困に注目したい。所得貧困という指標の意義を考察したうえで,福祉国家の機能的等価策の効果とともに,所得移転が貧困を削減する度合いについて,国際比較する。また地域間所得格差にかんする研究成果に目を配る。結論的に,日本の税・社会保障制度はたんに機能不全というより逆機能していると主張する。しかもそこには,「男性稼ぎ主」世帯にたいしてその他の世帯が冷遇されるというジェンダー・バイアスがある。それは,多就業世帯が多数を占める農山漁村のような地域を冷遇するバイアスでもある。
著者
金子 良事
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.48-58, 2010-12-20

本稿では社会政策を「社会秩序の維持,ないし醸成を目的とした政策」と定義した。近年,日本ではヨーロッパのsocial policyの訳語に社会政策が使用されているが,研究史を踏まえるならば,これは社会福祉政策と訳すべきである。日本では歴史的に社会政策の英訳はsocial reformであった。本稿ではこの点をさらに掘り下げ,実際に明治以降に行われてきた政策の背後には社会改良主義だけではなく,社会秩序の維持ないし醸成という動機があったこと,そして,そのような施策はドイツの古いポリツァイ思想と通底していることを指摘した。また,日本における戦後の社会福祉政策においては社会権が基盤にされており,究極的には個人が中心になる。社会秩序という考え方によれば,社会政策は個人の社会権だけでなく,社会そのものに注目し,社会福祉政策を包含する概念として捉えるべきであることが示唆されている。
著者
志賀 信夫
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.165-176, 2013-10-30

社会的排除という言葉が使われ始めて久しいが,この社会的排除への取り組みに関する言説をLevitas[2005]は三つに類型化した。現実の社会的包摂戦略はこのなかでも「仕事」を契機として排除された者を統合しようとする言説をその基礎としている。ヨーロッパにおけるワークフェア戦略がまさにそれである。宮本[2006 ; 2009]はワークフェアとアクティベーションを区別し,後者を肯定的に評価している。確かにそれは,実存する社会的包摂戦略のなかではモデルとされるべきものである。しかし,本稿ではこのアクテイベーションの限界を批判的に検討しその連続性において,Lister[2004=2011]が紹介している「社会的包摂ではなく社会参加を」という要求に沿った新たな戦略への結節点を模索する。その際に新たな道の一つとしてAtkinson[1995=2011 ; 1998]の提案する「参加所得」を挙げ,これが必ずしもベーシック・インカムの妥協ではなく,包摂戦略の積極的代替案であることに触れていく。