著者
鈴木 亘
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策学会誌 (ISSN:24331384)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.118-129, 2005-09-30 (Released:2018-04-01)

This study focused on the anti-economic measures of the Osaka welfare allowance program and calculated its effect and influence on the local economy. Using the example of Osaka, I performed calculations with concrete data of Osaka. As a result, I determined that in 2003, the welfare allowance of 206.0 billion yen finally caused demand increase in the local economy of 345.3 billion yen. On the other hand, a reduction of income taxes only had an economic influence of 241.7 billion yen, and also, public construction spending was only 337.3 billion yen. Therefore, welfare allowances are understood to be a superior policy for stimulating the economy. Furthermore, when calculating the effect upon creating employment, only 25,474 employment positions were created by public constructing spending, and 19,560 employment positions were created by a reduction of income taxes, whereas the welfare allowance program created 27,685 employment positions.
著者
久保田 裕之
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-123, 2011-06-01

本稿では,「家族の個人化」と呼ばれる状況のもと,家族福祉論をその正当化根拠から批判的に検討することによって,家族か/個人かという政策単位に関する議論を一歩進めることを目的とする。具体的には,政策単位をめぐるこれまでの議論を概観することで,家族のニーズを個人の選択に還元する個人単位化論も,家族自体をある種のニーズとして扱い続ける家族福祉論も,「家族の個人化」と家族福祉の間の緊張関係を克服できないことを示す。次に,家族福祉とニーズ論との関係を整理することで,ニーズ概念の限定性と優先性から,ニーズに対する福祉の<過小>と<過剰>という二つの危険を抽出し,家族自体をニーズと捉えることのパターナリズムを批判する。その上で,フェミニスト法学・倫理学における<依存批判>の議論を援用することで,従来の家族に期待されてきたニーズの束を分節化し,家族を超えて福祉の対象とする新たなアプローチを提唱する。
著者
坂倉 昇平
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.68-74, 2015-03-30

「ブラックバイト」が社会問題化している。こうした職場では,本人の意思を尊重せずに過重な仕事や責任を課せられている。さらには,命令に従わない学生たちが脅されるような問題も起きている。だが,そこで寄せられる学生たちの声の多くは,「自分は仕事を辞めることができるか」というものだ。NPOや労働組合,弁護士らは,単に彼らを辞めさせるだけでなく,労働問題の解決をもたらす支援が必要とされている。
著者
金 成垣
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.21-33, 2013-12-30

本論文の目的は,「東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づける」ことである。壮大な目的であるが,そのためにここで解明すべき具体的な問いを2点設定すると,1つは,「なぜ」東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるのかということであり,もう1つは,「いかに」東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるのかということである。前者が,既存研究の限界を認識し,東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけることの理論的意味を明らかにする問いであれば,後者は,既存研究の限界を乗り越え,東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づけるための方法論的視点を明らかにする問いである。本論文においては,それぞれについて考察を行うことによって,「東アジア福祉国家を世界史のなかに位置づける」ことの理論的意味(第1節)と方法論的視点(第2節)を明らかにし,それをふまえ,今後の本格的な東アジア福祉国家研究のための課題(第3節)を示すことを具体的な目的とする。
著者
金子 良事
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.48-58, 2010-12-20

本稿では社会政策を「社会秩序の維持,ないし醸成を目的とした政策」と定義した。近年,日本ではヨーロッパのsocial policyの訳語に社会政策が使用されているが,研究史を踏まえるならば,これは社会福祉政策と訳すべきである。日本では歴史的に社会政策の英訳はsocial reformであった。本稿ではこの点をさらに掘り下げ,実際に明治以降に行われてきた政策の背後には社会改良主義だけではなく,社会秩序の維持ないし醸成という動機があったこと,そして,そのような施策はドイツの古いポリツァイ思想と通底していることを指摘した。また,日本における戦後の社会福祉政策においては社会権が基盤にされており,究極的には個人が中心になる。社会秩序という考え方によれば,社会政策は個人の社会権だけでなく,社会そのものに注目し,社会福祉政策を包含する概念として捉えるべきであることが示唆されている。
著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.99-111, 2015-07-25 (Released:2018-02-01)

本稿は2014年6月に行われた社会政策学会保健医療福祉部会のテーマ別分科会のなかで行った発表を元に作成されたものである。当初の発表では,合理的配慮の規定についての基本的部分を確認しつつ,実際に障害者と雇用主の間でどのように合理的配慮を形成していくのかという点について,実務的な観点から整理し,その課題を明らかにしていった。本稿では,その内容を踏まえた上で,分科会において示されたいくつかの質問,特に労働能力と賃金と配慮の関係性について焦点を移している。そして,合理的配慮の規定において重要な鍵となる,しかしこれまで日本においてあまり議論されてこなかった基幹的能力の概念を軸に,この問いに対する一つの答えを示すことを試みている。
著者
志賀 信夫
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.165-176, 2013-10-30

社会的排除という言葉が使われ始めて久しいが,この社会的排除への取り組みに関する言説をLevitas[2005]は三つに類型化した。現実の社会的包摂戦略はこのなかでも「仕事」を契機として排除された者を統合しようとする言説をその基礎としている。ヨーロッパにおけるワークフェア戦略がまさにそれである。宮本[2006 ; 2009]はワークフェアとアクティベーションを区別し,後者を肯定的に評価している。確かにそれは,実存する社会的包摂戦略のなかではモデルとされるべきものである。しかし,本稿ではこのアクテイベーションの限界を批判的に検討しその連続性において,Lister[2004=2011]が紹介している「社会的包摂ではなく社会参加を」という要求に沿った新たな戦略への結節点を模索する。その際に新たな道の一つとしてAtkinson[1995=2011 ; 1998]の提案する「参加所得」を挙げ,これが必ずしもベーシック・インカムの妥協ではなく,包摂戦略の積極的代替案であることに触れていく。
著者
垣田 裕介
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.41-55, 2016

2015年4月から実施されている新たな生活困窮者自立支援制度は,生活保護受給に至っていない生活困窮者に対する包括的・個別的支援を目的としており,支援方法の中心に現金給付ではなく支援サービス給付を置いている点に特徴がある。新制度の実施主体である地方自治体は,制度の事業や関連資源をいかに組み合わせて対処するかを選び取っていくこととなり,事業推進の企画力や,総合相談や就労支援等の実行力が問われている。本稿では,新制度の実施に先立って2013〜14年度に実施されたモデル事業における自治体の取り組み事例等にもとづき,生活困窮者の実像,具体的な支援の内容や結果,自治体が直面する諸課題などを明らかにする。その際,マクロの制度を実際に対象者の生活やニーズに機能させる,社会政策の実質化のプロセスとして,自治体での運営(メゾ)や個別的なケースの支援実践(ミクロ)のレベルを射程に入れて分析や論点提起を行う。
著者
藤原 千沙 湯澤 直美 石田 浩
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.87-99, 2010-02-25

生活保護の受給期間に関する議論では,毎年7月1日現在の被保護世帯を対象に,保護の開始から調査時点までを受給期間とする「被保護者全国一斉調査」(厚生労働省)が用いられるのが一般的である。これに対し,本研究は,A自治体における保護廃止世帯を対象に,保護の開始から廃止までを受給期間として分析し,保護継続世帯と合わせて生存分析を行った。その結果,以下の諸点が明らかとなった。第一に,一時点の受給継続世帯を対象とした調査では調査対象にあがらない1年未満廃止世帯が相当数存在する。第二に,世帯主の学歴・性別・世帯類型により受給期間に違いがみられた。第三に,自立助長という生活保護制度の目的に沿った保護廃止であるか否かにより受給期間の傾向は異なる。第四に,廃止世帯と保護継続世帯の双方を考慮した分析では,世帯主の性別と世帯類型により保護の継続確率(生存率)に違いのあることが推察された。
著者
瀧川 貴利
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.117-122, 2009-09-25

第二次世界大戦中から戦後にかけて,多くの被追放民がドイツ連邦共和国に流入した。これらの被追放民の総数は約780万人にものぼり,1961年のドイツ連邦共和国の住民全体の約16%にも相当した。バイエルン州は1950年の時点でドイツ連邦共和国の州の中で最も多くの被追放民を受け入れていた。本論文はバイエルン州の難民政策と難民の統合について述べた。バイエルン州はドイツ連邦政府と協力して,様々な難民政策を行った。この結果バイエルン州は,約160万人もの被追放民をバイエルン社会に定住させることができた。また1950年には約4万社にものぼる被追放民の企業が設立された。被追放民と地元住民は1950年ではまだ経済的な格差があったが,1960年には経済的な格差はほとんど見られなくなっていた。このためバイエルン州の難民政策は成功したと評価できる。
著者
菅井 益郎
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.51-63, 2013-03-20

田中正造が亡くなる直前の日記に書いた「物質上,人工人為の進歩のみを以てせバ社会は暗黒なり。デンキ開ケテ,世見暗夜となれり」は,東京電力福島第一原発事故の本質をえぐり出している。日露戦争にかろうじて勝利して本格的な電化の時代を迎えたとき,田中は文明の象徴としての電気を使いこなせる哲学があるのかときびしく問い,足尾銅山の急速な近代化がもたらした深刻な鉱毒被害を踏まえて,「知」の偏重に対して自然や生命の視点から技術をコントロールする「徳」の重要性を強調したのである。3・11東日本大震災とともに起こった未曾有の原発事故は田中の警告を現代に甦らせた。事故から1年8ヵ月が経った今も事故は収束せず,不安定な状態にある。16万人に及ぶ人びとが不便な避難生活を強いられ,また福島県の広範な地域の放射能汚染は憂慮すべき状況にあり,子どもたちの将来が心配されている。雇用や損害賠償,医療や移住,労働者の被曝,汚染土壌の処理など未解決の問題が山積し,来電福島原発事故は足尾,水俣に続く重大な公害事件となった。
著者
田村 哲樹
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策学会誌
巻号頁・発行日
no.16, pp.51-65, 2006-09-30

Since the 1990s, there has been a discernable trend toward welfare reform in advanced democracies despite the difficulties associated with welfare retrenchment. Together with this movement toward welfare reform has emerged much debate on the concept of citizenship. This paper has two aims. First, I seek to classify some of the principles of contemporary welfare reform from the perspective of citizenship rights and obligations. There are at least two conceptions of citizenship: the right-centered conception and the obligation-centered conception. By adding a left-right nexus to this right-obligation nexus, I create four conceptions of citizenship as they relate to welfare reform. These are (1) the left-libertarian conception of citizenship (basic income), (2) the right-libertarian conception (negative income tax), (3) the right-communitarian conception (workfare), and (4) the left-communitarian conception (activation). Recent citizenship debates have exhibited a definite tendency to emphasize obligations rather than rights, especially the obligation to work. For this reason workfare and activation are more popular ideas for reform than basic income and negative income tax. There is an important difference between workfare and activation. However, it seems certain that the principles which emphasize work as an obligation have had a great influence on recent citizenship debates. My second aim is to explain why we should not regard the work obligation as the most important aspect of citizenship obligations. In doing so, I make two points. First, if we acknowledge that the significance of citizenship is in obligation, we should take into account not only work but also other obligations and activities. Referring to T. Fitzpatrick's concept of diverse reciprocity, I argue for recognizing the significance of both unpaid care work and active political citizenship. In recent feminist debates on citizenship, unpaid care work has come to be seen as one of the most important components of citizenship. By active political citizenship, I mean the political citizenship that goes beyond suffrage and is located in collective action. Some radical democrats such as J. Habermas and G. Delanty emphasize such active political citizenship. Today we cannot assume the boundaries of citizenship as given. The ability to define citizenship seems to have become increasingly important, and this will be possible only through political citizenship. Second, if it is the case that citizenship is more that just the work obligation, we must also think about the new principles and institutions necessary both for the democratization of welfare and for welfare that encourages diverse reciprocity. Regarding the former, I focus on 'deliberative welfare' (Fitzpatrick), and for the latter, I refer to public policy, such as parental leave for men, and basic income, which has the potential to increase the time spent engaging in social and political activities outside of work.
著者
井上 信宏
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.27-40, 2016

この論文は,現行の生活保障システムが,高齢期の生活課題と支援のミスマッチを制度的に生み出していることを指摘し,この課題に直面している地域社会が,どのようにして課題解決を図ろうとしているのかを示すものである。急激な高齢化のなかで,在宅介護を推進する介護保険制度が創設されたが,増加傾向にある高齢者夫婦世帯や一人暮らし高齢者世帯は,介護保険制度だけで在宅生活を維持できる状態にはならなかった。高齢期の生活課題には他者によるケアが必要となるが,そうした「ケアの配分」は社会的に解決すべき問題として扱われてこなかったためである。高齢期の生活課題を支援するためには,地域包括ケアシステムは,これまで先送りされてきた「ケアの配分」の課題を引き受けなければならない。
著者
猪飼 周平
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.21-38, 2011-03-20
被引用文献数
2

本稿の課題は,猪飼[2010]において提示された「病院の世紀の理論」から,次代のヘルスケアと目される地域包括ケアシステムに関する社会理論を展望することである。本稿では,現在生じている健康概念の転換が,「医学モデル」から「生活モデル」への転換として生じていることを踏まえ,次の点を指摘した。第1に,健康概念の転換に適合的なヘルスケアは,より包括的かつ地域的であるという意味において地域包括ケアシステムを指向すること,第2に,健康概念の転換が,過去30年間にわたり社会福祉に広範に生じている生活支援の作法の転換を背景としていると考えられること,第3に,地域包括ケアシステムの構築に際しては,従来のヘルスケアとは質的に異なる,専門職の分業,社会関係資本の構築,コスト増大への対応等に関する課題の解決が必要になることである。
著者
牧 陽子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.137-148, 2015-07-25

高い出生率を誇るフランスの家族政策に近年,関心が高まっている。だが家族給付や多様な家族への現在の支援制度に注目が集まり,男性稼ぎ主モデルでの出生率向上を目指したフランス福祉国家が,1960年代末からの女性の労働市場参入という社会変動の中で,どのように変化したのかについては十分解明されていない。本稿は,フランス福祉国家が共働きモデルへと大きく舵を切った1970年代を対象に,二つの法律(1972年諸措置法と1977年親育児休暇法)の成立過程を議会の文書・言説から分析し,その変化の軌跡を検証した。議員たちは女性の就労という現実を前に1972年には抵抗し,家庭回帰を促した。1977年には女性の就労継続を前提とするようになったが,ケア提供者は母親か両親かで対立した。家族モデルはこうした抵抗,葛藤を経て共働き前提へと変化した。変化の理由には,社会変動に応じた新たな価値を議員が内面化したことや,ヨーロッパの追い風が考えられる。
著者
石黒 暢
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.137-148, 2014-03-31

市民にアウトリーチする施策の1つであるデンマークの予防的家庭訪問制度を情報という視点から捉え,特質を明らかにするのが本稿の目的である。本制度の全国的な実施状況や事例検討から明らかになったのは,第一に,本制度が公的責任による広範囲なアウトリーチという点である。基礎自治体に実施義務が課せられた制度で原則的にデンマークの75歳以上の国民すべてに提供され,高齢者の自立生活継続を支援している。第二に,本制度では個人情報の保護をしながらも一定ルールのもとで共通処遇の促進機能を発揮して惰報共有し,かつ利用者個人との情報共有を実施している点である。第三に,多くの自治体が予防的家庭訪問にかかわる情報を体系的に収集し活用している点である。第四に,ICTを活用できない高齢者や社会的ネットワークが脆弱な高齢者に対して自治体がアウトリーチして必要な情報を提供し,情報アクセシビリティを保障している点である。