著者
早尻 正宏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.13-24, 2014-11

原子力災害からの福島県林業の再建課題を探るため,県内の森林整備の主要な担い手である森林組合に焦点を当てて,震災以降における組合経営の推移と現段階を明らかにした。調査対象は,2011年4月に政府が設定した旧避難指示区域等(警戒区域,計画的避難区域,緊急時避難準備区域)を含む12市町村を組合地区とする「被災組合」(6組合)である。調査の結果,組合地区内に避難指示区域が広がり事務所移転や組合員・役職員・作業班員の長期避難を余儀なくされた組合,主要な収益源が森林整備事業から除染等の震災関連事業に移行した組合,東京電力の損害賠償金により最終損失を免れている組合など,震災前後で「被災組合」の経営環境が大きく変容したことが明らかとなった。「被災組合」は被災地域の森林管理の担い手として復旧・復興事業に取り組み事業継続を図ってきたが,避難指示区域を抱え森林汚染が深刻な組合の本業復帰は依然困難な状況にあり,組合経営のかじ取りは一段と難しくなっていた。

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