著者
早尻 正宏 夏目 俊二
出版者
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション
雑誌
北海道大学演習林研究報告 (ISSN:13470981)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-10, 2012-05

近年では、馬搬作業は、木材搬出過程の機械化に伴いほとんどみられなくなったが、東北地方や北海道において、その技と知を地域の森林文化・馬事文化として位置付け、技能継承を図る取り組みが進められつつある。本稿では、技能継承を今後進めていくうえで必要な基礎資料の提供を目的に、北海道木古内町と上ノ国町における馬搬作業の展開事例を検証した。その結果、馬搬作業は、搬出路開設の必要がなく林地や立木にダメージを与えにくい環境保全的な集材方法であること、小規模な伐採現場ではトラクタを使用した場合に比べてコスト面で有利となる可能性が高いことが明らかとなった。今後、森林地域の貴重な文化でもある馬搬技能の継承に向けては、馬搬作業が引き続き取り組まれている地域間で人的交流と情報交換を進めていくことが必要であろう。
著者
早尻 正宏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.51-59, 2011
参考文献数
6

本稿では,鳥取県智頭町を事例に,林業技能者養成をめぐる地域的取り組みの展開過程を整理し,その到達点と課題を明らかにした。智頭町では1991年,町や森林組合などの出資により,林業技能者養成を目的とした第3セクターが設立された。しかし,労働力需要の減退もあって,第3セクターで技能習得した人が町内の他事業体に移籍するという当初の設立目的は実現困難となっていた。こうした雇用なき職業訓練の現状を解決するため,住民が町の課題を話し合い予算折衝まで行う町独自の住民自治組織において,雇用創出と職業訓練をセットした林業振興策が提起されるなど,同町における林業技能者養成は新しい段階を迎えつつあった。
著者
早尻 正宏
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.10_28-10_36, 2015-10-01 (Released:2016-02-05)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
早尻 正宏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.13-24, 2014-11

原子力災害からの福島県林業の再建課題を探るため,県内の森林整備の主要な担い手である森林組合に焦点を当てて,震災以降における組合経営の推移と現段階を明らかにした。調査対象は,2011年4月に政府が設定した旧避難指示区域等(警戒区域,計画的避難区域,緊急時避難準備区域)を含む12市町村を組合地区とする「被災組合」(6組合)である。調査の結果,組合地区内に避難指示区域が広がり事務所移転や組合員・役職員・作業班員の長期避難を余儀なくされた組合,主要な収益源が森林整備事業から除染等の震災関連事業に移行した組合,東京電力の損害賠償金により最終損失を免れている組合など,震災前後で「被災組合」の経営環境が大きく変容したことが明らかとなった。「被災組合」は被災地域の森林管理の担い手として復旧・復興事業に取り組み事業継続を図ってきたが,避難指示区域を抱え森林汚染が深刻な組合の本業復帰は依然困難な状況にあり,組合経営のかじ取りは一段と難しくなっていた。
著者
早尻 正宏 夏目 俊二
出版者
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション
雑誌
北海道大学演習林研究報告 (ISSN:13470981)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-10, 2012-03

近年では、馬搬作業は、木材搬出過程の機械化に伴いほとんどみられなくなったが、東北地方や北海道において、その技と知を地域の森林文化・馬事文化として位置付け、技能継承を図る取り組みが進められつつある。本稿では、技能継承を今後進めていくうえで必要な基礎資料の提供を目的に、北海道木古内町と上ノ国町における馬搬作業の展開事例を検証した。その結果、馬搬作業は、搬出路開設の必要がなく林地や立木にダメージを与えにくい環境保全的な集材方法であること、小規模な伐採現場ではトラクタを使用した場合に比べてコスト面で有利となる可能性が高いことが明らかとなった。今後、森林地域の貴重な文化でもある馬搬技能の継承に向けては、馬搬作業が引き続き取り組まれている地域間で人的交流と情報交換を進めていくことが必要であろう。