著者
西田 文信
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.120-134, 2012

香港にはさまざまな国籍の人々が居住している.1997年以降は中国の共通語たる「普通話」の普及が図られて来ており,香港の言語状況は大きく変貌を遂げつつある.1990年4月4日に採択され,1997年7月1日より施行されている『中華人民共和國香港特別行政區基本法(The basic law of the Hong Kong special administrative region of the People's Republic of China)』の総則第9条では「香港特別行政區的行政機關,立法機關和司法機關,除使用中文外,還可使用英文,英文也是正式語文.」とし,中文および英文が正式な言語であると規定している.その他の言語に関する言及はない.一般的に,香港の非華人の言語すなわちコミュニティ言語の使用に関する意識は希薄であり,具体的な言語使用の場の分析は依然として皆無である.本稿では,香港在住のネパール人,特にグルン族の一世・二世・三世を主たる対象として,彼らの言語使用の場への参与観察的フィールド調査を行い,収集した自然発話データおよび実態調査の結果を基に,言語使用の諸相を整理し,彼らの言語生活および彼らを取り巻く言語問題を考察する.

言及状況

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