- 著者
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鈴木 光
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.2, pp.45-57, 2015-10-27
アカタテハ幼虫をムラサキツメクサで室内飼育し,その生育状況を調べた.野外で捕獲したアカタテハ(メス)から卵を得て,孵化した幼虫をマオで飼育し,1〜5齢に達した幼虫を順次ムラサキツメクサ食に移行させて,その生育状況をマオ食幼虫(対照群)と比較し観察した.対照群幼虫は,1〜5齢のどの段階からムラサキツメクサ食に移行させても蛹・成虫にまで生育できたが,生存率は低く,ムラサキツメクサ食の期間が長いほど幼虫期間が長く,蛹化率も蛹の羽化率も低かった.蛹重と蛹長を比較すると,ムラサキツメクサ食群は対照群に比べ小型で,成虫の前翅長も短かったが,成虫の翅の形態や翅紋に異常は認められなかった.以上の結果から,ムラサキツメクサは,飼育環境下においては,アカタテハ幼虫の代用食になり得るが,好適な食草ではないことが示唆された.