著者
永田 孝信
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.23-42, 2016-03-01

本稿は、ベートーヴェンのピアノソナタについて、使用される調の数、主調との近親関係の有無、転調の頻度及び和声の観点から、この作曲家のソナタ形式における展開部の発展的方向性の詳細を明らかにするものである。このため、ベートーヴェンの32のピアノソナタの中から異なる年代に作曲された8曲を選び、それぞれ第1楽章ソナタ形式の展開部における調と和声の特徴的な展開手法について説明する。その上で、展開部が調の流動性と安定性の対比に基づいて構成される状況、また、調的展開に対する考え方が展開部に留まらず、次第に提示部・再現部・コーダ等の各構成区分や主題間の移行部、さらには主題の内部にまで浸潤していく状況を明らかにし、その背後にあるベートーヴェンの表現的着想の解明を試みる。本稿の特徴は、展開部において使用される調の範囲と調の推移の状況を曲ごとに図式化し、その特徴点を列挙するミクロ的なアプローチと、各曲に使用される調の実数と延べ数を算出して、全般的な傾向を俯瞰するマクロ的なアプローチを併用したことにあり、両者が相まって各論点に着実な根拠が示されるように努めた点にある。

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