著者
中村 貴司
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス研究
巻号頁・発行日
vol.2, pp.53-65, 2015

本研究は、独創性のあるストーリーを通じた株式投資のケースメソッドを用いることで、投資家の行動や相場変動の特徴・特性など、心理的アプローチを用いた行動ファイナンスの視点をパーソナルファイナンスの資産運用の分野へ効率的・効果的に取り込むことに加え、実務への応用可能性の高い投資のエッセンスをケースメソッドに含有することで、個人投資家の金融リテラシーの向上に寄与することを目的としている。本研究ではパーソナルファイナンスと行動ファイナンスの概要に加え、ストーリーを用いたケースメソッドのメリットを述べた後、顧客である個人投資家と関わりながらITバブルとITバブル崩壊を証券の営業現場で経験した一営業担当者としての視点で書かれている「A君の株式投資物語」というケースメソッドの実例を示した。このケースでは、マーケットの狂喜乱舞、楽観と悲観、幸福感と絶望感など群集心理の激しい移り変わりを経験し、マーケットに揺さぶられ続けてきた個人投資家や営業担当者のイメージが湧くような具体例やマーケットの局面ごとの反応例を示した。また、このケースメソッドを通じ、代表的な株式投資の分析手法であるファンダメンタルズ分析とテクニカル分析のメリット、デメリットや投資を行う上での適切なポジション管理の必要性に加え、マーケットの変化やマーケットに伴う困難、逆境に対し、しなやかに対応できる柔軟な思考力と行動力を持つことの大事さを投資におけるエッセンスとして学べる機会を提供することで、パーソナルファイナンス教育の分野への貢献を行った。

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