- 著者
-
松村 洋一郎
- 出版者
- 国立音楽大学
- 雑誌
- 国立音楽大学研究紀要 (ISSN:02885492)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, pp.219-228, 2015
本稿は、明治・大正期の音楽誌以外の雑誌に掲載された、作曲家の伝記情報を扱った記事に関する調査の中間報告である。音楽誌以外を扱う理由としては、当時、それぞれの分野の雑誌はあまり個別化されていなかったこと、また、ほかの人文系の分野に比べて、音楽雑誌の成立、確立が遅かったこともあり、音楽誌以外の雑誌に音楽関係の話題が掲載される場合が多かったことが挙げられる。そして、広い影響力を持った一部の作曲家を理解するには、こうした多義的な視点を持つことが求められよう。本稿の内容としては、記事一覧を作成し、そこから読み取れるいくつかの点を指摘する。たとえば、ヴァーグナーに関する記事の多さや、作曲家の作品ではなく人となりに注目が集まる傾向などである。これらは、文学誌等を材料にすでに指摘がなされているものだが、本稿では、美術誌や、少年誌、婦人誌など、これまでとは異なった材料から裏付けることが出来た。