著者
浅石 卓真
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.38-53, 2016

本研究では,高校理科教科書を読み進めていく過程に対応した知識の形成過程を明らかにすることを目的として,専門用語を頂点,同一段落内での共起関係を辺とする語彙ネットワークの成長過程を4科目(物理,化学,生物,地学)の教科書で分析した。複数のネットワークの統計量の推移から,知識すなわち概念の体系が形成されていく過程は以下のようにまとめられる。(1)全体的に新しい概念はコンスタントに出現していくが,新しい概念が多く出現する部分も見られる。(2)殆どの概念は初出時から他のいずれかの概念と結びついており,部分的な概念体系の中で最大のものが一貫して概念全体の大部分を占めている。(3)個々の概念はより多くの概念と直接的に結びつけられていく。また,最大の概念体系の中で概念同士は平均で2〜3,最大でも4〜8程度の概念を介して間接的に結びついており,部分的な概念集合の中で強く結びついている。(4)少数の概念が特に多くの概念と直接的に結びついたり,概念同士の間接的な結びつきを仲介・媒介する傾向は次第に弱まる。いずれの教科書でも専門用語がランダムに出現した場合とは語彙ネットワークの成長過程は明らかに異なり,教科書間で多くの傾向が共通する一方で科目ごとの特徴も一部に見られた。

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