- 著者
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高橋 純子
- 出版者
- 筑波大学留学生センター
- 雑誌
- 筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.115-125, 2002
これは、筑波大学留学生センター補講「会話4」(日本語中級後半レベル)クラスにおいて実施したビデオドラマ制作活動についての報告である。発話には2つの種類がある。それは、1)公の場でのスピーチなど、あらかじめ準備された発話、2)討論や友人との日常会話など状況によって刻々と変化していく状況依存型の発話である。日本人学生との共同作業によるドラマ制作活動は、身振りや態度など非言語コミュニケーションとともに、この2つの発話能力を高めることができるであろうと考えた。さらに、このレベルの学習者の発音やイントネーションなど音声面での矯正を行うのはなかなか難しいものであるが、よい作品を創るという目的のためには、学習者は発音やイントネーションに気を配って、何度も台詞を練習するはずだ。実際、撮影中ある場面を扱い、効果的に学習者の間違いを指摘し、説明し、指導することができた。本稿では、ドラマ制作過程の観察と学習者と活動に協力してくれた日本人学生の意見・感想から何が学べるのかをさぐっていく。そして、ビデオドラマ制作活動の意図とその実際の成果、留意点、改善点について述べる。ビデオの使い方として、1)テレビドラマなどからのモデル会話場面を見せる。2)日本語の進歩の様子を知るため、または、習慣化されてしまっている間違いに気づくため、学習者の演じているところを撮影し見せる、という2つを併用することが効果的であろう。相手や場によって話し方を変える待遇表現を学ぶ場を提供するという点でドラマ制作は有効だと言える。