著者
Morimoto Ryohei Ossaka Joyo Fukuda Tomoko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.359-375, 1957-09-25

昭和24年12月26日午前8時18分と26分に於いて起きた地震にともなつて,栃木県上都賀郡今市町[現在今市市]を中心とする大約20km四方の地域に地変を生じたが,そのうちでも火山噴出物起源の洪積層分布地域に生じた地崩れと地辷りが,ことに著しかつた.[地震研究所彙報28号(昭和25年),379-386頁,同29号(昭和26年),349-358頁].この第3報では,その存在が地変を生じた素因の一つとなつた洪積世の火山噴出物の各堆積層-上より(O)表土層・(A)黄色浮石層(鹿沼土層)・(B)赤褐色浮石石(今市土層)・(C)上部ローム層・(D)白粘土層・(E)下部ローム層-の主体をなす火山琉璃の風化生成物である粘土の鉱物組成,化学成分などについて研究を行つた.各試料の微細な部分についてX線分析・示差熱分析・熱減量測定・化学分析を,また原土について粒度分析・比重・含水量・吸水率の測定などの結果を報告した[第I-VIII表].これによると上層の表土層・鹿沼土層・今市土層はまだ再結晶の進まないアロフェンによつて,上部ローム層・白粘土層・下部ローム層などの下部層は再結晶度の低い加水ハロイサイトによつて代表されているが,そのうちでも白粘土層は,とくに多量の加水ハロイサイトを含んでいると考えられる.なおこれらの火山噴出物起源堆積層は,原岩の構造をよく残しているが,火山玻璃の部分は化学的にはきわめて変化が進んでいる.すなわちSiO2はいちぢるしく減少し,これに引きかえてAl2O3の富む結果となり,また1,2の層ではCaOが,いくつかの層ではMgOがわづかにその一部を残して,大部分が失もれ,Na2O,K2Oはほとんど完全に溶脱していた.この結果,鉄の過剰な今市土層を除く他の各層のAl2O3+Fe2O3とSiO2との比はいずれも1:2となつている.とくに加水ハロイサイトを多量に含む白粘土層は,その含水率,吸水能ともに最大の値を示し,地変に際しその地辷り面となつた.

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こんな論文どうですか? Geology of Imaichi District with Special Reference to the Earthquake o,1957 http://ci.nii.ac.jp/naid/120000866295

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