- 著者
-
Kanai Kiyoshi
- 出版者
- 東京帝国大学地震研究所
- 雑誌
- 東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.256-272, 1938-06-20
日本式の御殿風の家や旅館等では壁をなるべく用ひない方が望ましい.古い家屋に用ひられた大黑柱の考を今少しく活用する道はないものかと,この研究を試みたのである.數理的計算を試みたところが,家屋の斜の方向の剛性をよくしさへすれば,大黑柱の効果が發揮することがわかつた.但し効果といふのは材料を經濟的に考へた場合の効果であつて,全柱をそれぞれ大黑柱の如くすれば尚更よいのにきまつてをる.實際問題として大黑柱は必しも木材でなくてもよろしく,場合によつては鐵組立材又は鐵筋コンクリートで作れば一層効果がある譯である.尚この考に構造物の材料をなるべく均等に分布しようといふ工學的常識とはむしろ逆の傾向にあるのである.床面に斜材のないときの立體架構の場合を計算して見ると,大黑柱が家の隅にあり且つ斜材がない爲に極めて低い振動數の自己振動のあることがわかつた.即ち斜材の必要な事がよく知られる.この立體架構の問題は面白いけれども甚だ複雜であり,今後も研究を續ける積りである.