著者
Sezawa Katsutada Kanai Kiyoshi
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.190-207, 1939-06-30

脈動の原因について多くの人の議論があるが未だに一致しないやうに見える.海岸を打つ波の衝擊が彈性波として傳播するといふ説と,大氣中の振動が壓力波又は彈性波として傳播するといふ説とは互に相讓らぬやうである.只今の研究では,海岸を打つ波の場合には勿論彈性波として傳播してよいけれども,大氣中の振動はやはり大氣波として傳播しなくてはならぬといふ結論に達するのである.尤も何れの場合にも波動が2次元的でないと充分な振動勢力が傳はらない.波が海岸を打つて出る波についてはに多くの研究が試みられてあるから茲では取扱はない.
著者
Kanai Kiyoshi Tanaka Teiji
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.97-114, 1961-03-30

時微動の測定結果については,現在までに,19回にわたつて地震研究所談話会で発表し,そのうち,東京,横浜,庄内,大阪,一宮,川崎の測定結果は,すでに,地震研究所彙報に第1報~第7報として掲載した.本報告では,常時微動の一般的性質を,第1章~第8章で述べ,第9,10章では,常時微動の測定結果を地震工学上の地盤種別判定に利用する方法について述べる.常時微動の頻度曲線と,同じ場所での地震動の頻度曲線および振巾スペクトルとに密接な関係のあることは,われわれの研究によつて,非常にはつきりしてきたが,日本では,まだ,強震動の満足な記録が得られていないので,それらの相関性が果して破壊的地震動にもあてはまるかどうか,いい換えると,常時微動によつて求められた地盤の振動的性質が地震工学上の構造物設計資料として,果して,役立つかどうかという点では,必らずしも,明確な答えが出されたとはいえなかつた.筆者たちは,最近,アメリカ合衆国における強震計,普通地震計の設置場所,ならびに設置予定地の約200ヵ所で,常時微動の測定を行なつた.現在,それらの場所で得られた強震記録の各種方法の解析結果と常時微動の測定結果との比較検討を行なつているが,従来,地震動と常時微動には密接な関係かあるという普通地震の比較で得られた結果が,強震動にもあてはまるという実例のごく一部を第7章で紹介した.なお,東海地震の木造家屋の被害率と常時微動の性質からきめた地盤種別との間に,相当よい相関のあることもわかつた(第23図参照).強震動と常時微動との関係については,次回に詳しく報告するつもりである.
著者
Kanai Kiyoshi
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.339-343, 1967-08-25

震度階と記録最大加速度の関係式を最初に求めた石本博士は,その実験式は卓越周期0.3 secの場所での観測結果を使つたものであることを,特に注意する必要があるとしている.本研究はアメリカ合衆国で観測された強震動の最大加速度とMM震度階との関係を,新しい立場からしらべたもので,最大加速度(amax単位gal),卓越周期(TG単位sec), MM震度階(IMM)との間には,次の関係があることがわかつた.
著者
Kanai Kiyoshi
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.359-366, 1961-12-15

地球内部には,いくつかの不連続面がある.その不連続面を地震波が通過するときの,境界条件としては,変位ならびに応力が連続という仮定が,一般に採用されてきた.しかし,ひるがえつて考えてみると,この仮定の是非は,よく吟味されたというものではなさそうである.本研究は,上に述べた仮定を変えると,はたして,どんな結果が生れるかということを,しらべてみたものである.ここでは,不連続面で有限の大きさの,""すべり抵抗""のようなものを考えてみた.取扱つた地震波はSH型表面波である.数値計算の結果,""すべり抵抗""の値が非常に小さい場合を別にすると,分散曲線は従来のものと大して変らないことがわかつた.しかし,減衰の性質としては,従来の理論的研究結果では見られないものが得られた.即ち,減衰は周期の1乗とか2乗とかに逆比例するというようなものではなく,ある周期に極大があることになつた.この結果は,最近,長周期の表面波に関する研震的研究結果と定性的には,よく合うものである.
著者
Kanai Kiyoshi
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.295-310, 1958-10-31

前論文において,地震動の周期と振幅の関係について,次の関係式を得た.即ち,Am・s=53Tm2.56m,(1)2πA/T(≡V)=一定(2)ここに,Aは振幅,Tは周期,Vは速度,Am・sは震央距離100kmにおける変位スペクトルの最大値(ミクロン),7%はその周期である.本研究では,普通の大きさの地震で得られた,これらの実験式が,はたして構造物に破壊をもたらすような地震動にもあてはまるかどうかをしらべたらのである.
著者
Kanai Kiyoshi Yoshizawa Shizuyo
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.275-293, 1958-10-31

地震動は,普通,いわゆる地質の影響で非常に複雑な波形になり,その本性を調べるのが困難である.そこで,地盤による地震動の変調をできるだけ避けようとして,日立鉱山の坑内で地震観測を始めてから,10年以上になる.今回の報告は,その期間に,地下300mで得られた地震記象の中から比較的満足な記録をしたものをえらんで周期解析を行い,振幅と周期の関係をしらべた結果である.
著者
KANAI Kiyoshi
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.195-203, 1965-07-15

前回の研究結果で,地震動による構造物振動が,構造物内での波動の重複反射の現象にほかならないことと,構造物の振動減衰性は,その内部では無視できるぐらい小さくて,ほとんどの部分が,基礎と土地との境界面で起ることが立証された.それにしても,構造物内に生ずる歪量は,構造物下に到達した地震波のエネルギーがどれだけ構造物内に伝達されるかということに支配されるものであり,また,他方において,一度構造物内,に入つたエネルギーがどれだけ基礎部分から地中に逸散するかということにも深い関係をもつものである.
著者
Kanai Kiyoshi
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.256-272, 1938-06-20

日本式の御殿風の家や旅館等では壁をなるべく用ひない方が望ましい.古い家屋に用ひられた大黑柱の考を今少しく活用する道はないものかと,この研究を試みたのである.數理的計算を試みたところが,家屋の斜の方向の剛性をよくしさへすれば,大黑柱の効果が發揮することがわかつた.但し効果といふのは材料を經濟的に考へた場合の効果であつて,全柱をそれぞれ大黑柱の如くすれば尚更よいのにきまつてをる.實際問題として大黑柱は必しも木材でなくてもよろしく,場合によつては鐵組立材又は鐵筋コンクリートで作れば一層効果がある譯である.尚この考に構造物の材料をなるべく均等に分布しようといふ工學的常識とはむしろ逆の傾向にあるのである.床面に斜材のないときの立體架構の場合を計算して見ると,大黑柱が家の隅にあり且つ斜材がない爲に極めて低い振動數の自己振動のあることがわかつた.即ち斜材の必要な事がよく知られる.この立體架構の問題は面白いけれども甚だ複雜であり,今後も研究を續ける積りである.
著者
Kanai Kiyoshi Suzuki Tomisaburo
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.663-666, 1968-07-25

基盤における地震動の速度振巾に関する実験式(1)に日本附近のおもな被害地震のマグニチュードと緯度,経度0.4°の網目についての震源距離を代入し,統計的な処理をして,最高遠度振巾の期待値を求めFigs.2~4に示した.なお,震源の深さは,古いものなどわからないものがあるので,資料に出ている深さの頻度のもっとも大きい値の30kmを一律に使った.
著者
Seazwa Katsutada Kanai Kiyoshi
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.525-533, 1936-12-21

五重塔が見たところ細長いのに拘らず耐震性があるために以前から多くの人の注意をひいた.例へば大森博士の數多くの振動測定や武藤博士の推論などはそのあらはれであるとしてもよい.耐震性のある理由として或人は心柱が振子の作用と鉛直壓力とを與へるからであるといひ,他の人はその構造上から材料を破壊しないけれども構造や基礎の振動減衰摩擦が多いからであるとしてゐるが,何れも研究して見れば見る程これ等の特異性がわからなくなるものである.
著者
Sezawa Katsutada Kanai Kiyoshi
出版者
東京帝国大学地震研究所
雑誌
東京帝国大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.675-684, 1939-12-30

地球の生成時代にあり得るかも知れぬ狀態即ち液狀核を包む瓦斯の中の溫度分布及び沸點の分布をn=1といふ特別の場合について計算したものはこの前の報告に示した通りである.今囘はn=∞の場合,即ち等溫狀態に相當する場合の計算を試みた.この狀態は具體的には殆ど考へ難い場合であるが後に試みるnの一般の場合の推移を知り得るといふ意味があるのである.計算の結果によれば,前囘のn=1の場合には瓦斯のある非常に高い所から金屬の雨が降るけれども,n=∞の場合には寧ろ低い所から降る傾向のある事がわかる.
著者
Kanai Kiyoshi
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.457-471, 1957-12-05
被引用文献数
1

地盤の震動が或周期で卓越する現象については,多くの験震的並びに数理的な研究が行われて来た.最近,この問題は,耐震工学上で特に注意をひき始めたようである.自然地震並びに常時微動からみた地盤の震動性状は2つの型に大別できる.即ち1つの型は地盤特有な或周期の波がはつきり卓越するものであり,他の1つの型は2つ以上の卓越する周期があり,極端な場合には,その数が多くて卓越周期の言葉があてはまらない.