- 著者
-
Lim Hyunjung
玉岡 賀津雄
Lim Hyunjung
Tamaoka Katsuo
- 出版者
- 広島経済大学経済学会
- 雑誌
- 広島経済大学研究論集 (ISSN:03871444)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.29-44, 2004-06
本研究は,韓国の職場でのコミュニケーションにおける呼称選択にどのような規範意識が働いているか,規範意識の形成に個人の属性,対人関係特性,性格特性がどう関係しているかを調査研究したものである。韓国語の呼称体系では,目上の人を名前だけでは呼びにくく,親族名称や地位・役職名で呼びかけるのが一般的である。 本研究では,上司を「姓・姓名+役職名+nim」 と呼ぶことの適切性が高いが,公式の場で上司を「姓名+ssi (氏)」 と呼ぶことにも決して否定的ではないことがわかった。対人関係および性格特性については,条件によって多様な影響関係がみられた。例えば,目上の人に対して「地位・役職名」や「親族名称」を用いることについては,他者に対して気遣いをする人が適切で、あると判断する傾向がみられた。また,日上に対して公式の場で名前を使用することについては,調和性のない傾向の人が適切であると判断していた。しかし,全体的にみると,本研究で採用した対人関係尺度および性格特性尺度は,重回帰分析で職場での呼称使用の適切牲を決める有意な予測変数であっても,その決定係数(W)の値は低かった。このことは,言語的特徴である呼称使用について,これらの変数があくまで間接的な要因であることを示唆している。