- 著者
-
亀山 照夫
- 出版者
- 明治大学人文科学研究所
- 雑誌
- 明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
- 巻号頁・発行日
- no.41, pp.281-295, 1997
未曾有の荒廃を生んだ南北戦争は良識ある人々に幻滅と無気力さを残し、Ralph Waldo Emersonは日誌に「戦争は慢性的絶望に対しては、慢性的希望を確認した」と記している。(1865年7月)だが続く1870年代には前代未聞の汚職、賄賂が起こり、政治は腐敗をきわめた。これらの無節操さに業を煮やしたWalt Whitmanは「おそらく、今日のように、ここ合衆国において心がうつろな状態になっていることはかってなかった。純粋な信念というものが、われわれを見捨ててしまったように思える。」(『民主主義の展望』1871)と嘆き、民主主義の危機を警告した。また西部で起こったゴールド・ラッシュは最高潮に達し、一攫千金の夢に人々は乗せられ、亀井俊介氏のことば通り「暮らしは高く思いは低し」の軽重浮薄の世情は止まるところを知らなかった。