著者
亀山 照夫
出版者
明治大学文芸研究会
雑誌
文芸研究 (ISSN:03895882)
巻号頁・発行日
no.43, pp.p212-231, 1980-03
著者
亀山 照夫
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
no.41, pp.281-295, 1997

未曾有の荒廃を生んだ南北戦争は良識ある人々に幻滅と無気力さを残し、Ralph Waldo Emersonは日誌に「戦争は慢性的絶望に対しては、慢性的希望を確認した」と記している。(1865年7月)だが続く1870年代には前代未聞の汚職、賄賂が起こり、政治は腐敗をきわめた。これらの無節操さに業を煮やしたWalt Whitmanは「おそらく、今日のように、ここ合衆国において心がうつろな状態になっていることはかってなかった。純粋な信念というものが、われわれを見捨ててしまったように思える。」(『民主主義の展望』1871)と嘆き、民主主義の危機を警告した。また西部で起こったゴールド・ラッシュは最高潮に達し、一攫千金の夢に人々は乗せられ、亀井俊介氏のことば通り「暮らしは高く思いは低し」の軽重浮薄の世情は止まるところを知らなかった。
著者
亀山 照夫
出版者
明治大学文芸研究会
雑誌
文芸研究 (ISSN:03895882)
巻号頁・発行日
no.99, pp.73-76, 2006

アメリカ文学の作品の中で、ニューイングランドの伝統を受け継ぐ自然主義的な小説です。イーディス・ウォートン(1862-1937)の作品で、自然主義とニューイングランドの風土が不思議に溶け合った哀愁の色が濃い味わい深い作品です。ウォートンは、十九世紀後半のアメリカの風俗や慣習が時とともに消え去り行くさまをいとおしんだ作家です。と同時に、彼女の文学作品と私的情念とが似通った立場にあるために、屈曲したエロスは不燃焼のまま心の澱となって、わだかまります。彼女の文学上の師匠のヘンリー・ジェイムズの言うように、まさにウォートンは「荒廃させる天使」であり、荒涼たる心の原風景があらわになります。作品のなかで、彼女は男女の愛の姿を短いあいだながらも率直に表現し、しかも最後には、その愛はこの世では果たせないままで終わらせられるために、彼女の禁欲主義はただごとではありません。