著者
八角 真
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-54, 1962-12

"観潮楼"とは本郷駒込千駄木町21番地にあった鴎外森林太郎邸の称の一つであるが、その由来について鴎外の長男於菟氏は次のように述べている。「観潮楼は、明治二十四年十二月団子坂上(中略)の見晴らしのいい地所を求めて翌年一月末に千住から移転した父が、さらに二六年そこにもとからあった平家の後方の長屋二棟と梅林とを買入れてそこに新築した二階建なのである。「観潮楼の名は団子坂がもと潮見坂と称し、上野の森の向ふに品川沖の海面が見えた所から来たのである。(中略)父の在世時代、白山の吉田屋呉服店に染めさせて出入の者に配った半纏の襟には。観潮閣とあったと覚えてゐるが、父は観潮楼主人と称した。ほかに千朶山房の称もあるのは人の知る如くである。」
著者
八田 隆司 櫻井 直文
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.319-337, 2003-03

「神」論は中世のキリスト教の時代だけでなく,近代においても重要なテーマである。ただ中世と異なって近代の「神」把握の特徴は,現実を超えた彼岸あるいは内的心中の問題に限定するのでなく,現実社会と密接な関係において捉えた点にある。本研究ではこうした方向性を近世においてきわめて異質な仕方で表現した哲学者としてスピノザを,同時にまたこの問題を近代的思考の枠組みにおいて総括した哲学者としてへーゲルを論ずることで,近世・近代における「神」把握の展開のいくつかの道筋を確認したい。尚,Ⅰのスピノザに関する問題を桜井が,Ⅱのへーゲルに関する問題を八田が担当している(なお,桜井担当部分は,今回の人文研研究費を活用して作成された電子テクスト・データベースを活用することによって得られた研究の成果である―Ⅰの注3参照)。