- 著者
-
瀬川 裕司
- 出版者
- 明治大学教養論集刊行会
- 雑誌
- 明治大学教養論集 (ISSN:03896005)
- 巻号頁・発行日
- no.322, pp.63-130, 1999-03
レーニ・リーフェンシュタールによる1934年ナチ党大会の記録映画『意志の勝利』は、その監督の名前に決定的な負の刻印を押した<呪われた映画>として名高い。その作品は今日でもドイツでは一般的上映を禁じられているが、他方ではその力強さ、抗しがたい魅力を指摘する声も絶えない、映画史上最大の問題作のひとつといえる。以下では私たちは、まずそれがどのように撮影・編集された映画であるかという検討から入ることにしよう。映画の全体は、以下のような20のシークエンスから構成されている。じっさいの党大会の行事は、ヒトラーがニュルンベルクに到着した9月4日から10日の閉幕まで、計七日間にわたっておこなわれたが、映画ではそれが五日として表現されている。