著者
林 芙俊
出版者
北海道大学農学部農業経済学教室
雑誌
農経論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.73-86, 2009

わが国の総合農協は、設立当初から戦後自作農の維持装置という政策的な位置づけを与えられ、その後も各事業が国の政策と連動する形で発展を遂げてきた。このような性格は、「制度としての農協」として知られている。しかし、現在の農協に関する議論においては、農政の転換や組織基盤の変化にともない、こうした性格の弱体化が進みつつあるとみられており、組合員の主体的参加による自生性を重視する方向で農協の将来像が展望されている。こうした議論を進めるうえで注目に値するのが、愛媛県を中心とするミカン農業地帯において独自の発展をみせた専門農協である。戦前からの自生的な共販組織としての歴史を有し、「制度としての農協」とはまったく異質なものである。しかし、専門農協に関する従来の研究は、マーケティング能力に関するものに偏っており、こうした組織化のあり方を評価、分析したものは極めて少ない。そこで本論では、愛媛県の戦前期のミカン販売組織がどのような特質をもち、そのことが戦後の専門農協組織の展開過程に与えた影響を分析することを課題とする。

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