- 著者
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神 和夫
- 出版者
- 北海道立衛生研究所
- 巻号頁・発行日
- 2002-11-29
1996年以降、北海道東部を中心に急増したオオワシ、オジロワシの鉛中毒の原因がエゾシカ猟に使用された鉛製ライフル弾であることを解説した。増えすぎたエゾシカの個体数管理が急務とされ、有害駆除や冬季の猟銃が行われているが、ハンターによって回収されず、放置される個体がある。こうしたエゾシカ体内にはライフル弾の鉛破片が残っており、越冬のために飛来したワシ類がこの死体を摂食するため鉛中毒を発症する。オオワシ・オジロワシは海ワシ類と呼ばれ、本来は主に沿岸で魚類を餌としているが、最も餌の不足する厳冬期にエゾシカの死体があることから、ワシ類の生態に変化が生じたと考えられた。鉛弾の使用禁止、純銅弾・フェイルセーフ弾の推奨など、行政の取り組みについても触れた。