著者
上野 正雄
出版者
明治大学法律研究所
雑誌
法律論叢 (ISSN:03895947)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.35-60, 2009-03

罰金刑は刑罰の王である。もちろん我が国における裁判中の数量的割合においてであるが、後記のとおりそれがほぼ九割に達している以上、こう言っても間違いはないであろう。とすれば、そのあり様は刑事政策的観点から見て非常に重要なものであると言わざるを得ないはずである。では、現実はどうか。近時の社会の関心は死刑や絶対的無期刑といったより重大な刑罰に専ら向いているようである。全国紙においてさえ、労役場留置される罰金刑受刑者が近時増えている事態を、こともあろうに「モラル崩壊顕著に」という見出しで報道しているような状態である。本稿では、このような罰金刑について、その制度の仕組みと現状を概観したうえで、問題点とその改善策を労役場留置と日数罰金制を中心に検討することによって、刑事政策的により有意義な罰金刑のあり様を模索したい。

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