- 著者
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笹岡 伸矢
- 出版者
- 明治大学大学院
- 雑誌
- 政治学研究論集 (ISSN:13409158)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.117-135, 2002
本稿の目的は、民主化一般において軍隊がいかなる役割を担ったのか、もしくは担うのか、という点にある。1970年代から始まった世界規模での民主化の進展は、軍事体制だけでなく、個人独裁や一党支配体制の民政移管を含んでいる。民主化における軍隊の問題は、決して軍部による政治支配からの移行に限定されるわけではなかった。S.ハンチントンは、民主化と政軍関係について、おおよそ楽観的な視点を提供している。すなわち、彼は新生民主主義体制における定着作業は、経済問題や新体制下の犯罪・人権の問題、言論の自由、政党制の定着といった問題においては非常に難航しているが、政軍関係については権威主義体制のときより悪化したところはないと述べている1。