- 著者
-
土田 龍太郎
- 出版者
- 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部インド哲学仏教学研究室
- 雑誌
- インド哲学仏教学研究 (ISSN:09197907)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.1-16, 2010-03
シュンガ王朝没落の後に,四代四十五年にわたって續いたカーヌヴァーヤナ王朝の實態は不明である。プラーナ中のカリユガ王朝テキストによれば,第十代シュンガ王デーヴァブーミの大臣であったヴァスデーヴァが,主君を斃して創始した王朝がカーヌヴァーヤナ王朝である。// 同じカリユガ王朝テキストには,パウラヴァ王朝のジャナメージャヤ王のアシュヴァメーダ祭擧行の顛末がやや詳しく述べられてゐる。この叙述にはシュンガ王朝開祖たるプシュミトラ王の同祭擧行の實情が反映してゐると推測される。この推測に従へば,ヴァージャサネーイン派の支派たるカーヌヴァ派の婆羅門がブラフマン祭官としてプシャミトラの大祭祀の成功を助け,これをきつかけとしてかれの一族が政府宮廷内に勢力を扶植することをえ,つひには大臣となつたヴァスデーヴァがシュンガ王権を簒奪した,と考へられるのである