- 著者
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虫明 眞砂子
- 出版者
- 岡山大学大学院教育学研究科
- 雑誌
- 岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
- 巻号頁・発行日
- vol.142, pp.73-84, 2009-10-21
イタリアの国立中学校とヴェルディ音楽院児童クラスの合唱指導を視察した結果,国立中学校の合唱授業ででは,楽譜を使用しないこと,発声が地声でハーモニーを創れないこと,更に,音楽の授業で生徒たちに歌に対する意欲が極めて低いことがわかった。一方,ヴェルディ音楽院の児童合唱は,ベルカントの発声で,生徒の歌唱のレベルは高いが,北欧やハンガリーのような水準の高い合唱にはなっていないことがわかった。音楽教育の現場で起こっているこれらの問題の背景には,イタリアの小学校と高校で音楽教科を廃止するという音楽教育に対する国の方針があり,このことが生徒のやる気や質の低下を生み出していると考えられる。イタリアの音楽教育のこのような状況は,音楽の授業が成立しにくくなっている日本の公立中学校の現状と酷似しており,日本の音楽教育にとっても将来を見据えた教育方針の策定が急務であることを強く示唆している。