著者
虫明 眞砂子 財満 健史 大脇 雅直
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アマチュア合唱団員とプロ合唱団員は,合唱歌唱の発声をそれぞれどのように捉えているのか。まず、アマチュアとプロ合唱団員に対して質問紙調査を行った。その結果、両合唱団員は,ソロ歌唱と合唱歌唱それぞれの特質を認識し,両歌唱に適した発声技術で歌唱しようとしていることが明らかになった。次に、プロ歌手4名に発声を依頼し,合唱歌唱とソロ歌唱で,発声をどのように変化させているのか,歌い方の違いでどのような音響学的な差異が出るのかを,聞き取り調査と音の可視化装置によって,より客観的に捉えることを試みた。その結果、和音発声,旋律発声のいずれでも,4名の合唱歌唱では,音の到来方向が中央に収束する傾向が確認された。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

合唱表現における合唱指揮の役割は重要であると思われるが,日本には欧米の音楽系大学の合唱指揮科のような合唱指揮者の養成機関が少なく,合唱指揮は,個々の指揮者の力量に委ねられている。合唱指揮者によって,合唱者の歌声や表現が大きく変化することに着目し,本研究では,「合唱指揮」が演奏にどのように影響を及ぼすのかを可視化装置による実験,合唱指揮者・合唱者へのアンケート調査や聞き取り調査等を用いて分析する。それらをもとに,合唱曲作者の意図を汲み取り,豊かな表現に結びつける,演奏者にとってわかりやすい,合唱指揮法を検討する。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岡山大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13463705)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.49-62, 2008

2006年12月、音楽教育講座定期演奏会において、学生有志によるミュージカル「美女と野獣」ハイライトが上演された。講演終了後、ミュージカル参加者に対して行ったアンケート調査より、出演者たちが、楽しさ、充実感、創り上げる連帯感、仲間意識などの高揚感を感じた一方、公演継続に際する問題意識を持ったことがわかった。それは、第1に「取り組む時期」の遅さ、第2に「練習計画や役割分担」の不明確さによるもので、ミュージカルの仕上がりや衣装・小道具・大道具の制作が大幅に遅れたことは大きな反省点となった。今後、公演を「学生の主体的な活動」に持っていくための方策として、教員側と学生側の連携をいかに図るか、また、総合演習のような横断的なカリキュラム内容の充実等についての検討が急がれる。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.73-84, 2009-10-21

イタリアの国立中学校とヴェルディ音楽院児童クラスの合唱指導を視察した結果,国立中学校の合唱授業ででは,楽譜を使用しないこと,発声が地声でハーモニーを創れないこと,更に,音楽の授業で生徒たちに歌に対する意欲が極めて低いことがわかった。一方,ヴェルディ音楽院の児童合唱は,ベルカントの発声で,生徒の歌唱のレベルは高いが,北欧やハンガリーのような水準の高い合唱にはなっていないことがわかった。音楽教育の現場で起こっているこれらの問題の背景には,イタリアの小学校と高校で音楽教科を廃止するという音楽教育に対する国の方針があり,このことが生徒のやる気や質の低下を生み出していると考えられる。イタリアの音楽教育のこのような状況は,音楽の授業が成立しにくくなっている日本の公立中学校の現状と酷似しており,日本の音楽教育にとっても将来を見据えた教育方針の策定が急務であることを強く示唆している。
著者
虫明 眞砂子 村尾 明子 髙野 敦
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.140, pp.65-75, 2009-02-25

谷川俊太郎の詩が合唱曲の歌詞として,なぜ多くの作曲家によって取り上げられているのか,また,その詩は音楽とどのようなつながりを持つのかについて検討した。その結果,前者については,谷川の詩が,一文が簡潔であること,ことばにリズム感があること,誰もが体験する内容をわかりやすい言葉を用いていることで共感を得やすいことがその原因であることがわかった。後者については,谷川の同一の詩に異なる作曲家が作曲した合唱曲を試聴することにより調べた。その結果,作曲者が異なっても,試聴者は詩に対して共通のイメージを持つこと,それぞれの作品の特徴を的確に捉えていること,更に,作曲者は,時代による音楽環境の変化を捉えた表現方法をとっていることがわかった。
著者
早川 倫子 小川 容子 虫明 眞砂子
出版者
岡山大学教師教育開発センター
雑誌
岡山大学教師教育開発センター紀要 (ISSN:21861323)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.32-41, 2013-03-08

「学生オペラ」の発信は,教育現場で活躍できる人材育成と,岡山大学を文化活動の拠点とした文化・芸術活動の盛んな地域づくりを目指すことを目的として実施したものである。本稿では,約半年間の準備期間の様子とその成果を報告し,筆者らが取り組んださまざまな連携のあり方と課題について考察した。連携に関しては,①教育学部内の教員の連携(教科内容専門の教員と教科教育専門の教員),②附属学校との連携,③他学部との連携,④地域や卒業生との連携に焦点を当てて検討した。また,オペラ終演後に実施したアンケート結果からは,来場された多くの方が非常に満足されており,これからも継続してほしいと要望していることが明らかになった。
著者
虫明 眞砂子 黒井 かおり
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.153, pp.59-69, 2013

合唱のウォームアップについて,合唱指導者の取り組みや合唱団の事例を通して,身体のリラックスの視点から考察した。野口体操や体ほぐしを取り入れた合唱指導者渡辺,岩崎,橋本ら3者は,身体の柔軟性が良好な発声を導くという考えに基づいていることを示しており,また,岩崎,橋本は,心理的柔軟性もその条件に付加していることが明らかになった。次に,合唱団の実践例から,全体的に,身体的な観点からは「呼吸」と「姿勢」を大切にした指導が行われ,上肢部分のストレッチに重点が置かれていることがわかった。他方,心理的観点からは仲間との触れ合いを取り入れて心をほぐすなどの工夫が見られた。さらに,呼吸と運動(動き)を同時に行う,合唱団員の年齢に応じた活動を取り入れるなどの工夫も見られ,これらの活動が,息が自然に声につながるための手立てとなる示唆を得た。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.148, pp.39-48, 2011

日本の学校教育における合唱活動の活発さを表す指標として,NHK全国学校音楽コンクールへの参加校数の割合を採用し,都道府県ごとの値を比較した。その結果,合唱の活発な地域とそうでない地域が2極化していることが分かった。岡山県の合唱活動は,その中でも非常に低調なグループに属することが分かった。このような状況を改善するための手掛かりとして,フィンランドの音楽教育およびエスポー音楽学校の形態およびカリキュラムを考察した。その結果,生涯教育を目的とした多様な音楽教育機関と幅広いカリキュラムが用意されていること,演奏家と聴衆の両方を育てることを目的としていることがわかった。エスポー音楽学校では,器楽の個別指導,ソルフェージュ,アンサンブルの3つの科目を主体とし,器楽教育を重要視している一方,合唱をアンサンブル活動の一つとして大切にしていること,音楽教育全体の質を高めるために,楽器と歌唱の両方を生徒たちに学習させるカリキュラムであることが明らかになった。
著者
石井 宏美 虫明 眞砂子
出版者
岡山大学教師教育開発センター
雑誌
岡山大学教師教育開発センター紀要 (ISSN:21861323)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.57-68, 2011-03-10
被引用文献数
1

日本の唱歌やわらべうたが含まれる歌唱共通教材のあり方について、小学生への歌唱共通教材に対する印象調査を踏まえて考察した。その結果、①低学年では身近な内容の歌唱教材が重要であること②低学年・中学年では、歌詞への関心が高いこと③高学年ではメロディやリズムへの関心が高いこと④曲に対する好みは、同じ学年では類似していることの4点が明らかになった。これらの結果を踏まえて、教師は児童の興味・関心に目を向けた学習を展開すること、歌詞に関心が向けられる歌唱指導を行うこと、「音楽文化の継承」として大人が子どもへ残していきたい唱歌だけでなく、児童がこれからも歌っていきたいと主体的に感じる唱歌との出会いを大切に、歌唱共通教材として24曲の指定の枠にとらわれず幅広く唱歌を取り入れることが重要である。