著者
酒向 治子
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.171, pp.75-83, 2019-07-26

本研究では,地域・行政・教育/研究機関が連携して行う事例として,岡山市が推進する「健康市民おかやま21」の『OKAYAMA!市民体操』に着目し,その制作プロセスを段階に分けて整理分析を行った。また,『OKAYAMA!市民体操』の体験者に対し,意識調査(主観的運動強度および満足度)を行ったところ,制作開始時に岡山市が目指していた目標には到達できていると考えられた。
著者
大守 伊織 南 恭子 大野 繁 岡 牧郎
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.174, pp.9-14, 2020-07-27

【目的】注意欠如・多動症(ADHD)の患児とその保護者が薬物治療をどのように評価し,治療に向き合っているのかを明らかにする。【方法】ADHDの診断を受け,メチルフェニデート徐放剤およびアトモキセチンを処方された小1から高3までの患児94 人と保護者106人に質問紙調査と半構造化面接を行った。【結果】90%以上で服薬は規則正しく行われており,薬物治療に対する肯定的な評価は,患児・保護者で約80 ~ 90%と高かった。一方で,全面的に賛成しているわけではなく,約80%の保護者が否定的な意見も持っていた.否定的評価をする要因は,保護者は副作用を含めた長期的な影響への不安,患児は服薬の煩わしさや胃腸症状が多かった。定期的な薬物治療を続けているにも関わらず,効果と不安等を天秤にかけて治療を継続することへの積極的な支持は,患児・保護者で約50 ~ 60%であった。【結論】小児では,低年齢のため客観的に自身の状況を判断し,見通しをもって治療に参加することが難しい場合がある。患児へは胃腸症状への対処を,保護者へは治療の見通しや副作用について丁寧な説明を繰り返すことによって,薬物治療への否定的評価が軽減され,服薬アドヒアランスが向上する可能性がある。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.73-84, 2009-10-21

イタリアの国立中学校とヴェルディ音楽院児童クラスの合唱指導を視察した結果,国立中学校の合唱授業ででは,楽譜を使用しないこと,発声が地声でハーモニーを創れないこと,更に,音楽の授業で生徒たちに歌に対する意欲が極めて低いことがわかった。一方,ヴェルディ音楽院の児童合唱は,ベルカントの発声で,生徒の歌唱のレベルは高いが,北欧やハンガリーのような水準の高い合唱にはなっていないことがわかった。音楽教育の現場で起こっているこれらの問題の背景には,イタリアの小学校と高校で音楽教科を廃止するという音楽教育に対する国の方針があり,このことが生徒のやる気や質の低下を生み出していると考えられる。イタリアの音楽教育のこのような状況は,音楽の授業が成立しにくくなっている日本の公立中学校の現状と酷似しており,日本の音楽教育にとっても将来を見据えた教育方針の策定が急務であることを強く示唆している。
著者
虫明 眞砂子 村尾 明子 髙野 敦
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.140, pp.65-75, 2009-02-25

谷川俊太郎の詩が合唱曲の歌詞として,なぜ多くの作曲家によって取り上げられているのか,また,その詩は音楽とどのようなつながりを持つのかについて検討した。その結果,前者については,谷川の詩が,一文が簡潔であること,ことばにリズム感があること,誰もが体験する内容をわかりやすい言葉を用いていることで共感を得やすいことがその原因であることがわかった。後者については,谷川の同一の詩に異なる作曲家が作曲した合唱曲を試聴することにより調べた。その結果,作曲者が異なっても,試聴者は詩に対して共通のイメージを持つこと,それぞれの作品の特徴を的確に捉えていること,更に,作曲者は,時代による音楽環境の変化を捉えた表現方法をとっていることがわかった。
著者
伊土 耕平
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.63-71, 2017-11-28

古事記における主語の表示/省略の傾向を整理すると,①▽→φ→φ…,②φ→▽→φ…,③φ→φ→φ…,④▽→▽→▽…,という4つの型に整理できる(▽=表示,φ=省略)。①は,最初の文で主語を表示し,次の文以降は主語を省略するタイプである。オーソドックスな主語連続で,特別な表現効果は発揮しない。それに対して,②以下は特異な主語表示である。まず②は,最初の文では主語を省略し,次の文で主語を表示する。人物は異常な登場をする。言わば,アンチヒーロー登場型である。③は①の後続部分などに現れる。物語の展開がスピーディーになったり,読み手が登場人物に同化したりする,緊密型である。④は全表示型である。複数の登場人物が紛れないようにするため必要であるときと,ある種の表現効果を発揮するときがある。以上のうち,②は現代語には見られない。
著者
野邊 政雄
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.140, pp.19-32, 2009-02-25

メルボルンのグレン・アイラ市に住む3人の高齢女性に,①日常生活,②ライフヒストリー,③何に幸福感を感じるかの3点に関して聞き取り調査を2006年9月におこなった。本稿では3人の語りを提示し,それに考察を加えた。
著者
安藤 美華代
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.143, pp.47-55, 2010-02-25

Aim The purpose of this study is to identify psychosocial factors associated with drinking behavior among underage university students. Methods: University students under the age of twenty (N=236) completed a self-reported questionnaire. Relationships between psychosocial variables and drinking were investigated using multigroup structural equation modeling analyses. Restllts: Number of friends who drink alcohol, vigor, self-efficacy in interpersonal relationships, self-assertive efficacy against drinking, self-efficacy in overcoming difficulty,and impulsiveness were associated with drinkingbehavior. Conclusion: These findings suggest that self-assertive efficacy to resist peer pressure, self-control and mood status are potentially important factors that could be addressed by programs to prevent drinking among underage university student.
著者
川田 力 木本 勝士
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.35-44, 2011-06-25

伊賀市中心部は,伊賀上野として知られ,上野城とその城下町の町並み,伊賀忍者,松尾芭蕉生誕地,伊賀焼や組み紐などの伝統工芸品といった歴史・文化的観光資源を活用し,観光事業を展開してきた。しかしながら,近年,当該地域の主要観光施設や観光イベントの入込客数は漸減しており,伊賀市中心部の観光は停滞期にあるといえる。こうした,伊賀市中心部の観光地域を再構築するためには,季節変化や交通利用状況に起因する観光入込客数の変動に関する課題,観光地域の魅力向上に関わる観光施設の更新や駐車場整備,景観整備などのハード面の課題,観光事業に携わる諸アクターの連携協力の推進といったソフト面の課題を解決する必要がある。これらの課題解決のためには,多様なアクターが関わっているという伊賀市中心部における観光事業の特徴を活かし,諸アクター間の多様なネットワークを活用した魅力的な活動を引き出すことが鍵となる。
著者
桑原 敏典 松本 慎平 兒山 力
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.29-38, 2009-10-21

本研究は,比較・分類思考を取り入れることにより,地域社会の特色を捉えさせることを目指した小学校社会科地域学習の単元開発研究である。中学年の社会科は,一般に地域学習と呼ばれており,地域産業や地域の消費生活についての学習が行われる。学習過程においては,児童自身が調べ学習を行い,調べた事実から人々の努力や工夫を取り出し,人々と自分の生活との関連を見出すことが中心となる。このような学習においては,習得される知識が表面的なものにとどまり,地域への愛着という態度目標によって認識が閉ざされると言われている。このような問題点の克服を目指し,本研究では,商店,スーパー,地域の市場の三者の特色を比較・分類させ,それぞれの機能や働きと販売・消費に関する社会のしくみについて理解することで地域社会とは何かを把握させる単元を開発した。