- 著者
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白石 太一郎
- 出版者
- 奈良大学文学部文化財学科
- 雑誌
- 文化財学報 (ISSN:09191518)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, pp.1-4, 2009-03
最初から予想していたことであるが、本当にあっという間の短い5年間であった。6年前の平成15年の早春のことと記憶するが、東京国立博物館で開かれた東大寺山古墳出土の中平銘大刀の修理・摸造のための調査検討会のあと、東野治之先生から歴博(国立歴史民俗博物館)退職後、奈良大学の文化財学科へ来ないかとのお誘いを受けた。翌平成16年の3月で、設立準備室以来26年間勤めた歴博を退職することが決まっていたが、私自身も、また家内も歴博のある城下町の佐倉が大いに気にいっており、退職後も二人でこの地に永住する覚悟を決めていた。他からのお話ならすぐお断りしただろうが、奈良大となると話は別で、真剣に考えさせていただく旨お答えした。奈良、すなわち大和は河内とともに私の専門的なブイールドの地であり、特に奈良は高校生時代以来、奈良県立橿原考古学研究所時代の10年間を含めて、歩き回った懐かしいところである。さらに奈良大の文化財学科は、優れた考古学専攻の卒業生を数多く全国各地に送り出しており、その教育研究には大いに敬服していた。また私にとっても、家内にとっても関西は故郷でもある。その後家内とも相談し、また大阪で水野正好先生ともお会いして奈良大の現状についていろいろお話を伺ったが、佐倉永住の覚悟を翻すのにそれほど時間はかからなかった。