著者
野口 久美子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.62, pp.111-143, 2009

原著論文【目的】本稿の目的は,資料をもとに,これまでの読書指導の実践の推移を明らかにすることである。具体的には,小学校・中学校の教職員の読書指導に関する考え方や実践内容の特徴を分析し,その内容にどのような変化があったかを考察する。【方法】全国学校図書館研究大会は50 年以上の歴史があり,全国から約2,000 ~ 3,000 人が集まる。参加者は,読書指導のベテランから経験の浅い初任者まで,さまざまである。本稿では,全国学校図書館研究大会の参加者による実践報告や議論をまとめた記事を分析の対象とし,彼らが読書指導についてどのように考え,実践してきたかを整理した。【成果】資料をもとにした分析の結果,次のことが明らかになった。読書指導は「みんなで読む」ことと「読書で得た内容や感想を深める」ことから始まった。読書内容の質も追求された。しかし,その方法については賛否両論があった。読書指導のための時間を確保することが難しいという声も多く挙がった。そうした中,各地の実践の積み重ねを経て,「短い時間で実施可能な一斉読書活動」と「読書そのものを楽しむ取り組み」が提案,実践された。大会の参加者が実践してきた読書指導に全体としてどのような変化があったかについては,次の3 点を指摘した。①読書指導の実施は困難であったが,1980 年代の「ゆとりの時間」の活用,1990 年代後半以降の「朝の読書」運動の広まりを通じて,10~20分というわずかな時間を利用すれば,読書指導あるいは読書推進活動を行うことができることが認知されるようになったこと,②従来の読書指導では,読後の活動に重点が置かれたが,1980年代頃を境に「読書の楽しさに触れる」こと,「読書そのものと向き合う」ことが見直されたこと,③全員で同じ本を読むこと,事実上読む本を強要することには賛否両論があり,自由読書が重視されるようになったこと。

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