著者
安形 輝
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-18, 2005
被引用文献数
1

原著論文Benedetto et al. recently confirmed the validity of a method for measuring similarity using data compression software. Despite its potential, this method has not yet been applied to the field of information science. The present study proposes the use of CIR, a modified method that uses an improved ratio of compression, and describes two experiments on authorship attribution using data from modern Japanese literature. The first experiment compares the results of applying CIR and Benedetto's method to test collections of modified data (fixed length) using aprocedure similar to that described by Matsuura et al. The second experiment is based on original data (variable length).The first experiment showed an average precision rate of 97.7% for CIR, while Benedetto's method gave a rate of 90.5%. The CIR method proves to be an improvement on the best method described by Matsuura et al. The second experiment confirmed the e
著者
岡部 晋典 中林 幸子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.68, pp.85-116, 2012

原著論文【目的】近年, 科学のふりをしているが科学ではない「疑似科学」が問題として科学者やサイエンスコミュニケータらからの批判がゆるやかに高まっている。このような状況のなか, 知識を蓄積・伝達する機関である図書館において, 「科学的な合理性に著しく反した図書」はどのように扱われているか, 公共図書館の規模別に実態を明らかにする。【方法】調査手法には半構造化インタビューを用い, 30分~3時間程度の聞き取り調査を行った。調査対象は北海道から関西まで, 大規模図書館5館と小規模図書館3館の選書担当の職員である。調査時期は2009年10月~2010年2月である。質問項目は選書・リクエストの実態, 他館連携, 図書館の自由に関する宣言に対する意識, 司書のライフヒストリー等といった9項目を大枠として尋ねた。【結果】聞き取りによる主な結果は以下のとおりである。(1)選書カタログにおける所与の番号が図書館の蔵書構築には大きな影響を与えており, 科学の分類番号を持つ疑似科学図書は科学の棚に置かれ続けうる(2)自館の予算が豊富であると, 他館から「悩ましい図書」を買ってもらえるという期待を感じている(3)個人的心情では好ましくない図書であっても図書館には置かざるをえないと理解しつつも, そのための実態として「棚争い」や閉架収蔵が行われている(4)大規模図書館では疑似科学図書は棚に存在する「問題」であると感じている司書がいる一方, 小規模図書館では疑似科学図書はリテラシー向上のツールや蔵書の多様性を担保する存在としてみなしている傾向にある等が発見された。
著者
安形 輝 安形 麻理
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-23, 2009

原著論文【目的】 未解読文書に関する研究は、文書内容の解読に焦点を当てたものが多い。 しかし、長年にわたって解読不能である文書は、何らかの意図で作成された意味をなさない「捏造文書」 であり、そもそも解読自体ができない可能性もありうる。 本研究の目的は、文書構造の有無から解読可能性そのものを判定する手法を提案することである。 【方法】 既存の多くの言語に応用可能なテキスト処理技術は未解読文書に対しても有効であるという前提に基づき、未解読文書の部分文書同士の類似度をクラスタリング手法によって分析することにより、首尾一貫した文書構造の有無を検証する。 次に、本書構造と、図表やページ順など他の手がかりから導かれる構造との対応関係を比較 分析することによって、「捏造文書」を判定する 。 【結果】 提案手法を用いて有名な未解読文書であるヴォイニッチ写本を分析した結果、本文の構造と挿図・ページから推測される構造が一致することが明らかになった。つまり、ヴォイニッチ写本は一貫性のある構造を持つ文書であり、「捏造文書」ではない可能性が高いと判定できる。実験により提案手法の適用可能性を示すことができた。
著者
薬袋 秀樹
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
三田図書館・情報学会研究大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.21-25, 2016

三田図書館・情報学会2016年度研究大会 日時:2016年10月29日(土) 場所:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
著者
河本 毬馨 辻 慶太
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.79, pp.85-107, 2018

【目的】近年, 米国では "library as place (場所としての図書館)"という概念が広まり, 利用者が長時間滞在しやすいよう飲食を許す図書館が現れている。一方, 日本の多くの図書館では, 従来館内飲食は許されないと言われてきた。だが, 日本の館内飲食の現状や飲食許可による効果などは明らかにされていない。そこで本研究では, (1) 日本の図書館における現在の飲食方針, (2) 飲食による図書館資料への影響, (3) 図書館利用者の館内飲食に対する反応, (4) 図書館員の館内飲食に対する意見, (5) 館内飲食許可の前後における図書館利用量の変化, を明らかにする。【方法】本研究では, (a) アンケート調査, (b) 図書館利用量分析, を行った。(a) アンケートは無作為抽出した公共・大学図書館各500館に2015年5~7月に送付し, それぞれ356館, 329館から回答を得た。(b) 図書館利用量分析では『日本の図書館 : 統計と名簿』から入手した来館者数, 個人貸出総数, 参考業務受付件数が, 飲食を許した年の前後2年間ずつでどのような増加率を示しているかを調べた。【結果】調査の結果, 公共図書館の56.2%, 大学図書館の62.3%が飲み物または食べ物の利用を許していることが明らかとなった。また, 館内飲食に付随する問題として取り上げられる資料への汚れに関しては, 飲食を許した後に汚れが「目立つ」「少し目立つ」と回答した公共図書館は4.0%, 大学図書館は14.6%と比較的低い割合であることがわかった。さらに, 飲み物を許した公共図書館の来館者数の増加率の平均値は+65.7%であり, 全国の平均値+8.6%より有意水準0.05 で高いことや, 食べ物を許した公共図書館の個人貸出総数の増加率の中央値は+56.5%であり, 全国の中央値+4.1%より有意水準0.01 で高いことなども示された。因果関係の証明などは難しいものの, 飲食許可後は来館者数や個人貸出総数が増加する傾向があり, 館内飲食は図書館利用量向上に有効なサービスである可能性が示された。Purpose : While more libraries in the United States are starting to allow food and drinks as a result of the rise of the "library as place" theme, the changing policies on food and drinks in Japanese libraries have not been studied. Therefore, we investigated Japanese libraries' food and drink policies and their effect on library materials, as well as user reactions, librarians' opinions of the policies, and changes in library usage after the introduction of the policies.Methods : In 2015, we sent questionnaires to 1,000 libraries (500 public and 500 university), of which 356 public and 329 university libraries responded. We also investigated library usage (gate counts, loans, and reference transactions) both before and after the introduction of policies that allow food and drinks, and found that the numbers consistently increased after the policies were put in place.Results : The results show that 56.2% of public and 62.3% of university libraries allow food and drinks. Only 4.0% of public and 14.6% of university libraries reported that these policies resultedin noticeable stains on library materials. The gate count for all public libraries, including those that did not allow food and drinks, increased by an average of 8.6%, while that for public libraries allowing food and drinks increased by 65.7%. Public libraries that allowed food and drinks saw a median 56.5% increase in the number of library loans. Therefore, allowing food and drinks may have positive effects on library usage.原著論文
著者
薬袋 秀樹
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
三田図書館・情報学会研究大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.11, pp.21-24, 2013

研究の目的は、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年文部科学省告示第172号)が私立図書館も対象としたことに対する専門図書館協議会と日本図書館協会の意見について検討し、その意味を明らかにすることである。資料として、上記の「望ましい基準」及び2008年以後の図書館法における私立図書館に関する文献を収集し、次の4つの研究課題を設定し、その観点から文献を分析した。①基準では、私立図書館はどのように規定されているか。②図書館法では、私立図書館はどのように規定されているか。③專図協の意見はどのようなものか。④日図協の意見はどのようなものか。⑤両者の意見にはどのような意味があるか。主な成果として、次のことが明らかになった。私立図書館に対する国・地方公共団体の関与は現在も厳しく制限されている。基準には私立図書館に対する強制力がなく、私立図書館は自主的に基準の実現に努める。専図協関係者は、基準に対して、図書館運営の目安の確立、社会的認知、ネットワーク、サービスの発展等の点を評価している。結論として、基準は私立図書館に対する国・地方公共団体の干渉を導くものではなく、専図協関係者によって一定の意義が認められている。
著者
倉田 敬子 三根 慎二 森岡 倫子 酒井 由紀子 加藤 信哉 上田 修一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.59-90, 2009

原著論文【目的】 本論文の目的は、 日本の医学研究者において、 電子ジャーナルの利用がどこまで進み、それにともない論文の読みの形態、 入手経路、 検索手段にどのような変化が生じているかを明らかにすることにある。 【方法】 日本で医学部、医学研究科を持つ80大学に所属する医学研究者2,033人を抽出し、質問紙調査を実施した。 質問項目は、先行研究の分析に基づき、以下のとおりとした。 1) フェイスシート 、2) 最近読んだ論文の形態、入手経路、検索手段、 3) 普段使う検索手段、書誌データベース、 4) オープンアクセス手段の認知度と利用。 【結果】 2007年3月までに回収できた651件を集計した(回収率32.3%)。 主な結果は以下のとおりである。 1) 最近読んだ論文の7割は電子版論文であった。 2) 電子版論文の85%は大学図書館が契約する購読電子ジャーナルであり、印刷版の6割は個人購読雑誌であった。 3) 最近読んだ論文の検索手段はPubMedが一般的で、全論文の7割弱、電子版論文の8割以上がPubMedによって検索されていた。 PubMedを週1回以上検索する研究者は9割に上った。 一方、最近読んだ論文をサーチエンジンで見いだした研究者はほぼ皆無であった。 4) オープンアクセスは論文の入手先としては、PubMed Central が1割利用されていた以外は使われていなかった。 5) 年齢による論文利用パターンに違いはなかったが、 専門領域(基礎系、臨床内科系、臨床外科系に区分)によっては大きな違いがあった 。
著者
池内 淳
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-36, 2001

Although the problem of library size is one of the classical issues in the field of libraryscience, there has been very little direct discussion on it. Then, the purposes of this paper areto suggest methodologies for defining optimal library size in the viewpoint of efficiency, and toverify the applicability of those. In this study, two different methodologies were conducted using the statistical data ofJapanese public libraries past four years (1997-2000). Actual analysis was performed in twolevels, which is municipal-level and service point-level. lt was found that the concept oflibrary's efiiciency isn't consistent one. Because optimal library size also differ, when thecombination of variables are differed, even if it used the same methodology.
著者
立石 亜紀子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.67, pp.39-61, 2012

原著論文【目的】図書館の電子化, 特にインターネットの隆盛により, あらゆる資料は将来的に電子化され, 建物としての図書館はやがて不要になるという議論がある。一方で, 「場所」が象徴する伝統的な図書館の役割, 「場所としての図書館」の本質を探り, 再評価する動きもある。国内においては「場所としての図書館」への再評価が, ラーニング・コモンズの隆盛という形で広がりつつあるが, 両者は同等ではなく, 設置の理念的な側面や位置づけの検討が不十分である。これは, 「場所としての図書館」の概念を明示することにより, 解決ができると考えられるが, 日本の大学図書館において「場所としての図書館」の利用実態はどんなものか, という点に焦点を当てた研究は乏しい。本稿ではこの点について調査した。【方法・結果】日本の大学図書館における「場所としての図書館」の利用実態を把握するため, 2009年6月23日から25日の3日間, 横浜国立大学中央図書館において, 観察調査を実施した。調査対象館を場所と目的によって30のエリアに分割し, 利用者の①滞在場所, ②利用物品, ③利用行動, を調査した。3日間で延べ9,610人の行動を記録し, その結果, ①「学習の場所」としての役割, ② PC利用者の存在, ③多様な利用実態, といった「場所としての図書館」の利用実態が明らかになった。また本稿では, 観察調査という手法によって, 質問紙調査では得られない実証的データに基づいて利用実態を明らかにすることで, 大学図書館の利用者調査の新たな手法の可能性を示した。一方で観察調査では, 利用者の主観的な判断や意識を計ることはできない点が課題となった。
著者
緑川 信之
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.56, pp.23-42, 2006

The concept of information has traditionally been treated from two points of view: one assumes that information is a "thing" and the other assumes that it is a "non-thing" (typically, a process). To this point, no approach has attempted to unify these two stances. In this article, I define the concept of information as non-thing, but I also show how information can also be seen as a thing. The article also includes a comparison of my definition of the concept of information with some traditional definitions. In addition, I discuss the necessity of investigating various terms that include the word "information" which are used in library and information science, such as information retrieval and information use.これまで、「情報」概念は2つの捉え方をされてきた: 情報をモノとして捉える立場とモノではないという立場である。両者を統一的に捉えることはまだ行われていない。本稿では、「情報」はモノではないという立場から、「情報」概念を定義し、同時に、なぜモノのようにみえることもあるのかを説明した。さらに、筆者の「情報」概念の定義と、これまでの代表的な「情報」 概念の定義との比較を行った。また、情報検索や情報利用など図書館情報学における種々の「情報」を冠する用語の検討が必要であることを指摘した。原著論文
著者
汐崎 順子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.60, pp.29-60, 2008

原著論文【目的】 本稿の目的は小河内芳子の経歴と活動を明らかにすること,および小河内が活動した各時代における児童サービス,児童図書館員の動きを示すことである。 【方法】 小河内芳子の経歴を時代別に4区分し,各時代における関連文献を調査収集し,検証した。併せて関係者への聞き取り調査を実施した。 【結果】 小河内は児童図書館員として幸運な経歴を持ち,その立場を活かした活動により児童サービスの動きに影響を与えたことが分かった。その業績のうち評価すべきものは, (1) 組織的な活動とネットワークの形成と, (2) 児童図書館員の専門性の確立および資質の向上である。1970年代には,量を重視して公立図書館の発展をめざす動きの中,質の充実をめざす小河内の活動に対する批判が生まれたが,これは児童サービスに取り組む視点の違いによるものであることが考察された。Purpose: The purpose of this study is to illustrate and define Yoshiko Kogouchi's career and activities, as well as to research and analyze the changes that occurred in library services to children and the activities of children's librarians during her time.Methods: For the purpose of this research, Kogouchi's career was divided into four periods. Various related documents from each period were closely examined and evaluated. In addition, interviews were conducted with people who were acquainted with her activities.Results: Kogouchi's career showed that she had a fortunate career as a children's librarian. Her activities were conducted based on this position which then influenced the movement of library services to children. Her most distinguished contributions were: (1) the approach toconducting systematic activities and creating a network system, and (2) the approach to establishing children's librarianship as a field and developing specialists in that field. In the 1970s, Kogouchi's emphasis on quality was criticized during a time when quantitative expansionof public libraries was the mainstream. Research showed that this was the result of a dfference in opinion on how to provide library services to children.
著者
薬袋 秀樹
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
三田図書館・情報学会研究大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.21-25, 2016 (Released:2016-11-02)

三田図書館・情報学会2016年度研究大会 日時:2016年10月29日(土) 場所:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
著者
谷口 祥一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.119-151, 2009

原著論文【目的】 OPACの機能向上の方策の1つとして、FRBR(「書誌レコードの機能要件」)に依拠した著作に基づく集中化とナビゲート機能の実現が試みられている。 本研究は、こうしたOPACのFRBR化に向けて、わが国で作成されている代表的な書誌レコードであるJAPAN/MARC書誌レコードを対象として、著作の機械的同定法について提案を行い、その有効性の検証を試みる。 著作に関する情報の記録が少ないわが国のレコードを用いて、どの程度著作の機械的同定が可能であるのか、あるいはどのような方式が有効であるのかを明らかにする。【方法】 個々の書誌レコードから著作の同定識別用に著作同定キーを必要な数だけ複数生成し、同定キーの一致をもって同一著作と機械的に判定する方法を採用した。 著作同定キーは、「著者名+タイトル」との構成とし、その生成には可能な複数の方式を試みた。 それぞれの方式ごとに著作のクラスタリングを実行し、人手により別途形成した正解集合を用いて、クラスタリング結果について性能を評価した。 【結果】 実験の結果 a)平均的には、採用した機械的な著作同定は十分に機能するが、個別著作ごとにみたときにはその特徴に依存して性能には幅がみられた。 該当するレコー ド数が多く、かつ全集・選集等ではない著作については、無著者名著作か否か、統一タイトルを有するか否かなどにより性能が大きく異なる。 また、b) 単一の書誌レコードから複数の書誌階層レベルごとに著作同定キーを生成し、さらに各階層レベルから必要な数だけ複数個の著作同定キーを生成することが有効であった。 c) 例外はあるものの、著者標目、責任表示、タイトル標目などを組み合わせて用いることは有効である。Purpose: Efforts have been made to improve the OPACs by collocating bibliographic records sharing the same "work" and navigating users among records under a certain "work", according to the Functional Requirements for Bibliographic Records (FRBR). This paper investigates methods of automatically identifying "works", i.e., grouping bibliographic records sharing the same work, for the JAPAN/MARC records, which are typical Japanese bibliographic records created and maintained by libraries in Japan. It reports the extent to which records can be automatically identified as members of a particular work and also which of the possible methods are effective.Methods: The method used in this study is to generate work identification keys for each work represented in a bibliographic record and then to bring the keys representing the same works together. The keys are in principle constructed as a combination of an author name and a title from the record. Several methods of generating such keys were examined and the clustering of keys was executed for each method. The clusters built automatically were evaluated by comparing them with the sample correct sets built manually.Results: The results of the experiment show that the proposed method is effective in average cases; however, the performance depends on the characteristics of works, for example, the volume of records sharing the same work, whether anonymous or not, and whether uniform titles exist. It also shows that it is effective to generate keys for every bibliographic hierarchical level with data elements such as author headings, statements of responsibility, descriptive titles, and title headings.
著者
吉田 右子 YOSHIDA Yuko
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-31, 2010-12

【目的】本研究の目的は,ライブラリアンシップに関わる批判的観点の一つであるジェンダー(文化的性差)に着目し,図書館史におけるジェンダー研究の分析を通じて,批判的研究の枠組みを検証することである。Michael H. Harris が民主主義機関としての図書館にかかわる批判的視座を提示したのは 1970 年代であり,その後 Harris の“修正解釈”を踏まえた批判的な視点を基盤とする新たな図書館史研究が展開されるようになった。批判的研究は研究対象となる事象を階級,ジェンダー,マイノリティといった特定の切り口から再検証し,再構築していくことを目指している。 【方法】批判的図書館史研究の系譜の中にジェンダーを対象とする研究を位置づけるために,アメリカ図書館史研究における図書館女性研究の先行研究の分析を行なった。さらにこれらの文献にあらわれるジェンダーの概念が,公共図書館研究に与える意義について検討した。 【結果】先行研究を分析した結果,図書館実践という地平に,男性図書館員,対向軸としての女性図書館員・女性支援者・女性利用者を配置する布置は,主流の視点からの分析に偏っていた従来の研究方法に,新たな分析の枠組みを与える可能性を有していることが明らかになった。最終的に公共図書館研究におけるジェンダー概念への着目は,図書館にかかわる主流文化・周縁文化の捉え直しを意味し,図書館をめぐる文化政治的構造を再考するための手掛かりとなることが示された。
著者
新見 槙子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.81-126, 2011

原著論文【目的】本研究の目的は, 1990年代以降から現在までを中心とする, アメリカの学部学生用図書館のサービスと概念の変化の検討をとおして, 学部学生用図書館の変遷を明らかにすることである。【方法】まず, 既往文献をもとに従来から指摘されている学部学生用図書館の変化を整理した。その後, 2009年に学部学生用図書館を設置していた全23大学を対象とする現状調査を行った。調査方法は, ウェブサイトと文献を利用した文献調査とし, 1990年代以降のサービスの内容と実施の背景(理由やプロセスなど)を調査した。顕著な変化があった4大学, 学部学生用図書館を新設した2大学の事例を記述した後に, 1990年代以降の学部学生用図書館の傾向, 変化の背景をまとめた。最後に, 既往文献の整理と本研究の調査結果をもとに, 学部学生用図書館の概念の変化を検討した。【結果】1990年代以降の学部学生用図書館において, 1)サービス面での変化として, a)サービスの集約化, b)教育への関与の強まり, c)学生の学習成果への関与が見られ, 2)実施体制面での変化として, a)図書館システム内での協働, b)教員や他部署との協働が見られた。学部学生用図書館の概念は, 従来の「研究大学における学部学生のための図書館とその図書館によるサービス」から「図書館システム全体による学部学生に対するサービス」に変化した。さらに現在では, 図書館の枠を超え, 「研究大学における学部学生に対するサービス」に変化しつつある。この概念の変化は, 図書館の取り組みが大学全体の取り組みのなかに組み込まれるようになった, あるいは図書館が大学全体というなかに自らの存在を位置づけるようになった現れであるといえる。