著者
安形 輝
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-18, 2005
被引用文献数
1 or 0

原著論文Benedetto et al. recently confirmed the validity of a method for measuring similarity using data compression software. Despite its potential, this method has not yet been applied to the field of information science. The present study proposes the use of CIR, a modified method that uses an improved ratio of compression, and describes two experiments on authorship attribution using data from modern Japanese literature. The first experiment compares the results of applying CIR and Benedetto's method to test collections of modified data (fixed length) using aprocedure similar to that described by Matsuura et al. The second experiment is based on original data (variable length).The first experiment showed an average precision rate of 97.7% for CIR, while Benedetto's method gave a rate of 90.5%. The CIR method proves to be an improvement on the best method described by Matsuura et al. The second experiment confirmed the e
著者
岡部 晋典 中林 幸子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.68, pp.85-116, 2012

原著論文【目的】近年, 科学のふりをしているが科学ではない「疑似科学」が問題として科学者やサイエンスコミュニケータらからの批判がゆるやかに高まっている。このような状況のなか, 知識を蓄積・伝達する機関である図書館において, 「科学的な合理性に著しく反した図書」はどのように扱われているか, 公共図書館の規模別に実態を明らかにする。【方法】調査手法には半構造化インタビューを用い, 30分~3時間程度の聞き取り調査を行った。調査対象は北海道から関西まで, 大規模図書館5館と小規模図書館3館の選書担当の職員である。調査時期は2009年10月~2010年2月である。質問項目は選書・リクエストの実態, 他館連携, 図書館の自由に関する宣言に対する意識, 司書のライフヒストリー等といった9項目を大枠として尋ねた。【結果】聞き取りによる主な結果は以下のとおりである。(1)選書カタログにおける所与の番号が図書館の蔵書構築には大きな影響を与えており, 科学の分類番号を持つ疑似科学図書は科学の棚に置かれ続けうる(2)自館の予算が豊富であると, 他館から「悩ましい図書」を買ってもらえるという期待を感じている(3)個人的心情では好ましくない図書であっても図書館には置かざるをえないと理解しつつも, そのための実態として「棚争い」や閉架収蔵が行われている(4)大規模図書館では疑似科学図書は棚に存在する「問題」であると感じている司書がいる一方, 小規模図書館では疑似科学図書はリテラシー向上のツールや蔵書の多様性を担保する存在としてみなしている傾向にある等が発見された。
著者
安形 輝 安形 麻理
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-23, 2009

原著論文【目的】 未解読文書に関する研究は、文書内容の解読に焦点を当てたものが多い。 しかし、長年にわたって解読不能である文書は、何らかの意図で作成された意味をなさない「捏造文書」 であり、そもそも解読自体ができない可能性もありうる。 本研究の目的は、文書構造の有無から解読可能性そのものを判定する手法を提案することである。 【方法】 既存の多くの言語に応用可能なテキスト処理技術は未解読文書に対しても有効であるという前提に基づき、未解読文書の部分文書同士の類似度をクラスタリング手法によって分析することにより、首尾一貫した文書構造の有無を検証する。 次に、本書構造と、図表やページ順など他の手がかりから導かれる構造との対応関係を比較 分析することによって、「捏造文書」を判定する 。 【結果】 提案手法を用いて有名な未解読文書であるヴォイニッチ写本を分析した結果、本文の構造と挿図・ページから推測される構造が一致することが明らかになった。つまり、ヴォイニッチ写本は一貫性のある構造を持つ文書であり、「捏造文書」ではない可能性が高いと判定できる。実験により提案手法の適用可能性を示すことができた。
著者
倉田 敬子 三根 慎二 森岡 倫子 酒井 由紀子 加藤 信哉 上田 修一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.59-90, 2009

原著論文【目的】 本論文の目的は、 日本の医学研究者において、 電子ジャーナルの利用がどこまで進み、それにともない論文の読みの形態、 入手経路、 検索手段にどのような変化が生じているかを明らかにすることにある。 【方法】 日本で医学部、医学研究科を持つ80大学に所属する医学研究者2,033人を抽出し、質問紙調査を実施した。 質問項目は、先行研究の分析に基づき、以下のとおりとした。 1) フェイスシート 、2) 最近読んだ論文の形態、入手経路、検索手段、 3) 普段使う検索手段、書誌データベース、 4) オープンアクセス手段の認知度と利用。 【結果】 2007年3月までに回収できた651件を集計した(回収率32.3%)。 主な結果は以下のとおりである。 1) 最近読んだ論文の7割は電子版論文であった。 2) 電子版論文の85%は大学図書館が契約する購読電子ジャーナルであり、印刷版の6割は個人購読雑誌であった。 3) 最近読んだ論文の検索手段はPubMedが一般的で、全論文の7割弱、電子版論文の8割以上がPubMedによって検索されていた。 PubMedを週1回以上検索する研究者は9割に上った。 一方、最近読んだ論文をサーチエンジンで見いだした研究者はほぼ皆無であった。 4) オープンアクセスは論文の入手先としては、PubMed Central が1割利用されていた以外は使われていなかった。 5) 年齢による論文利用パターンに違いはなかったが、 専門領域(基礎系、臨床内科系、臨床外科系に区分)によっては大きな違いがあった 。
著者
池内 淳
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-36, 2001

Although the problem of library size is one of the classical issues in the field of libraryscience, there has been very little direct discussion on it. Then, the purposes of this paper areto suggest methodologies for defining optimal library size in the viewpoint of efficiency, and toverify the applicability of those. In this study, two different methodologies were conducted using the statistical data ofJapanese public libraries past four years (1997-2000). Actual analysis was performed in twolevels, which is municipal-level and service point-level. lt was found that the concept oflibrary's efiiciency isn't consistent one. Because optimal library size also differ, when thecombination of variables are differed, even if it used the same methodology.
著者
谷口 祥一
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.119-151, 2009

原著論文【目的】 OPACの機能向上の方策の1つとして、FRBR(「書誌レコードの機能要件」)に依拠した著作に基づく集中化とナビゲート機能の実現が試みられている。 本研究は、こうしたOPACのFRBR化に向けて、わが国で作成されている代表的な書誌レコードであるJAPAN/MARC書誌レコードを対象として、著作の機械的同定法について提案を行い、その有効性の検証を試みる。 著作に関する情報の記録が少ないわが国のレコードを用いて、どの程度著作の機械的同定が可能であるのか、あるいはどのような方式が有効であるのかを明らかにする。【方法】 個々の書誌レコードから著作の同定識別用に著作同定キーを必要な数だけ複数生成し、同定キーの一致をもって同一著作と機械的に判定する方法を採用した。 著作同定キーは、「著者名+タイトル」との構成とし、その生成には可能な複数の方式を試みた。 それぞれの方式ごとに著作のクラスタリングを実行し、人手により別途形成した正解集合を用いて、クラスタリング結果について性能を評価した。 【結果】 実験の結果 a)平均的には、採用した機械的な著作同定は十分に機能するが、個別著作ごとにみたときにはその特徴に依存して性能には幅がみられた。 該当するレコー ド数が多く、かつ全集・選集等ではない著作については、無著者名著作か否か、統一タイトルを有するか否かなどにより性能が大きく異なる。 また、b) 単一の書誌レコードから複数の書誌階層レベルごとに著作同定キーを生成し、さらに各階層レベルから必要な数だけ複数個の著作同定キーを生成することが有効であった。 c) 例外はあるものの、著者標目、責任表示、タイトル標目などを組み合わせて用いることは有効である。Purpose: Efforts have been made to improve the OPACs by collocating bibliographic records sharing the same "work" and navigating users among records under a certain "work", according to the Functional Requirements for Bibliographic Records (FRBR). This paper investigates methods of automatically identifying "works", i.e., grouping bibliographic records sharing the same work, for the JAPAN/MARC records, which are typical Japanese bibliographic records created and maintained by libraries in Japan. It reports the extent to which records can be automatically identified as members of a particular work and also which of the possible methods are effective.Methods: The method used in this study is to generate work identification keys for each work represented in a bibliographic record and then to bring the keys representing the same works together. The keys are in principle constructed as a combination of an author name and a title from the record. Several methods of generating such keys were examined and the clustering of keys was executed for each method. The clusters built automatically were evaluated by comparing them with the sample correct sets built manually.Results: The results of the experiment show that the proposed method is effective in average cases; however, the performance depends on the characteristics of works, for example, the volume of records sharing the same work, whether anonymous or not, and whether uniform titles exist. It also shows that it is effective to generate keys for every bibliographic hierarchical level with data elements such as author headings, statements of responsibility, descriptive titles, and title headings.
著者
吉田 右子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-31, 2010-12

【目的】本研究の目的は,ライブラリアンシップに関わる批判的観点の一つであるジェンダー(文化的性差)に着目し,図書館史におけるジェンダー研究の分析を通じて,批判的研究の枠組みを検証することである。Michael H. Harris が民主主義機関としての図書館にかかわる批判的視座を提示したのは 1970 年代であり,その後 Harris の“修正解釈”を踏まえた批判的な視点を基盤とする新たな図書館史研究が展開されるようになった。批判的研究は研究対象となる事象を階級,ジェンダー,マイノリティといった特定の切り口から再検証し,再構築していくことを目指している。 【方法】批判的図書館史研究の系譜の中にジェンダーを対象とする研究を位置づけるために,アメリカ図書館史研究における図書館女性研究の先行研究の分析を行なった。さらにこれらの文献にあらわれるジェンダーの概念が,公共図書館研究に与える意義について検討した。 【結果】先行研究を分析した結果,図書館実践という地平に,男性図書館員,対向軸としての女性図書館員・女性支援者・女性利用者を配置する布置は,主流の視点からの分析に偏っていた従来の研究方法に,新たな分析の枠組みを与える可能性を有していることが明らかになった。最終的に公共図書館研究におけるジェンダー概念への着目は,図書館にかかわる主流文化・周縁文化の捉え直しを意味し,図書館をめぐる文化政治的構造を再考するための手掛かりとなることが示された。
著者
新見 槙子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.81-126, 2011

原著論文【目的】本研究の目的は, 1990年代以降から現在までを中心とする, アメリカの学部学生用図書館のサービスと概念の変化の検討をとおして, 学部学生用図書館の変遷を明らかにすることである。【方法】まず, 既往文献をもとに従来から指摘されている学部学生用図書館の変化を整理した。その後, 2009年に学部学生用図書館を設置していた全23大学を対象とする現状調査を行った。調査方法は, ウェブサイトと文献を利用した文献調査とし, 1990年代以降のサービスの内容と実施の背景(理由やプロセスなど)を調査した。顕著な変化があった4大学, 学部学生用図書館を新設した2大学の事例を記述した後に, 1990年代以降の学部学生用図書館の傾向, 変化の背景をまとめた。最後に, 既往文献の整理と本研究の調査結果をもとに, 学部学生用図書館の概念の変化を検討した。【結果】1990年代以降の学部学生用図書館において, 1)サービス面での変化として, a)サービスの集約化, b)教育への関与の強まり, c)学生の学習成果への関与が見られ, 2)実施体制面での変化として, a)図書館システム内での協働, b)教員や他部署との協働が見られた。学部学生用図書館の概念は, 従来の「研究大学における学部学生のための図書館とその図書館によるサービス」から「図書館システム全体による学部学生に対するサービス」に変化した。さらに現在では, 図書館の枠を超え, 「研究大学における学部学生に対するサービス」に変化しつつある。この概念の変化は, 図書館の取り組みが大学全体の取り組みのなかに組み込まれるようになった, あるいは図書館が大学全体というなかに自らの存在を位置づけるようになった現れであるといえる。
著者
渡邉 斉志
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.58, pp.103-115, 2007

短報Purpose: The Japanese public library community is struggling with the issue of protecting the confidentiality of user information, because this is a key point in obtaining users' trust. The purpose of this paper is to analyze whether the community's efforts are consistent with its aims.Results: Japanese libraries are often requested to delete user information as soon as possible in order to protect user privacy. This policy is not only based on strengthening sensitivity to privacy, but also on the fact that police have ordered the disclosure of user information repeatedly in the past, and, by complying with their legal duties, librarians get labeled asdisloyal. However, it is difficult to implement customized services like Amazon's recommendations without collecting user information, and the lack of such innovative client-centered services causes public libraries to stagnate. Therefore, it is obvious that the library community itself poses the largest hindrance to progress by refusing to improve its own services.
著者
武者小路 澄子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-42, 2004

原著論文Knowledge' is closely related to the notion of 'information', which is one of the central notions in Library and Information Science, and is itself one of the most important notions in this field. In order to study how the notion 'knowledge' is situated in Library and Information Science, various articles and books which involve this notion were selected from reference books and textbooks in Library and Information Science. In examining those articles andbooks, 10 research areas which involve the notion 'knowledge' were selected. Based on the ethnographic methods, such as 'coding' and categorization, each of the articles and books was coded as to what kind of notion is assumed under the term 'knowledge', and how it is used. This sequence of coding produced 5 main analytical points to examine the notion and usage of 'knowledge' in each of the research areas. These analytical points are (1) how the term 'knowledge' is related with the term 'information', (2) how far it is generalized, (3) whether it is held as 'being personal' or as 'being shared', (4) in what way it is evaluated, and (5) where it is conceptually located.The notion and usage of 'knowledge' in each of the research areas were then explicated through these analytical points, and how 'knowledge' is situated in Library and Information as a whole was further inferred based on the analysis. Finally, some unexplored aspects of this notion are pointed out, and some direction within the study of 'knowledge' is suggested for Library and Information Science.
著者
徐 有珍
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.72, pp.37-61, 2014

原著論文【目的】地方公共団体が, 自ら作成した行政刊行物を体系的かつ効率的に管理・保存することは, 行政刊行物の持続的な利用を保障するために行うべき重要な課題の一つである。本研究は, 日本の都道府県における行政刊行物の管理・保存体制の現状を検討し, 問題点を明らかにすることを目的とする。【方法】47都道府県のホームページにおいて提供されている例規集の中から, 各都道府県が定めている行政刊行物の取扱に関する規則等を調査した。規則等の内容を行政刊行物の管理段階によって, 行政刊行物の送付, 整理, 廃棄・保存, 提供の項目に分けて分析を行った。【結果】17ヵ所の都道府県における行政刊行物管理の制度的根拠となる規則等が明らかになった。都道府県は規則等の送付規定により, 該当都道府県が作成した行政刊行物を網羅的に収集する制度的仕組みを備えている。行政刊行物の保存に関しては, 歴史的文化的価値を持つ行政刊行物を永久保存することを規則等に明記している大阪府の事例, 行政刊行物管理体制の中で公文書館を行政刊行物の保存機関として位置づけている東京都の事例などが確認できた。しかし, 以下の課題も明らかになった。第1に, 規則等が適用される対象が知事部局に限定され, 議会, 各種委員会などの行政組織が作成した行政刊行物は管理制度を持たないこと, 第2に, 規則等の主な目的が行政刊行物の円滑な利用と管理の効率化であるため, 行政刊行物の保存を含めた行政刊行物管理の全段階を保障するような内容とはなっていないこと, 第3に, 各都道府県内に複数存在する行政刊行物の諸管理機関を行政刊行物管理体制の中に取り入れて活用しようとする試みが足りないことが挙げられる。【Purpose】The purpose of this study is to examine the current systems used to manage and preserve administrative publications in local governments in Japan and identify related problems.【Methods】The study examined the laws and regulations on the websites of each of the 47 prefectures in Japan to see what regulations each local government has regarding the management and preservation of administrative publications.【Results】As a result of this investigation, 17 local governments were found to have institutional grounds for the management of administrative publications and their content. These local governments are seen to be equipped with institutional systems to comprehensively collect their administrative publications in accordance with their regulations that require affiliated organizations to send their publications to them. As for the preservation of administrative publications, the study looked into the case of Osaka, which has a set of regulations that mandates the permanent preservation of administrative publications of historical or cultural value, and that of Tokyo, which has commissioned the task of publication preservation to the Tokyo Metropolitan Archives to which administrative publications are required to be sent. The regulations, however, are found to have some common limitations : first, the coverage of both the range of administrative organizations and publications is limited, for example, publications issued by the assembly or committees are excluded. Second, the regulations do not seem to cover all the stages of administrative publication management, including preservation. Third, the lack of efforts to incorporate agencies responsible for the management of administrative publications in local governments, which include the archive, assembly library, and public libraries, into the whole system of administrative publication management.
著者
吉田 昭子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.67, pp.1-38, 2012

原著論文【目的】伊東平蔵(1857-1929)は, 明治末期から昭和初期の日本の図書館界で, 図書館設立に精通した人物として知られている。彼は東京外国語学校の教授を務め, 一方で多くの図書館設立建設準備にあたった。しかし, 彼に関する先行研究は充分に行われてきたとはいえない。本研究の目的は, 伊東平蔵の人物像と, 実践の中で培われた図書館思想を明らかにすることである。【方法】伊東の経歴を明らかにするために, 先行研究で用いられた資料や公刊された資料類の調査を実施した。さらに横浜市中央図書館が所蔵している伊東の資料(日記, 書簡類の複製)や, 東京都公文書館等の一次資料の調査を行った。彼の図書館思想については, 公刊された伊東の論文などから再構成した。【結果】伊東の生涯を7つの時期に分けて検討を行った。彼は東京に市立図書館がなかった時代に, 市民のための通俗図書館の設立運営にあたった。伊東は私立図書館, 市立図書館, 県立図書館と性格の異なる図書館を設立し, その運営に当る一方, 人材育成を通じて図書館界の基盤の必要性を唱え, その整備と内容充実に力を注いだ。こうした実践の中で, 彼の考え方は, 小規模な図書館を数多く設立することから, 図書館の通俗性を維持しながらも自治体の規模にあった図書館を設立すること, さらに府立図書館や県立図書館と市町村立の図書館の役割分担が重要であることへと展開していった。
著者
立石 亜紀子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.67, pp.39-61, 2012

原著論文【目的】図書館の電子化, 特にインターネットの隆盛により, あらゆる資料は将来的に電子化され, 建物としての図書館はやがて不要になるという議論がある。一方で, 「場所」が象徴する伝統的な図書館の役割, 「場所としての図書館」の本質を探り, 再評価する動きもある。国内においては「場所としての図書館」への再評価が, ラーニング・コモンズの隆盛という形で広がりつつあるが, 両者は同等ではなく, 設置の理念的な側面や位置づけの検討が不十分である。これは, 「場所としての図書館」の概念を明示することにより, 解決ができると考えられるが, 日本の大学図書館において「場所としての図書館」の利用実態はどんなものか, という点に焦点を当てた研究は乏しい。本稿ではこの点について調査した。【方法・結果】日本の大学図書館における「場所としての図書館」の利用実態を把握するため, 2009年6月23日から25日の3日間, 横浜国立大学中央図書館において, 観察調査を実施した。調査対象館を場所と目的によって30のエリアに分割し, 利用者の①滞在場所, ②利用物品, ③利用行動, を調査した。3日間で延べ9,610人の行動を記録し, その結果, ①「学習の場所」としての役割, ② PC利用者の存在, ③多様な利用実態, といった「場所としての図書館」の利用実態が明らかになった。また本稿では, 観察調査という手法によって, 質問紙調査では得られない実証的データに基づいて利用実態を明らかにすることで, 大学図書館の利用者調査の新たな手法の可能性を示した。一方で観察調査では, 利用者の主観的な判断や意識を計ることはできない点が課題となった。
著者
吉田 昭子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.135-175, 2010

原著論文【目的】東京市立日比谷図書館は1908年11月に設立された。本研究では, 東京市立日比谷図書館が果たしてどのような考えを持って設立された図書館なのか, 設立以前の構想と設立経緯を, 経費, コレクション, 設計等から具体的に明らかにすることを目的とする。【方法】当時の雑誌, 新聞, 公文書類等の一次資料や図書館報などによる文献調査を行った。さらに, 今回新たに判明した日比谷図書館建築仕様書を加え, 設立構想の推移を調査した。研究対象期間は1900年から1908年までである。【結果】東京市立日比谷図書館の主な設立構想としては, 伊東平蔵等の小規模図書館構想, 坪谷善四郎の大規模図書館構想, 寺田勇吉の中規模図書館構想の3つがみられる。1906年7月に, 東京市会で通俗図書館建設のための予算が決議された。しかし, 開館時の蔵書総数は12万冊, うち10万冊は日英文庫が占め, 利用可能な図書の6割は洋書であった。図書館を建築したのは三橋四郎であった。東京市立日比谷図書館は収容人数400人, 煉瓦造の耐火構造書庫や児童閲覧室, 婦人閲覧室などを持つ図書館として開館した。今回の調査で, 開館前に雑誌『建築世界』に建築仕様書が連載されていたことがわかった。日比谷図書館は当初の小規模図書館構想より, はるかに大きな規模の図書館として開館した。しかし, そこには市民のための通俗図書館を目指す理念が存在していた。
著者
種市 淳子 Taneichi Junko 逸村 裕 Itsumura Hiroshi
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and Information Science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-23, 2006 (Released:2005-09-28)

The World Wide Web (WWW) has had an unprecedented impact on the creation and utilization of information. As the amount of information continues to increase, it has become more difficult to select trustworthy information on the Web. This paper aims to analyze information seeking behaviors on the Web and examines the information evaluation process based on experimental research on two-year college students. The study also aims to make use of its results to enhance information users’ education in libraries in the future. First, the paper reviews previous related studies, examining studies on Web searching tendencies and those on the evaluation of Web resources in accordance with their methodologies, and pointing out the simplicity of Web searching patterns and factors that influence information evaluation. Then, in order to validate these previous studies, we examine two-year college students’ searching processes using search engines and the OPAC (Online Public Access Catalogue) by implementing the observational method and protocol analysis. In our examination, we divide the students into two groups, one that has been using the Internet for over five years and the other for under two years, and we analyze their searching behaviors. Moreover, in order to make a comparison, we also use the result of the same research on university students. We find that, 1) Web searching is a repeated behavior, repeating a simple pattern regularly. In evaluating search results, the students quickly filter out unnecessary information. 2) Experience of using search engines affects information seeking and its evaluation behaviors, which is more distinctive in students with long experience of the Internet. 3) Students have a tendency to evaluate Web resources based on visual and experimental factors, but lack skills in evaluating contents quality. 4) We find the same tendencies in university students. In conclusion, integrating all these findings, we construct a process model of information evaluation in Web searching.
著者
山下 樹子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.61-80, 2011

原著論文【目的】本論文の目的は, 「教育・研究支援」という短期大学図書館の機能に対する, 図書館員と学長, 事務部長の認識を明らかにすることである。【方法】2008年6月から9月にかけて, 大学との共用ではない短期大学図書館を持つ, 日本国内全ての218短期大学の図書館員と学長, 事務部長を対象に質問紙調査を実施した。調査では1)資料保存・管理, 2)相互利用, 3)利用拡大, 4)オンラインサービスの導入, 5)図書館員による教育活動, 6)図書館員の学習・研究支援, 7)図書館スペースという7 分野につき, 14の質問に回答してもらった。有効回答数は図書館員146, 学長110, 事務部長124であった。【結果】図書館員が学長および事務部長よりも重要視した項目は「図書館員の学習・研究支援」の中のレファレンスサービス業務であった。図書館員が事務部長よりも重要視したものは6項目で, 「資料保存・管理」の中の社会的資料センターとしての役割, 「相互利用」の中の学外資料の利用, 「オンラインサービスの導入」の中のウェブ上でのOPAC公開と, 図書館ホームページの開設, 「図書館員による教育活動」の中の図書館利用指導, 「図書館員の学習・研究支援」の中の図書館員を中心とした蔵書構築であった。学長が図書館員よりも重要視したものは「資料保存・管理」の中の社会的資料センターとしての役割と, 「利用拡大」の中の図書館の学外への開放の2項目であった。