著者
渋川 瑠衣 松下 姫歌
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.171-183, 2010

近年, 大学生の自己のあり方に関して, 多様化・質的な変化を指摘する知見が多く見られるようになった。本稿では, 特に近年の学生相談の文脈で指摘されている「悩めない」大学生に注目し, その心理的特徴や自己にまつわる課題について整理した。その中で, 現代大学生の自己の特徴として, 状況依存的で, 相手に合わせて意識的・無意識的に変化するあり方があることが示された。また, 従来の一貫性の保たれた自己としてのあり方ではなく, それぞれの自己側面の繋がりが失われ解離・断片化していく新たな自己のあり方が一般化している傾向があることが推測された。本研究では更に, 自己の変動性・多面性研究に関する実証的研究を整理し, その問題点と課題を指摘した。その上で, 学生相談などの臨床場面における大学生の自己に関する理解をすすめるためには, 意識されている側面と意識されない側面を含めた大学生の自己に関する主観的体験を重視する必要性があると考えられた。

言及状況

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大学の友人と精神科医の教授で、最近アスペルガー的な人が増えたという話をした。相談室の事例でも多いが、内的葛藤がなく、主体がなく、自己が断片化していて、身体化・行動化を主とした人格障害的になる。 大学生における自己の変動性・多面性の概念 http://t.co/jk9LqBHJ

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