- 著者
-
泉山 茂之
岸元 良輔
中下 留美子
鈴木 彌生子
後藤 光章
林 秀剛
- 出版者
- 信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
- 雑誌
- 信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
- 巻号頁・発行日
- no.10, pp.133-138, 2012-03
2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。