著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.1, pp.95-99, 2003-03 (Released:2011-03-05)

鹿追町のエゾシカ牧場の概要について記述した。主な点は、野生鹿のエゾシカを飼育繁殖し、全国の鹿牧場のモデルとなるシカの健康管理および血液検査など実地している。雄シカの幼角(鹿茸)を毎年採取して健康酒の原料提供を行っている。また、鹿肉処理場を設置し冬場の農作業の余剰労力を使って、有害駆除で捕獲されるエゾシカの肉を解体し、部位別の肉の処理ならびにソーセージなどの肉加工を行い、全国向けに販売を行っているなどであった。
著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.1, pp.95-99, 2003-03

鹿追町のエゾシカ牧場の概要について記述した。主な点は,野生鹿のエゾシカを飼育繁殖し,全国の鹿牧場のモデルとなるシカの健康管理および血液検査など実地している。雄シカの幼角(鹿茸)を毎年採取して健康酒の原料提供を行っている。また,鹿肉処理場を設置し冬場の農作業の余剰労力を使って,有害駆除で捕獲されるエゾシカの肉を解体し,部位別の肉の処理ならびにソーセージなどの肉加工を行い,全国向けに販売を行っているなどであった。
著者
山根 仁 金原 伸大 江田 慧子 中村 寛志
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.8, pp.29-39, 2010-03

本研究は長野県松本市にある上高地において,チョウ類群集の季節変動や種構成を明らかにするとともに,チョウ類群集を用いて環境評価を行った。調査は2009年5月26日,6月23日,7月24日,7月30日,8月20日,10月16日の計6回のチョウ類のトランセクト調査を行い,また2009年7月24日と7月30日には定点観測を実施した。その結果,トランセクト調査では7科41種554個体が,また,定点観測では6科24種152個体が確認された。上高地の種構成は高原性種の割合が53.7%で最も高く,またクモマツマキチョウ北アルプス・戸隠亜種Anthocharis cardamines isshikii,オオイチモンジLimenitis populi jezoensis,コヒオドシAglaisurticae esakii の3種の高山チョウが確認された。上位優占3種は,ヤマキマダラヒカゲNeope niphonicaniphonica,コムラサキApatura metis substituta,スジグロシロチョウPieris melete meleteであった。Simpson の多様度指数の値は,平均8.22で6月23日以外は安定した値を示した。EI 指数は100となり,「良好な林や草原」と判定され,環境階級存在比(ER)による環境評価では,天然更新林といった環境の1次段階と判定された。また,過去の上高地や近隣の島々谷のチョウ類群集との比較から,現在の上高地のチョウ類群集はタテハチョウ科や高原性種が増加傾向にあり,それらの種の生息に特に適した環境になりつつあることが示唆された。
著者
若林 隆三 伊東 義景 原田 裕介 北村 淳 杉山 元康 明石 浩司 前田 徹 戸田 直人 土屋 勇満 加藤 久智 池田 慎二 D Mark RYAN
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.5, pp.107-131, 2007-03

1995年~2004年の10シーズンにわたり,信州大学演習林研究室(現AFC 研究室)では中央アルプスの山岳林標高1300~2700mの比高100m毎の15定点において,毎月積雪全層の断面観測を行った。総数500ピット(深さ平均112㎝,累計558m)のうち,密度を測った雪層数は2610層(平均厚さ15.6㎝)である。観測結果と考察の大要は以下の通りである。1.中央アルプスは厳冬期には麓から気温が低いため,標高にともなう雪質の変化が少なく,造晶系(こしもざらめ,しもざらめ)の雪が多い。多雪年には焼結系(こしまり,しまり)が増加し,寡雪年には造晶系の雪が増加する。2.標高と雪層密度の正相関は液相系のない1月2月の厳寒期に高い。3.積雪が多い厳冬期には,新雪が供給される上層と,長期間の変態を経た下層では,雪質と密度が大きく異なる。下層は圧密により密度が増大し,上層は風成雪により密度が増大する。4.上載積雪荷重と層密度との相関は,焼結系で高く圧密が顕著で,造晶系,液相介在系(氷板,ざらめ)の順に相関が低くなる。5.標高が高いほど,細粒のこしまり雪が出現する。高所では低気温と強風により吹雪で雪粒が粉砕される機会が多いことを,粒度が示している。12~2月の粒度が細かいこしまり雪では,粗いものよりも密度が高い。上載積雪荷重が小さい雪面付近でこの傾向が顕著である。したがって標高が高いほど吹雪頻度が高く,微少な結晶破片の堆積した雪面の隙間に氷の粉塵が充?され,焼結の進行によって高密度の風成雪が生まれると推定される。6.12~6月の月積雪深は標高と1次の正相関を示す(相関係数0.91以上)。一方,積雪の全層密度と標高とは中程度の1次の正相関を示す。これらの結果,毎月の積雪水量は標高との2次曲線関係で増加する。7.積雪深が50㎝をこえると,地面と接する積雪下層の平均温度は0℃に近い。
著者
松井 寛二 森岡 弥生 竹田 謙一
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.11-16, 2005 (Released:2011-03-05)

4頭の木曽馬の馬房内の夜間の姿勢と体温変化の特徴を明らかにし、姿勢および体温変化と睡眠の関連を考察した。姿勢と行動はビデオカメラを用いて、体温(膣温)はデータロガを用いて記録した。姿勢は、1)立位(歩行・摂食)、2)立位(休息)、3)伏臥および4)横臥の4型に区分して記録した。伏臥および横臥の出現パターンには個体差が認められた。4頭平均の伏臥持続時間は16.4分、横臥持続時間は4.2分、夜間11.5時間の横臥回数は6.1回であった。体温は17時の38.1-38.6℃から早朝の37.6℃前後まで漸減した。伏臥から横臥の姿勢変化時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行し、横臥時にレム睡眠であることが推察された。
著者
竹田 謙一 神山 洋 松井 寛二
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.5, pp.55-63, 2007-03

家畜福祉に対する関心が世界的に広まりつつあり、2004年に開催されたOIEの第72回年次総会で家畜福祉に関する基本原則が採択された。特に断尾などの肉体の切断は、家畜福祉の視点から問題視されている。本研究では、断尾農家、非断尾農家各19戸に断尾に関する聞き取り調査を直接面接法で行った。調査内容は1)飼育方法、2)断尾の利点と欠点、3)断尾をしない理由、4)家畜福祉に関する設問とした。各質問項目の結果は以下のとおりであった。1)経営規模、飼育方法、1人あたりの搾乳頭数ではなく、ミルキングパーラーの形態が断尾の実施と関係していた。2)断尾の実施はゴムリング(84%)を用いて、夏を除く全ての季節に行われてた。断尾の利点として、「汚い尾で叩かれない」と回答した断尾農家数は非断尾農家数の2.6倍にもなり、また、「糞尿を撒き散らさない」は断尾農家からしか得られず、糞尿による汚染に起因しているこれら2つの項目で顕著な差が認められた。断尾の欠点として、非断尾農家の多くは、ハエが追い払えないことを挙げた。断尾農家は断尾部位の菌による感染、ハエや埃を払えないという衛生面を挙げた。3)非断尾農家の半数以上は「断尾の必要性を感じていないから」と答えた。また、「ウジを尊重したいから」、「ウシがかわいそうだから」というようなウシに対する倫理的配慮を求めた回答も多かった。4)38戸のうち23戸(60.5%)が家畜福祉の言葉を聞いたことがなく、家畜福祉に対する酪農家の関心の低さが伺えた。酪農家の関心が高かった搾乳牛のストレス項目は、断尾農家、非断尾農家にかかわらず、「行動抑制」76.3%、「飼育環境」63.2%、「繁殖方法」31.6%であった。
著者
竹田 謙一 神山 洋 松井 寛二
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.5, pp.55-63, 2007 (Released:2010-04-05)

家畜福祉に対する関心が世界的に広まりつつあり、2004年に開催されたOIEの第72回年次総会で家畜福祉に関する基本原則が採択された。特に断尾などの肉体の切断は、家畜福祉の視点から問題視されている。本研究では、断尾農家、非断尾農家各19戸に断尾に関する聞き取り調査を直接面接法で行った。調査内容は1)飼育方法、2)断尾の利点と欠点、3)断尾をしない理由、4)家畜福祉に関する設問とした。各質問項目の結果は以下のとおりであった。1)経営規模、飼育方法、1人あたりの搾乳頭数ではなく、ミルキングパーラーの形態が断尾の実施と関係していた。2)断尾の実施はゴムリング(84%)を用いて、夏を除く全ての季節に行われてた。断尾の利点として、「汚い尾で叩かれない」と回答した断尾農家数は非断尾農家数の2.6倍にもなり、また、「糞尿を撒き散らさない」は断尾農家からしか得られず、糞尿による汚染に起因しているこれら2つの項目で顕著な差が認められた。断尾の欠点として、非断尾農家の多くは、ハエが追い払えないことを挙げた。断尾農家は断尾部位の菌による感染、ハエや埃を払えないという衛生面を挙げた。3)非断尾農家の半数以上は「断尾の必要性を感じていないから」と答えた。また、「ウジを尊重したいから」、「ウシがかわいそうだから」というようなウシに対する倫理的配慮を求めた回答も多かった。4)38戸のうち23戸(60.5%)が家畜福祉の言葉を聞いたことがなく、家畜福祉に対する酪農家の関心の低さが伺えた。酪農家の関心が高かった搾乳牛のストレス項目は、断尾農家、非断尾農家にかかわらず、「行動抑制」76.3%、「飼育環境」63.2%、「繁殖方法」31.6%であった。
著者
竹田 謙一 神山 洋 松井 寛二
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-63, 2007-03-30

家畜福祉に対する関心が世界的に広まりつつあり,2004年に開催されたOIE の第72回年次総会で家畜福祉に関する基本原則が採択された。特に断尾などの肉体の切断は,家畜福祉の視点から問題視されている。本研究では,断尾農家,非断尾農家各19戸に断尾に関する聞き取り調査を直接面接法で行った。調査内容は1)飼育方法,2)断尾の利点と欠点,3)断尾をしない理由,4)家畜福祉に関する設問とした。各質問項目の結果は以下のとおりであった。1)経営規模,飼育方法,1人あたりの搾乳頭数ではなく,ミルキングパーラーの形態が断尾の実施と関係していた。2)断尾の実施はゴムリング(84%)を用いて,夏を除く全ての季節に行われてた。断尾の利点として,「汚い尾で叩かれない」と回答した断尾農家数は非断尾農家数の2.6倍にもなり,また,「糞尿を撒き散らさない」は断尾農家からしか得られず,糞尿による汚染に起因しているこれら2つの項目で顕著な差が認められた。断尾の欠点として,非断尾農家の多くは,ハエが追い払えないことを挙げた。断尾農家は断尾部位の菌による感染,ハエや埃を払えないという衛生面を挙げた。3)非断尾農家の半数以上は「断尾の必要性を感じていないから」と答えた。また,「ウシを尊重したいから」,「ウシがかわいそうだから」というようなウシに対する倫理的配慮を求めた回答も多かった。4)38戸のうち23戸(60.5%)が家畜福祉の言葉を聞いたことがなく,家畜福祉に対する酪農家の関心の低さが伺えた。酪農家の関心が高かった搾乳牛のストレス項目は,断尾農家,非断尾農家にかかわらず,「行動抑制」76.3%,「飼育環境」63.2%,「繁殖方法」31.6%であった。
著者
荒瀬 輝夫 内田 泰三
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-19, 2009-03

サルナシ(Actinidia arguta(Sieb. et Zucc.) Planch. ex Miq.)の地域産物化をはかるため、長野県中南部において系統収集を試みた。自生地の環境を把握するとともに、果実の形態および収量の系統間変異を分析した。得られた系統数は20、自生地の標高は770?1400m、地形は沢筋から尾根上まで様々で、落葉樹林が多かった。平均果実重は系統平均4.47±1.47g(1.87?6.89g)で、2山ないし3山の頻度分布を示した。果形にはAP型とCU型、着果型には鈴成り型と普通型という顕著な変異が認められた。果実における相対生長関係から、果実重と果実径との間に強い相関が認められたが、果実長との関係は不明瞭であった。採集効率(1時間あたり採集可能数の対数階級値)を用いて収量を求めたところ、1.4?2.8(25?630g/hr)であった。自生地の標高と比較すると、平均果実重および収量は、いずれも標高1100m付近を最大値とする曲線関係を示した。
著者
荒瀬 輝夫 内田 泰三
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-19, 2009 (Released:2011-03-05)

サルナシ(Actinidia arguta(Sieb. et Zucc.) Planch. ex Miq.)の地域産物化をはかるため、長野県中南部において系統収集を試みた。自生地の環境を把握するとともに、果実の形態および収量の系統間変異を分析した。得られた系統数は20、自生地の標高は770?1400m、地形は沢筋から尾根上まで様々で、落葉樹林が多かった。平均果実重は系統平均4.47±1.47g(1.87?6.89g)で、2山ないし3山の頻度分布を示した。果形にはAP型とCU型、着果型には鈴成り型と普通型という顕著な変異が認められた。果実における相対生長関係から、果実重と果実径との間に強い相関が認められたが、果実長との関係は不明瞭であった。採集効率(1時間あたり採集可能数の対数階級値)を用いて収量を求めたところ、1.4?2.8(25?630g/hr)であった。自生地の標高と比較すると、平均果実重および収量は、いずれも標高1100m付近を最大値とする曲線関係を示した。
著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.5, pp.71-76, 2007-03

木曽馬は、昭和10年以降、在来種系の小格な種牡馬は全て去勢され、アングロアラブ系の中間種の種付が強行された。昭和20年以降、去勢されなかった神明号を種牡馬として本来の木曽馬に戻す努力がなされてきた。本研究は、木曽馬が古来の馬に戻りつつあるのかを骨の大きさから判断することを目的に行った。昭和30年ごろに埋葬された木曽馬の骨を開田村西野の馬の共同墓地跡から回収し各骨の大きさについて調べた。各部位の骨の大きさをノギスで測定し、平均値を求めた。また岡部らが報告している昭和15年頃の木曽馬の骨の大きさと比較検討を行った。その結果、各部位の骨の大きさは全て小さくなっていることを確認した。この結果は、著者らが昭和59年に実施した木曽馬の体格調査の結果において得られた木曽馬の大きさが小さくなりつつあるという結果と一致した。
著者
関沼 幹夫 春日 重光 岡部 繭子 畠中 洸 濱野 光市
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.14, pp.89-91, 2016-03

野辺山ステーションは,ソバを対象とした研究やそば打ち実習などの教育を行ってきた。また,2014年度に食堂・厨房設備の改修工事を終えてキッチンスタジオのような設備となった。その設備を活用したそば打ち集団向けの教育プログラムを行った。野辺山ステーションは,これまで以上に栽培から食品加工までを一貫して学べる場として,そばの文化・食品において重要な「そば打ち」を取り入れたプログラムが可能となり,今後の活用が期待される。
著者
関沼 幹夫 春日 重光 岡部 繭子 畠中 洸 濱野 光市
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.14, pp.89-91, 2016-03

野辺山ステーションは,ソバを対象とした研究やそば打ち実習などの教育を行ってきた。また,2014年度に食堂・厨房設備の改修工事を終えてキッチンスタジオのような設備となった。その設備を活用したそば打ち集団向けの教育プログラムを行った。野辺山ステーションは,これまで以上に栽培から食品加工までを一貫して学べる場として,そばの文化・食品において重要な「そば打ち」を取り入れたプログラムが可能となり,今後の活用が期待される。
著者
Ryan D.M.
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-65, 2004-03

本研究は、長野県安曇村の上高地乗鞍スーパー林道の冬季の雪崩に対する安全性について検討したものである。この林道は同村白骨温泉の唯一の冬季アクセス道であり、多額の雪崩対策が実施されてきたにもかかわらず、必ずしも危険の低減に成功していないことが、2003年1月に22台の車両と乗客を巻き込んだ雪崩事故として露呈した。米国ワシントン州やアラスカ州での雪崩管理システムと対比すると、日本では恒久的な土木施設による対策に重点をおく一方、雪崩の予報予知といったソフト対策に乏しい。例えば、この林道では2003年3月までの過去23年間において雪崩防止棚88基に約15億円をかけたにもかかわらず、積雪雪崩観測装置・雪崩予知システムの構築には投資をせず、スーパー林道の開閉も近年、降雪量のみを考慮して実施してきた。ここで、欧米で一般的な積極的道路管理、すなわち大雪の予報、道路閉鎖、人工雪崩、道路除雪、道路閉鎖解除、といった一連のシステムのうち、人工雪崩のスーパー林道への適用可能性、安全性、合法性などについて検討してみた。まず、米国の道路管理局とスキー場で用いられている人工雪崩専用の簡易索道について、資料を収集するとともに現地調査を行った。さらに、日本で最近合法的な手投げ式雪崩火薬弾として開発されたACEという花火玉について、雪崩を効果的に起こし得るか否かを安曇村でテストした。この他、県や村の雪崩対策関係者と接触し、積極的道路管理への行政的対応について何が問題点であるかを探った。これらから、人工雪崩用索道とACEとは安曇村で効果的に使用できる可能性はあるものの、索道火薬種類の変更やACE爆発力の増加など更なる技術的改良と同時に、こういった新しい防災システムを導入できる行政的環境の創出が不可欠であることが判明した。
著者
中村 寛志 Chavez F.G.
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.5, pp.77-82, 2007 (Released:2010-04-05)

本調査は、インゲンテントウの原産地とされるグアテマラ高地のチマルテナンゴにおいて、インゲン類の被害実体の明らかにするために、2004年9月に行ったものである。農業研究所ICTAの圃場では、インゲンのGreen bean系統では1200株中、食害痕は11株、Black bean系統では食害痕はみられなかった。栽培農家のインゲンとベニバナインゲンの圃場では、食害痕のあった株の割合は3~18.9%で、幼虫への寄生率が46.7%もある圃場もみられた。採集したマミーから寄生バエの蛹が出てきたが種名は不明であった。卵塊卵粒数は最小27卵、最大50卵で、平均卵粒数は40.3(サンプル数13卵塊)であった。採集した成虫の中に僅かの割合ではあるが、鞘翅斑紋に変異のある個体がみられた。また斑紋の変異個体と正常な斑紋の個体との交尾が観察された。
著者
江田 慧子 田中 健太 平尾 章 中村 寛志
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.12, pp.47-54, 2014-03

絶滅危惧種であるクモマツマキチョウを保全し絶滅から守るためには,定量的で効率的な飼育体系を確立する必要がある。本報告は2012年に著者らが行った本種の飼育方法と得られた飼育に関する定量的データを記載したものである。卵の採卵にはメス成虫3個体から81卵を採卵することができた。卵は75.9%が孵化した。幼虫の飼育は直方体プラスチックシャーレで行った。餌としてミヤマハタザオを与えて,個別飼育を行った。温度は20℃,日長は12L:12Dと一定にした。幼虫期の生存率は68.2%であった。1~2齢幼虫では死亡する個体が見られたが,3齢幼虫以降は1個体も死亡しなかった。幼虫期の平均日数は18.20日であった。幼虫の体長の平均は緩やかに増加し,5齢幼虫期の25.8㎜が最大であった。蛹体重は蛹化7日目で125.7㎎で時間がたつにつれて軽くなった。蛹化28日後から3つの処理期間(75日,105日,135日)で低温処理(4℃)を行った。その結果,処理期間が短いほど,処理後から羽化までの日数が長くなった。また135日の低温処理では,すべての羽化成虫が口吻が融合していない奇形だった。成虫は最長で47日間生存した。
著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-5, 2005-03
被引用文献数
1

近年,放牧を見直そうとする背景がある。そこには,乳用牛および肉用牛の飼養戸数の大幅な減少に対して飼養頭数は大幅な増加傾向にある。つまり,多頭飼育傾向が見られ,放牧場の存在は各農家の省力化のだめに必要かつ重要である。本論文は全国の放牧場について,地域別に見た放牧場数,放牧頭数,放牧面積,放牧場の立地条件,放牧場の草種,放牧期間ならびに放牧の持つ多角的価値などについて解析を試みてみた。その結果,各地域の放牧場は飼育している牛の種類の違いと地域の地理的または自然的な条件による違いが見られた。
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-138, 2012-03

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-138, 2012-03

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
荒瀬 輝夫 内田 泰三
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.7, pp.11-19, 2009-03

サルナシ(Actinidia arguta(Sieb.et Zucc.)Planch. ex Miq.)の地域産物化をはかるため,長野県中南部において系統収集を試みた。自生地の環境を把握するとともに,果実の形態および収量の系統間変異を分析した。得られた系統数は20,自生地の標高は770~1400m,地形は沢筋から尾根上まで様々で,落葉樹林が多かった。平均果実重は系統平均4.47±1.47g(1.87~6.89g)で,2山ないし3山の頻度分布を示した。果形にはAP型とCU型,着果型には鈴成り型と普通型という顕著な変異が認められた。果実における相対生長関係から,果実重と果実径との間に強い相関が認められたが,果実長との関係は不明瞭であった。採集効率(1時間あたり採集可能数の対数階級値)を用いて収量を求めたところ,1.4~2.8(25~630g・hr⁻¹)であった。自生地の標高と比較すると,平均果実重および収量は,いずれも標高1100m付近を最大値とする曲線関係を示した。