著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 林 秀剛 泉山 茂之 中川 恒祐 八代田 千鶴 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-48, 2010-06-30
参考文献数
20

2009年9月19日,乗鞍岳の畳平(岐阜県高山市)で発生したツキノワグマ(<i>Ursus thibetanus</i>)による人身事故について,加害個体の炭素および窒素安定同位体比による食性解析を行った.体毛の炭素・窒素安定同位体比は,他の北アルプスの自然個体と同様の値を示した.さらに,体毛の成長過程に沿って切り分けて分析を行った結果についても,過去2年間の食性履歴において残飯に依存した形跡は見られなかった.当該個体は,観光客や食堂から出る残飯等に餌付いた可能性が疑われていたが,そのような経歴の無い,高山帯を生息圏の一部として利用する個体である可能性が高いことが明らかとなった.<br>
著者
中下 留美子 後藤 光章 泉山 茂之 林 秀剛 楊 宗興
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.19-23, 2007-06-30
被引用文献数
2

An adult male Asiatic black bear (<i>Ursus thibetanus</i>), 105 kg in body weight and 130 cm in total length, was captured at a fish farm in Miyadamura village, Nagano Prefecture, Japan in June 2005, due to its nuisance activity. We analyzed δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N in the hairs and plasma of the bear and in the muscles of rainbow trouts (<i>Oncorhynchus mykiss</i>) at the farm to discern whether the bear was actually involved in the farm damages. Both δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N values in the hairs and plasma were similar to those in rainbow trout muscles, confirming that the bear indeed ate a considerable number of the farm's rainbow trouts. The δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N values of serum were closer to those of the trout muscles than those of the hairs, indicating that the bear depended heavily on trouts in the spring of 2005 in comparison with the previous year. Moreover, stable isotope levels in the tips of the hairs were closer to those of trout muscles than those at the bases of the hairs. This suggests that the bear depended much more heavily on trouts in the previous spring than in the previous fall.<br>
著者
平林 公男 林 秀剛
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.p105-114, 1994-04
被引用文献数
5
著者
公文 富士夫 金丸 絹代 田原 敬治 角田 尚子 山本 雅道 林 秀剛
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.10, pp.599-609, 2005-10-15
被引用文献数
3 12

木崎湖において2003年12月に採取した35cm長の柱状堆積物について検討し, 1969年以降の3回の大洪水の層準を認定した.その年代をもとにして平均堆積速度を求め, 有機炭素含有率の経年的な変化を求めた.一方, 1981年以降に木崎湖で行われてきた毎月の湖沼観測記録をまとめ, 21年間のクロロフィルα量の経年的な変化を明らかにして, 湖水中の生物生産量の指標とした.また, アメダス気象観測資料を用いて, 気温や降水量などの気象要素の資料を得た.これら3者間の相関を検討して, 有機炭素含有率は, 年間クロロフィルα量および冬の平均気温と有意な相関をもつことを見出した.冬の暖かさ(厳しい冬の短さ)が冬季の生物生産性を高め, それが年間の生物生産量に影響を与えて, 堆積物として沈積する有機物量を増加させたと考えられる.湖沼堆積物中の有機炭素含有率は, 過去の気温(冬の平均気温)の指標として有効である.
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-138, 2012-03-28

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
中下 留美子 林 秀剛 岸元 良輔 鈴木 彌生子 瀧井 暁子 泉山 茂之
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-90, 2014-03-26

2010年のツキノワグマ(Usrus thibetanus)大量出没時の現場検証で,複数のクマ出没が判明した長野県塩尻市の牛舎では,それ以降も出没が頻発していた。2013年6月,問題の牛舎は廃業したものの,牛舎周辺ではクマ出没が続いている。そこで,閉鎖後の牛舎敷地内で捕獲された2頭のツキノワグマについて,牛舎での餌付けの実態を調べるために,炭素・窒素安定同位体比解析による食性履歴の推定と胃内容物分析を行い,家畜飼料への依存度を推定した。その結果,2個体共に捕獲前年の夏以降,牛舎の家畜飼料に重度に依存しており,翌年の牛舎閉鎖後も執拗に家畜飼料に執着している実態が明らかとなった。
著者
早川 美波 林 秀剛 岸元 良輔 伊藤 建夫 東城 幸治
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.245, 2013 (Released:2014-02-14)

ツキノワグマ Ursus thibetanusは,アジア広域に生息する中型のクマで,日本には,固有亜種,ニホンツキノワグマ Ursus thibetanus japonicusが,本州と四国に生息している.中でも,本研究の対象地域である長野県は,日本アルプスを含む中部山岳域に囲まれていること,長野県におけるツキノワグマの推定生息数が約 3600頭 (長野県 2011年) であることからも重要な生息地の 1つであると考えられる.一方,長野県には独立した山塊がいくつかあり,盆地には都市が広がっているため,ツキノワグマの生息地が必ずしも連続しているとは言えず,また,山塊間の移動の程度や遺伝的多様性の評価などの研究が十分行われていないことから,一概にも安定した個体群が維持されているとは言えない.本研究では,2006年から 2012年に捕獲されたツキノワグマ約 200個体を用いて,mtDNA制御領域 626-bp及び,核 DNA MHC クラスター Ⅱベータ遺伝子 2領域 270-bpを解析し,長野県ツキノワグマ個体群における遺伝的構造の究明を行った.  mtDNA制御領域の解析では,12のハプロタイプを検出した.ハプロタイプの地理的分布から,長野県の北部と南部では解析した個体から検出されるハプロタイプが異なったため,長野県の北部と中南部間での遺伝子流動,すなわちツキノワグマの移動分散が起きていない,あるいは非常にまれであることが示唆された.
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-138, 2012-03

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-138, 2012-03

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。