- 著者
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木下 光生
- 出版者
- 奈良大学史学会
- 雑誌
- 奈良史学 (ISSN:02894874)
- 巻号頁・発行日
- no.29, pp.95-123, 2011
近世日本の村社会における「貧困」や「貧農」の「実在」は、今なお、教科書でも一般向けの歴史書でも、「当たり前」のように説き続けられている。だが、ここで言う村や村人の「貧しさ」とは、いったい何を基準とした「貧しさ」なのであろうか。麻や木綿の服を着たり、雑穀を主食としたり、萱葺きの「粗末」な家に住むことが、なにゆえ「貧しい」ことなのか。「自給自足」の生活が、なぜ「貧しい暮らし」といえるのか。「富の偏在」がもたらした「極度の貧窮」とは、どのような生活実態を意味しているのか。本稿は、教科書におけるこの一見もっともらしい「村の貧しさ」の説明の仕方や、一般所で「所与の前提」とされる「貧農」の規程方法について、あらためて日本近世史研究(以下、近世史研究とする)におけるその研究史的経緯を整理し、村の「貧困」と「貧農」をめぐる研究現状と、今後の課題を検討するものである。