- 著者
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桑田 知宣
劉 雁輝
古屋 康則
- 出版者
- 岐阜県河川環境研究所
- 雑誌
- 岐阜県河川環境研究所研究報告 (ISSN:18807437)
- 巻号頁・発行日
- no.55, pp.39-44, 2010-03
メダカOryzias latipesで性ホルモン処理により人為的性転換の誘導が起きることが証明されて以来、性の統御により商業的付加価値が付くような多くの魚種において、機能的な人為性転換が試みられてきた。アユPlecoglossus altivelis altivelisでは卵巣が発達した雌、いわゆる「子持ちアユ」が、通常のものに比べて商品価値が高く、高値で取引されるため、養殖の現場においては、雌のみの生産が望まれている。このため、養殖アユの全雌化に関する研究は二十年以上前から行われてきた。近年、性ホルモンを利用したアユの性転換雄の作出について多数の報告がなされ、性転換雄の精子(全てがX精子となる)を利用することにより全雌を作出できることが報告されている。しかし、性転換雄の作出率は、最も高い場合でも3割程度にとどまり、未だに遺伝的雌から機能的雄への効率的な性転換手法は確立されていない。性転換雄の作出条件について検討したこれらの報告では、アユの組織学的な性分化期を含むように、様々な濃度の17α-メチルテストステロン(以下MT)処理が行なわれている。それにも関わらず、雄への高率的な性転換条件が見出されない上に、いずれの処理条件においても、雄以外に雌や不稔魚が高率で出現する。効率的に性転換雄を作出するためには、このような性転換状況の個体差を抑制し一様に雄への性転換が誘導されるような方法を開発する必要がある。しかし、このような個体差がMT処理過程のいつから生じるのか、また、処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との間にはどのような関連があるのかについては明らかにされていない。そこで本研究では、全雌個体群を用いてMT処理を行ない、MT処理を段階的に終了して各処理群の性転換について調査するとともに、各処理群のMT処理終了時の生殖腺を組織学的に観察することにより、MT処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との関連を調べた。