著者
伊藤 玄 北村 淳一 野口 亮太 長太 伸章 古屋 康則
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.20-034, (Released:2021-01-17)
参考文献数
25

Exotic populations of Acheilognatus tabira found in northern Mie Prefecture, and subjected to nucleotide sequencing of the mitochondrial DNA cytochrome b region, were determined to represent the Hokuriku (A. t. jordani) and Kinki-Sanyo (A. t. tabira) lineages. The first record of A. t. jordani from outside its native distribution area (Japan Sea side of western Honshu), it is likely to be a viable population due to the presence at the sampling site of the freshwater mussel Beringiana fukuharai (Unionidae, Cristariini), with which the former likely has a spawning relationship.
著者
伊藤 玄 旗 薫 北村 淳一 古屋 康則
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.20-24, (Released:2021-10-05)
参考文献数
27

Non-native populations of Tanakia lanceolata were found in the Naruse River system, Miyagi Prefecture (Northern Honshu), Japan. Examination of nucleotide sequences of the mitochondrial DNA cytochrome b region indicated that the population was a genetic lineage of those naturally distributed in Western Honshu, Japan. In particular, a haplotype present in the Naruse River populations was consistent with one identified in populations in the Asahi and Kurashiki River systems, Okayama Prefecture.
著者
山野井 貴浩 佐藤 綾 古屋 康則
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.285-291, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
22

「種族維持」とは生物は種を維持する, あるいは仲間を増やすために繁殖するという概念であるが, 現代の進化生物学では否定されている概念である。しかしながら, 小中高の理科学習を終えた大学生であっても「種族維持」の認識を有している可能性がある。そこで本研究は, 種族維持の認識を問う質問紙を作成し, 5つの大学に通う大学生629名を対象に質問紙調査を行った。その結果, 半数以上の学生が種族維持の認識を有していること, 高等学校生物の履修や大学における進化の講義はその認識に影響していないことが示唆された。また, 高等学校生物や大学における進化の講義を履修した学生の方が, 血縁選択説や利他行動について知っていると回答した割合は高いという結果が得られた。誤概念を変容させるために, これらの用語を扱う高等学校生物や大学の進化の講義の授業方法を改善していく必要がある。
著者
山野井 貴浩 佐藤 千晴 古屋 康則 大槻 朝
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_75-85, 2015 (Released:2017-10-18)
参考文献数
22

Current science textbooks used in Japanese junior high schools deal with contents about invasive species from foreign countries; however, contents about domestic invasive species are lacking. So, there are few chances for students to understand problems related to domestic invasive species. In this study, we developed a class activity where junior high school students think about biodiversity conservation focusing on the case of the Genji firefly (Luciola cruciata), which is one of the most serious problems among domestic invasion. Results of questionnaires before and after the class suggest two findings. First, the students understood that releasing the Genji firefly without consideration of its genotype led to degeneration of the native population, and that maintenance of the habitats appropriate for the growth phase was effective for conservation. Second, the students realized what they can do to reform or defend their local natural environments.
著者
宗原 弘幸 高野 和則 古屋 康則
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.391-394, 1991-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
13

交尾型カジカ, イソバテングBlepsias cirrhosusの配偶子がいつ, どこで会合し受精開始するかを明らかにした.排卵した雌の卵巣腔から卵と卵巣腔液を取り出し, 一部の卵を海水または卵巣腔液に浸し, 24時間後にそれぞれの胚発生状態を観察した.その結果, 海水中の卵のほとんどは胚発生を開始していたが, 卵巣腔液中の卵は全く発生しなかった.しかし, これらの未変化の卵を海水に移すと, その多くが胚発生を開始した.また, 海水に浸す前の卵を光顕観察した結果, 多数の精子が卵門管内に侵入しているものの, 卵細胞質内への貫入は認められず.卵も第二減数分裂の中期にとどまっていることが確認された.以上の結果から, 本種では体内で両配偶子の会合は終えているが, 受精は産卵後海水中で開始することが明らかとなった.
著者
藤井 亮吏 古屋 康則 棗田 孝晴 田原 大輔
出版者
岐阜県水産研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

無秩序な移植・放流による遺伝的な撹乱の危険性を、イメージしやすく説明するため、カジカ大卵型を対象に、個体群ごとの産卵期の違いを明らかにすることを目的に、産卵実験および河川調査を行った。その結果、環境が異なる河川の個体群は、同じ水温であっても、それぞれ異なる時期に産卵を開始することが明らかとなった。また、産卵開始は最低水温や特定の水温に上昇した時などといった、水温変化の目立ったタイミングとは無関係であると考えられた。これより、カジカ大卵型の産卵開始は、その時の水温ではなく光周期などの他の要因によって、生息環境にあわせて繁殖に最適な時期になるよう決定づけられていると考えられた。
著者
伊藤 玄 古屋 康則 堀池 徳祐 向井 貴彦
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.41-50, 2020-04-25 (Released:2020-05-02)
参考文献数
39

An examination of the genetic population structure of Cobitis minamorii tokaiensis in central Honshu Japan, based on mitochondrial DNA nucleotide sequences in the cytochrome b region, revealed that the subspecies is subdivided into three regions (West-Shizuoka, Mie, and Aichi-Gifu) on the evidence of haplotype distribution and pairwise Φst among populations. However, the phylogenetic analyses indicated that the haplotypes in the three regions belong to the same haplotype group, suggesting that C. m. tokaiensis dispersed following the interconnection of paleo-river systems within relatively recent geological time, and subsequently differentiated in several areas. Because of its genetic characteristics, the three regions are important for conservation of the subspecies’ genetic diversity.
著者
福井 謙太郎 藤井 亮吏 田原 大輔 早川 洋一 古屋 康則
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.173-186, 2007-11-26 (Released:2011-12-02)
参考文献数
39
被引用文献数
1

Gonadal development and serum profiles of sex steroids in reproductive KAJIKA, Cottus sp.SE (small egg type), were monitored over a 12-month period. The female reproductive cycle was divided into the following 5 periods based on oocyte development: recovery period (May to August), cortical alveoli formation period (September), vitellogenic period (October to December), reproductive period (January and February) and spent period (March and April). Based on ovarian histological observations, females may spawn 2 or 3 times in one reproductive period. Serum levels of estradiol-17β increased during the vitellogenic period, indicating regulation of the vitellogenetic progress. Serum 17, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one in females exhibited high levels only during the reproductive period, suggesting a role in inducing final oocyte maturation. The male reproductive cycle was divided into the following 5 periods based on testicular histological observations: resting period (June to August), spermatogonial proliferation period (September), spermatogenic period (October and November), reproductive period (December to February) and spent period (March to May). Parasperm formation, which is known in some cottidae species, was noted, occurring in the sperm ducts during the spermatogenic period, but only in the main testicular lobes during the reproductive period. Serum 11-ketotestosterone levels in males increase of continually during the spermatogenic period, suggesting a role regulation of spermatogenesis in this species.
著者
古屋 康則 山家 秀信 松原 創
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

雄が繁殖期中に営巣するトゲウオ科、カジカ科、ハゼ科魚類では、雄の腎臓で粘性物質の合成が活発化し、膀胱に尿を蓄えるという共通した現象を見出した。トゲウオ科では雄の腎臓で巣材を接着する物質(スピギン)が合成されることが知られているが、カジカ科の雄の腎臓でもスピギンと相同の遺伝子が繁殖期中にのみ発現していることを見出した。また、トゲウオ科で雄の腎臓抽出物が成熟した雌を誘引する作用を持つことが示唆された。このことから、営巣繁殖するトゲウオ科、カジカ科、ハゼ科魚類の腎臓で合成される粘性物質の機能は、雌の巣への誘引であり、トゲウオ科では雌の誘引に加えて巣材の接着の機能が付加されたと考えられた。
著者
桑田 知宣 劉 雁輝 古屋 康則
出版者
岐阜県河川環境研究所
雑誌
岐阜県河川環境研究所研究報告 (ISSN:18807437)
巻号頁・発行日
no.55, pp.39-44, 2010-03

メダカOryzias latipesで性ホルモン処理により人為的性転換の誘導が起きることが証明されて以来、性の統御により商業的付加価値が付くような多くの魚種において、機能的な人為性転換が試みられてきた。アユPlecoglossus altivelis altivelisでは卵巣が発達した雌、いわゆる「子持ちアユ」が、通常のものに比べて商品価値が高く、高値で取引されるため、養殖の現場においては、雌のみの生産が望まれている。このため、養殖アユの全雌化に関する研究は二十年以上前から行われてきた。近年、性ホルモンを利用したアユの性転換雄の作出について多数の報告がなされ、性転換雄の精子(全てがX精子となる)を利用することにより全雌を作出できることが報告されている。しかし、性転換雄の作出率は、最も高い場合でも3割程度にとどまり、未だに遺伝的雌から機能的雄への効率的な性転換手法は確立されていない。性転換雄の作出条件について検討したこれらの報告では、アユの組織学的な性分化期を含むように、様々な濃度の17α-メチルテストステロン(以下MT)処理が行なわれている。それにも関わらず、雄への高率的な性転換条件が見出されない上に、いずれの処理条件においても、雄以外に雌や不稔魚が高率で出現する。効率的に性転換雄を作出するためには、このような性転換状況の個体差を抑制し一様に雄への性転換が誘導されるような方法を開発する必要がある。しかし、このような個体差がMT処理過程のいつから生じるのか、また、処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との間にはどのような関連があるのかについては明らかにされていない。そこで本研究では、全雌個体群を用いてMT処理を行ない、MT処理を段階的に終了して各処理群の性転換について調査するとともに、各処理群のMT処理終了時の生殖腺を組織学的に観察することにより、MT処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との関連を調べた。
著者
宗原 弘幸 古屋 康則 早川 洋一 後藤 晃 後藤 晃
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

交尾は、肺呼吸、四足歩行と並んで、ヒトを含む脊椎動物が陸圏に進出する際の前適応である。交尾の進化過程を再現するため、近縁種に交尾種と非交尾種を含んだカジカ上科魚類をモデルとして、雄間の競争、特に精子競争の影響に焦点を当てて、実験的に調査した。行動形質の評価指標として繁殖成功度に注目した。その結果、射出精子量、交尾の順番が、繁殖成功度に影響し、先にたくさんの精子を雌に渡すという行為が交尾の進化動因であることが示唆された