著者
森 美津雄 藤井 亮吏
出版者
岐阜県河川環境研究所
巻号頁・発行日
no.57, pp.11-14, 2012 (Released:2013-10-08)

カジカの種苗生産におけるふ化から約1ヶ月間にわたる海水飼育時の初期減耗率は、当研究所では30~100%とバラツキが大きく、計画生産を図る上で大きな障害となっている。初期飼育の減耗要因としては、卵質、飼餌料、水質等種々の要因が考えられる。カジカ仔魚期の給餌量に関する検討は不十分であり、給餌量の過不足による減耗の可能性も考えられる。カジカのふ化仔魚の初期餌料にはアルテミア幼生を用いているが、その給餌量は飼育用水中のアルテミア幼生密度等を目安に経験則的に加減しているのが現状である。そこで、カジカの初期飼育における適正給餌量の検討資料を得ることを目的に、ふ化後の飼育経過にともなう日間摂餌量の変化を明らかにするため、餌付け開始3日目、11日目及び22日目のカジカ仔魚の日間アルテミア幼生摂餌量について検討した。また、アルテミア幼生の1個体湿重量を測定し、カジカ仔魚期の日間摂餌率の算出を試みた。
著者
徳原 哲也 岸 大弼 熊崎 隆夫
出版者
岐阜県河川環境研究所
雑誌
岐阜県河川環境研究所研究報告 (ISSN:18807437)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-4, 2010-03
被引用文献数
1

岐阜県内の渓流漁場のある漁業協同組合では、放流時点で漁獲制限体長を上回るアマゴ(Oncorhynchus masou ishikawae)やヤマメ(O. m. masou)を放流し、ただちに遊漁者に釣らせる、いわゆる成魚放流が行われている。この放流形態は、稚魚放流による増殖効果のみでは増加する遊漁者を満足させることができないことから、1970年代の一時期に岐阜県を含めいくつかの県で研究が行われ、在来マスの養殖技術の確立とともに普及していった。岐阜県の漁業統計上は1981年(昭和56年)の記録がもっとも古いものであり、本県の成魚放流はこの年から始まったと見なされる。成魚放流は放流量の割に漁期が短いことや、放流場所付近に魚が留まらないという問題があることが、遊漁者・漁業協同組合双方の経験から指摘されてきた。過去に行われた研究においては主に放流魚の回収率に主眼がおかれ、釣獲特性や漁期、放流魚の移動といった、総合的な成魚放流の特性そのものに対しての研究は行われてこなかった。これは、成魚放流が稚魚放流による増殖効果を上回る分を補填する補助的役割であったことや、自然河川の生産力を利用しない釣り堀的手法であり増殖事業とは言い難く、研究対象になりにくかったことが関係しているのかもしれない。しかし、本放流法は他の増殖法では遊漁者の要望を満せない現状では必要なものであり、放流告知場所に集まる遊漁者の数を実際に目の当たりにすれば、本放流方法の需要が高いことがよくわかる。このような実情から当所は効率的な成魚放流について方法論についての研究を進め一通りの成果を得ることができた。本報では、それ以外当所で行った成魚放流調査であるヤマメの成魚放流調査について、放流日や系統差が釣獲率におよぼす影響や、他魚種(ニジマス;O. mykiss)との混合放流を行った釣獲特性の結果について報告する。
著者
桑田 知宣 劉 雁輝 古屋 康則
出版者
岐阜県河川環境研究所
雑誌
岐阜県河川環境研究所研究報告 (ISSN:18807437)
巻号頁・発行日
no.55, pp.39-44, 2010-03

メダカOryzias latipesで性ホルモン処理により人為的性転換の誘導が起きることが証明されて以来、性の統御により商業的付加価値が付くような多くの魚種において、機能的な人為性転換が試みられてきた。アユPlecoglossus altivelis altivelisでは卵巣が発達した雌、いわゆる「子持ちアユ」が、通常のものに比べて商品価値が高く、高値で取引されるため、養殖の現場においては、雌のみの生産が望まれている。このため、養殖アユの全雌化に関する研究は二十年以上前から行われてきた。近年、性ホルモンを利用したアユの性転換雄の作出について多数の報告がなされ、性転換雄の精子(全てがX精子となる)を利用することにより全雌を作出できることが報告されている。しかし、性転換雄の作出率は、最も高い場合でも3割程度にとどまり、未だに遺伝的雌から機能的雄への効率的な性転換手法は確立されていない。性転換雄の作出条件について検討したこれらの報告では、アユの組織学的な性分化期を含むように、様々な濃度の17α-メチルテストステロン(以下MT)処理が行なわれている。それにも関わらず、雄への高率的な性転換条件が見出されない上に、いずれの処理条件においても、雄以外に雌や不稔魚が高率で出現する。効率的に性転換雄を作出するためには、このような性転換状況の個体差を抑制し一様に雄への性転換が誘導されるような方法を開発する必要がある。しかし、このような個体差がMT処理過程のいつから生じるのか、また、処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との間にはどのような関連があるのかについては明らかにされていない。そこで本研究では、全雌個体群を用いてMT処理を行ない、MT処理を段階的に終了して各処理群の性転換について調査するとともに、各処理群のMT処理終了時の生殖腺を組織学的に観察することにより、MT処理終了時の生殖腺の状態と最終的な性転換結果との関連を調べた。