- 著者
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榎田 将司
纐纈 雄三
- 出版者
- 獣医疫学会
- 雑誌
- 獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.32-38, 2011-07
本研究の目的は間隙方向が雌豚に対して縦(PRL)または横(PPD)であるすのこ床で飼育されている妊娠豚の蹄損傷、行動、繁殖成績を比較することであった。2008年に繁殖一貫経営農場に3回訪問し、雌豚の後肢蹄と行動を観察した。全ての雌豚はPRLまたはPPDであるコンクリートすのこ床があるストールで飼育され、両床面は同じ豚舎に混在した。蹄損傷は5段階のスコアを用い、後肢8つの蹄、それぞれ6部位と蹄球肥大を記録した。4つの蹄損傷の測定値として、雌豚の合計スコア(TCLS)、部位のTCLS、雌豚の最高スコア(HCLS)、部位のHCLSを用いた。雌豚のTCLSは全部位のスコアの合計、部位のTCLSは部位毎のスコアの合計とした。雌豚のHCLSは全部位中最も高いスコア、部位のHCLSは各部位で最も高いスコアとした。比較のために統計分析として混合効果モデルを用いた。雌豚162頭の平均TCLS(±SEM)は9.5±0.44、雌豚のHCLS0、1、2、3、4の割合はそれぞれ1.2%、39.4%、54.5%、4.3%、0.6%であった。PPDの床面で飼育された雌豚は、PRLよりも蹄球のTCLSが高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向は、他の部位および雌豚のTCLSとは関連がなかった。PPDの床面で飼育された雌豚は、PRLよりも蹄壁と蹄球におけるHCLS≧1の割合が高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向とHCLS≧2と≧3の割合は他の部位において関連はなかった。すのこ床の間隙方向と行動、繁殖成績は関連がなかった。結論として、PPDの床面は妊娠豚の表皮における蹄損傷に関連したが、行動と繁殖成績に関連がなかった。