著者
城戸 佐登子 林谷 秀樹 岩崎 浩司 Alexandre Tomomitsu OKATANI 金子 賢一 小川 益男
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.77-87, 2001-12-20 (Released:2010-05-31)
参考文献数
19

1995年2月~1995年6月の5ヶ月間に, 関東地方1都6県の51動物病院で, ならびに1997年10月~1998年3月の6ケ月間に, 関西, 中国地方を中心にする1都2府10県の25動物病院で, カルテから選んだ15歳以上の犬および猫 (以下, 長寿犬または長寿猫とする) と, 1994年4月~1995年3月の1年間ならびに1997年12月~1998年10月の11ケ月間に, それぞれ上記の51と25動物病院に来院し, 5~9歳で死亡した犬および猫 (以下, 対照犬または対照猫) について, 性, 年齢などの宿主要因や食事や散歩などの飼育状況などについてアンケート調査を行い, 各項目についてオッズ比を算出し, 長寿に関連する要因の抽出を試み, 以下の成績を得た。1) 長寿群と対照群との間で, 犬では, 品種, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 散歩の頻度, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 猫では, 性別, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 両群問に有意差が認められた。2) 各項目ごとに長寿に関与するオッズ比を算出すると, 犬では「雑種」, 「毎年予防接種をした」, 「毎日散歩をした」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ3.36, 2.40, 3.21, 2.44, 2.46および3.75で有意に高く, 「室外で飼っていた」が0.25で有意に低かった。猫では「雌」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ5.16, 2.32, 2.34および2.00で有意に高く, 「室内外で自由に飼っていた」が0.41で有意に低かった。3) 以上の結果より, 長寿に関与する項目として抽出されたものは, 犬猫ともに飼育者が飼育動物に対して行っている適切な健康管理や飼育管理の項目がほとんどであり, 長寿な動物は飼育者から飼育や健康管理に手をかけられたものであることが明らかとなった。得られた成績は, 今後のコンパニオンアニマルの飼育や健康管理を考える上で貴重な基礎知見になるものと考えられる。
著者
小澤 義博
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.72-76, 2014-07-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
7

African swine fever (ASF) outbreaks which originated from Africa were chronologically reviewed with emphasis on how they were spread to Europe and the other continents. In 2007, ASF suddenly appeared in the countries in the east end of the Black Sea including Russia. As the disease has been well established in Russia, the strategies for ASF should be planned to fight against its risks from two continents, Africa and Russia (Eurasia). It will be extremely difficult to prevent the entry of ASF-infected wildlife from the countries that share land borders. Special attention should be paid to the fact that more than 50% of the swine population of the world is located in China. Feasibility studies should be performed to separate them from infected boars and feral swine by reinforcing barriers such as the Great Wall of China by adding wire walls and new electro-devices.
著者
山田 章雄
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-3, 2014-07-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
9

Globally more than 50,000 people die of rabies every year. Most of victims are kids under 15 year of age and are reported from Asia and Africa. There are only limited areas where rabies has been eliminated or historically no incursion of rabies has ever been reported. As more than 99% of rabies death in humans occurs by dog bite, it is evident that the most important and effective preventive measures is canine rabies control. In rabies endemic countries, therefore, every effort to control rabies by vaccination of dogs along with dog population control should be implemented. It has been shown that elimination of canine rabies is feasible even in those countries where the burden of rabies is tremendously high. On the other hand one of the most effective measures taken by rabies-free countries to maintain their rabies-free status is strict import restriction of dogs. In this article the measures implemented in several rabies-free countries or areas to sustain their rabies-free status have been reviewed.
著者
木村 祐哉 金井 一享 伊藤 直之 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 川畑 秀伸 前沢 政次
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-65, 2016

<p>ペット喪失に伴う深刻な心身の症状が2カ月を超えて持続する場合には,医師による対応が必要である可能性が高いと考えられる。東京および愛知の動物火葬施設で利用者に対して精神健康調査票(GHQ28)による追跡調査を実施したところ,死別直後で22/37名(59.5%),2カ月後で17/30名(56.7%),4カ月後で11/27名(40.7%)の遺族がリスク群と判定された。また,心身の症状に影響のある要因として,遺族の年齢,動物との関わり方,家族機能が挙げられた。ペット喪失後の問題を減らすためには,こうした要因をもつ飼育者に獣医療従事者が事前に気づき,予防的な対応をとることが重要と考えられる。</p>
著者
吉識 綾子 的場 洋平 浅川 満彦 高橋 樹史 中野 良宣 菊池 直哉
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.100-105, 2011
被引用文献数
1

北海道では野生化したアライグマが増加しているが,アライグマにおけるレプトスピラ症の浸潤状況は十分に知られていない。今回,北海道中央部で捕獲されたアライグマについてレプトスピラの浸潤調査を行った。<BR>捕獲されたアライグマ259頭中10頭(3.9%)からレプトスピラが分離された。肝臓2例(0.8%),腎臓9例(3.5%),尿1例(0.4%)からレプトスピラが分離された。PCR法により60頭(23.2%)からレプトスピラDNAが検出された。肝臓26例(10%),腎臓33例(12.7%),尿28例(10.8%)からレプトスピラDNAが検出された。11種の血清型のレプトスピラを用いて顕微鏡学的凝集反応(MAT)を行った。255頭中63頭(24.5%)でいずれかの血清型に対しての抗体が確認された。その中でもAutumnalisに対して高く,10%以上の陽性率を示した。PCRおよび抗体調査の結果,幼獣よりも成獣のほうが,また地域的には胆振地方の陽性率が高かった。<BR>以上の結果から,今回捕獲した北海道のアライグマにはレプトスピラが広く浸潤していることが明らかになった。アライグマは急増し,人,犬,家畜などとの接触の機会も増えてきている。したがって,アライグマからの人,犬,家畜へのレプトスピラ感染の可能性が危惧された。
著者
小澤 義博
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.132-137, 2013-12-20 (Released:2014-07-01)
参考文献数
8

Rabies situation in different parts of the world is reviewed with emphasis on wildlife rabies. Measures required for the prevention and control of wildlife rabies are listed, and it is stressed that the Ministry of Environment should play a major role in planning and implementing programs related to surveillance and control of wildlife rabies. It is also suggested that veterinary schools and the wildlife research institutes in Japan could form a group to carry out various research and investigations on the subjects related to the surveillance and control of wildlife rabies both in Japan and in the neighboring countries.
著者
木村 祐哉 金井 一享 伊藤 直之 近澤 征史朗 堀 泰智 星 史雄 川畑 秀伸 前沢 政次
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-65, 2016-07-20 (Released:2017-01-24)
参考文献数
17

ペット喪失に伴う深刻な心身の症状が2カ月を超えて持続する場合には,医師による対応が必要である可能性が高いと考えられる。東京および愛知の動物火葬施設で利用者に対して精神健康調査票(GHQ28)による追跡調査を実施したところ,死別直後で22/37名(59.5%),2カ月後で17/30名(56.7%),4カ月後で11/27名(40.7%)の遺族がリスク群と判定された。また,心身の症状に影響のある要因として,遺族の年齢,動物との関わり方,家族機能が挙げられた。ペット喪失後の問題を減らすためには,こうした要因をもつ飼育者に獣医療従事者が事前に気づき,予防的な対応をとることが重要と考えられる。
著者
宇根 有美
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.138-141, 2013-12-20 (Released:2014-07-01)
参考文献数
15

After the chytrid fungus was first discovered in Japan, studies have revealed the following facts,1)Chytrid fungus is present naturely in Japan.2)Japanese native amphibians are resistant to chytrid fungus.3)Wild chytrid fungus in Japan has many haplotypes. In other words, this organism has surprising diversity in Japan. The chytrid fungus that originates from the Giant salamander shows a unique genetic cluster of haplotypes.On the basis of these facts, we propose a new hypothesis, i.e., “Chytrid fungus has coevolved with native amphibians as a natural host in East Asia, including Japan.”. In other words, in the long process of the evolution of chytrid fungus and amphibians in East Asia, an equilibrium has formed between the hosts (amphibians) and the pathogen (chytrid fungus) which has continued up to the present. This hypothesis may explain the present state of chytrid fungus in Japan.To prove this hypothesis, it is necessary to survey and analyze the genetic and ecological characteristics of chytrid fungus around the world, and research in East Asia is a priority.
著者
小澤 義博
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.72-76, 2014

アフリカ豚コレラ(ASF)は昔からアフリカ在来のwarthohog(イボイノシシ),wild boar(イノシシ),soft ticks(ダニの一種)に不顕潜感染を続けてきたAsfivirusによる豚の病気である。アジアや欧米でよく知られている「豚コレラ」とは全く異なるウイルスによっておこる病気である。アフリカに白人が豚を持ち込むまではASFウイルスの存在すら知られていなかった。ASFウイルスは2本錯のDNAウイルスで,感染した豚や野生動物の血液や組織や肉製品,ダニなどの中で長期間生存できる。またアフリカにおける感受性を有する野生動物やダニは,ASFに感染してもなんら症状を示さず生存することが知られている。豚がASFに感染すると高い死亡率を示す急性のウイルス病であるが,時として慢性経過を示すASFウイルスの存在することが知られている。ASFウイルスは自然環境に強く,4度Cに保存された血液中で約1年半生存することがある。感染した豚の排泄物中でも室温で約1年半生存できる。また豚舎の中では約一ヶ月生存できる。骨付き肉では約150日間,塩付け乾燥ハムで140日間,凍結肉では数年間生存できる。ASFウイルスには多くの遺伝子型が存在するが,イベリア半島に広がったウィルスは1型で比較的に弱毒のウイルスであるが,2007年に黒海地方に広がったウイルスは2型で急性の経過をたどる。ASFウィルスは人には感染しないが,感染した豚には色々抗体が出来る。しかし中和抗体ができにくいので弱毒生ワクチンの開発が試みられてきたが,未だに実用化されていない。ASFの治療薬は存在しない。従って今のところASFのコントロールや撲滅には,感染国の豚やイノシシなどの感受性のある動物の殺処分に頼るしかない。しかし特定の野生動物の完全な淘汰は極めて難しく,ロシアは今のところ国内のイノシシのコントロール/淘汰には自信がないようである。
著者
島村 麻子
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.67-73, 2011-07-20 (Released:2013-01-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Anicom, the leading pet insurer in Japan started its operation 12 years ago, and currently holds almost 400,000 pet insurance policies in force. Insurance claim data could provide epidemiological information. We tried to investigate the prevalence of disease with analysis of the above data. All insurance claim data of 217,150 dogs (male 115,192 and female101,958) contracted with Anicom pet insurance from April 1 2008 to March 31 2009 were used for the research. The high incidence of insured dogs in Japan is 20.9% in Ear Diseases, 19.7% in Dermatologic Diseases, and 15.6%in Gastrointestinal Diseases. The incidence of foreign body ingestion was significantly different; 3.7% in puppies under one year of age, 2.2% in 1 year old, and under 1.4% in 3-10 years old. It is considered that the pet insurance data would provide the tendency of disease in dogs. Further, it will be required to develop effective sampling methods for more valuable data to research on the better treatments and prevention of animal diseases.
著者
林谷 秀樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.85-85, 2010

我が国における理想的な獣医学教育像を描くためには,(1) 学生の具体的な到達目標を明示すること,(2) 目標を達成するために必要なカリキュラムの内容(シラバス)を明らかにすること,(3) 教育手法を明示しておくことが不可欠であるとの認識のもと,文部科学省の先導的大学改革推進委託事業に「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」が東京大学を代表者となって採択されたことを受けて,平成21年7月から獣医学教育のコア・カリキュラムの策定が開始された。本事業では獣医学の4分野(基礎,病態,応用ならびに臨床)の中から,取り上げるべき授業科目として50科目が選択され,それぞれの科目について学生が習得すべき基本的内容について検討されている。コア・カリキュラムとはそれぞれの分野で必ず学ぶべき必要最小限の共通カリキュラムであり,これまでに医学,薬学,歯学および法科大学院の4つの分野の教育で策定されている。獣医学教育でのコア・カリキュラムで策定される内容は,各科目で学ぶべき内容の2/3であり,残りの1/3については各大学が独自の理念や社会的要求に基づいた判断により実施することになっている。<BR>これまで,獣医学教育の中で,獣医疫学は公衆衛生学,獣医衛生学,獣医伝染病学などの科目の中で教育されていることが多く,近年,獣医疫学を独立した科目として教育する大学が増えつつあるものの,「獣医師国家試験ガイドライン」の中では独立した科目としては扱われていなかった。しかし,今回「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」事業では,獣医疫学は応用獣医学の中の独立した一科目として選定され,そのコア・カリキュラムが検討されることとなった。獣医疫学のコア・カリキュラム策定に当たり,3名の委員(加藤行男,筒井俊之および林谷秀樹,いずれも獣医疫学会会員)が選出され,平成22年7月からそのコア・カリキュラムに関して検討を開始し,平成23年2月に案が完成した。獣医疫学に関するカリキュラムとして,獣医疫学会ではすでに2007年に獣医疫学に関するカリキュラムを学会から提言しているが,今回のコア・カリキュラム案もほぼそれに従った形になっている。コア・カリキュラムは,科目を通して全体で到達すべき目標と項目(20項目)ごとに一般目標と到達目標が設定されている。今回,委員で策定した獣医疫学のコア・カリキュラムについてその項目を下記に記した。このコア・カリキュラムは獣医学関係者や一般人からのパブリックコメントを得て修正し,平成23年3月に公表される予定となっている。<BR>いずれにしても,獣医疫学のコア・カリキュラムが策定されるということは,今後獣医系大学で獣医疫学が必須科目として講義されることになるということであり,獣医疫学の発展と普及を目指す本学会としては喜ばしい限りである。現在,獣医疫学会では,このコア・カリキュラムに準拠した形で獣医疫学の教科書の改訂を進めており,来春にはコア・カリキュラムに準拠した新しい獣医疫学の教科書が近代出版から発行される予定である。<BR><B>獣医疫学コア・カリキュラム(案)</B><BR>(1)疫学の概念 (16)スクリーニング<BR>(2)健康疾病事象の発生要因 (17)感染症の疫学<BR>(3)疫学で用いられる指標 (18)特定分野の疫学<BR>(4)疫学に必要な統計手法 (19)リスクアセスメント<BR>(5)標本抽出 (20)疾病の経済評価<BR>(6)疫学研究の信頼性と妥当性<BR>(7)疫学資料<BR>(8)記述疫学<BR>(9)生態学的研究<BR>(10)横断研究<BR>(11)症例対照研究<BR>(12)コホート研究<BR>(13)介入研究<BR>(14)因果関係<BR>(15)サーベイランス
著者
山本 茂貴 石渡 正樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.51-62, 1998
被引用文献数
1

食中毒による被害はこれまで事件数, 患者数, 死者数という直接的な被害を表す数値によって表現されてきた。しかし, このような指標は原因の異なる食中毒の被害を十分に比較できず, 食中毒が社会的又は経済的に及ぼす影響について評価し難いという問題を持っている。<BR>細菌性食中毒による経済損失の推計方法及び推計に必要なデータを調べるために米国農務省のBuzbyらが行ったcost-of-illnessの推計方法を検討した。<BR>その結果, 現在の日本ではBuzbyらが使用したものと同様な疫学データがないために同じ方法で推計を行うことができないことが判明した。そのため, 現在入手可能なデータを使用して横浜市におけるサルモネラ食中毒のcost-of-illnessの推計を行なった結果, 1991~1995年に横浜市内でおきた食中毒事件のcost-of-illnessはおよそ850万円 (1993年の円に換算) (1年あたり平均約170万円, 患者1人あたりの費用は約44, 000円) , 横浜市民のなかで発生したサルモネラ食中毒の1年間のcost-of-illnessはおよそ7, 700万~5億3, 000万円) (患者1人あたりの費用は約23, 000円) と推計された。<BR>今後, 精度の高いcost-of-illnessの推計を行うためには, 使用する質の高いデータを得るための疫学研究の充実が必要であると考えられる。
著者
前田 健 水谷 哲也 田口 文広
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.88-93, 2011-12-20 (Released:2012-03-23)
参考文献数
21

最近,新興感染症の原因ウイルスのレゼルボアとして,コウモリが注目されている。コウモリから直接ヒトへの感染による新興感染症の発生は稀であるが,コウモリ由来のウイルスが家畜や他の野生動物に感染し,そこからヒトへの感染が拡大し,致死率の高い感染症となることは,ニパウイルスやヘンドラウイルス感染症,重症急性呼吸器症候群(SARS)の例に見られるように,コウモリ由来ウイルスによる新興感染症の一つのパターンかもしれない。SARSコロナウイルスの起源がコウモリ由来ウイルスの可能性が指摘されてから,コウモリからのコロナウイルス分離に限らず未知のウイルス遺伝子の分離が盛んに行われる様になった。また,遺伝子探索方法も飛躍的に進展し,種々のウイルス遺伝子のコウモリからの分離が報告されるようになった.本稿では,これらのコウモリから分離されたウイルスで新興感染症に関係するウイルスのみならず,新たに分離されたウイルスに付いても言及する。
著者
原田 和記
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.85-90, 2015-12-20 (Released:2016-07-01)
参考文献数
11

In this time, I reviewed epidemiology of antimicrobial-resistant bacteria isolated from companion animals. In Enterobacteriaceae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, and Enterobacter spp. relatively frequently exhibited resistance to extended-spectrum cephalosporins and fluoroquinolones. Most of the ESC-resistant isolates harbored extended-spectrum β-lactamases (ESBLs). Some of the ESBL-producing isolates were genetically related and detected in specific veterinary hospitals. On the other hand, more than half of Proteus mirabilis isolates were susceptible to the tested antimicrobials. Most of Pseudomonas aeruginosa isolates were highly susceptible against most of antipseudomonal drugs, except for fluoroquinolones. In Staphylococcus pseudintermedius, methicillin-resistant isolates, exhibiting resistance against multiple drugs, become prevalent, especially in secondary medical hospital. In Enterococci, isolates from animals with antimicrobial exposure were more resistant to several antimicrobials, compared with those without antimicrobial exposure. Overall, in companion animals, ESBL-producing Enterobacteriaceae and methicillin-resistant S. pseudintermedius have been prevalent and, thus continuous monitoring would be needed to understand the trend of these antimicrobial-resistant bacteria.
著者
高崎 智彦
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-3, 2015-07-20 (Released:2016-01-04)

Dengue fever is a mosquito-borne viral disease. Dengue virus (DENV) infections occur in most of the tropical and subtropical areas of the world. DENV infection with any of four serotypes leads to a broad spectrum of clinical symptoms and their severity, including asymptomatic infection, dengue fever (DF) and fatal dengue hemorrhagic fever (DHF). DF/DHF is considered to be one of the most important re-emerging infectious diseases. Physicians and pediatricians in non-endemic countries are often unfamiliar with the symptoms and unaware of the potential importation of patients with DF/DHF. In August of 1942, an epidemic occurred suddenly in Nagasaki city and then in Sasebo city, Osaka and Kobe city. The epidemic in 1942 was subsided in November, but in the next summer it broke out again and recurred every summer until 1945. There were no dengue endemics in Japan since then.In late August of 2014, three autochthonous dengue cases were reported in Japan. Since then, as of 31 December 2014, a total of 162 autochthonous cases have been confirmed. While cases were reported from throughout Japan, the majority was linked to visiting a large park or its vicinity in Tokyo, and the serotype detected has been serotype 1.
著者
鎌川 浩之
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.4-10, 2014-07-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
17

平成16年11月,狂犬病の侵入防止に万全を期すため,日本における犬・猫等の検疫制度について,それまでのワクチン接種と係留を主体とする制度から,マイクロチップの装着,ワクチン接種,抗体価の測定,輸出国での180日間の待機等からなる新たな制度へと大幅に変更された。この変更による日本への狂犬病の侵入リスクの変化について,筆者が動物検疫所精密検査部危険度分析課に在籍していた平成20年頃,当時の衛藤精密検査部長をはじめとした職員の方々の協力を得つつ,リスク評価を行った。その結果については,英国の学術雑誌「Epidemiology and Infection」に学術論文として公表した。また,このリスク評価の内容については,第39回獣医疫学会学術集会シンポジウムにて,犬等の動物検疫制度の説明と併せて紹介する機会をいただいた。今般,同誌の了解を得て,当該論文の日本語訳(一部図表を追加)を紹介する。
著者
榎田 将司 纐纈 雄三
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.32-37, 2011

本研究の目的は間隙方向が雌豚に対して縦(PRL)または横(PPD)であるすのこ床で飼育されている妊娠豚の蹄損傷,行動,繁殖成績を比較することであった。2008年に繁殖一貫経営農場に3回訪問し,雌豚の後肢蹄と行動を観察した。全ての雌豚はPRLまたはPPDであるコンクリートすのこ床があるストールで飼育され,両床面は同じ豚舎に混在した。蹄損傷は5段階のスコアを用い,後肢8つの蹄,それぞれ6部位と蹄球肥大を記録した。4つの蹄損傷の測定値として,雌豚の合計スコア(TCLS),部位のTCLS,雌豚の最高スコア(HCLS),部位のHCLSを用いた。雌豚のTCLSは全部位のスコアの合計,部位のTCLSは部位毎のスコアの合計とした。雌豚のHCLSは全部位中最も高いスコア,部位のHCLSは各部位で最も高いスコアとした。比較のために統計分析として混合効果モデルを用いた。<br> 雌豚162頭の平均TCLS (±SEM)は9.5±0.44,雌豚のHCLS 0, 1,2, 3,4の割合はそれぞれ1.2%, 39.4%, 54.5%, 4.3%, 0.6%であった。PPDの床面で飼育された雌豚は,PRLよりも蹄球のTCLSが高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向は,他の部位および雌豚のTCLSとは関連がなかった。PPDの床面で飼育された雌豚は,PRLよりも蹄壁と蹄球におけるHCLS1の割合が高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向とHCLS2と3の割合は他の部位において関連はなかった。すのこ床の間隙方向と行動,繁殖成績は関連がなかった。結論として,PPDの床面は妊娠豚の表皮における蹄損傷に関連したが,行動と繁殖成績に関連がなかった。