著者
荒井 延明 薄井 志保 纐纈 雄三
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.126-134, 2012-12-20 (Released:2013-07-01)
参考文献数
32

本研究の目的は,犬のアトピー性皮膚炎(CAD)の臨床症状と発症年齢について記述疫学の手法で調べることであった。全国996の病院で獣医師によりCADと診断された2,338頭の犬の記録から,CADと性別,地区,飼料や飼育者の喫煙状態が評価された。回帰分析のBackward法を使い,有意が認められなかった変数(P>0.05)を除去した。CADの平均発症年齢は,2.56歳(0.05 SEM)であった。発症年齢が低くなることと関係があったのは,品種,避妊済みメス,同居動物が猫,主な飼育者が喫煙者であった(P<0.05)。臨床症状は,品種,メス,同居動物が猫,主な飼育者が喫煙者と関連があった(P<0.05)。この研究では,CADの臨床症状と発症年齢について品種,性別,飼育環境などとの関連があることを示唆した。
著者
榎田 将司 纐纈 雄三
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.32-37, 2011
被引用文献数
1

本研究の目的は間隙方向が雌豚に対して縦(PRL)または横(PPD)であるすのこ床で飼育されている妊娠豚の蹄損傷,行動,繁殖成績を比較することであった。2008年に繁殖一貫経営農場に3回訪問し,雌豚の後肢蹄と行動を観察した。全ての雌豚はPRLまたはPPDであるコンクリートすのこ床があるストールで飼育され,両床面は同じ豚舎に混在した。蹄損傷は5段階のスコアを用い,後肢8つの蹄,それぞれ6部位と蹄球肥大を記録した。4つの蹄損傷の測定値として,雌豚の合計スコア(TCLS),部位のTCLS,雌豚の最高スコア(HCLS),部位のHCLSを用いた。雌豚のTCLSは全部位のスコアの合計,部位のTCLSは部位毎のスコアの合計とした。雌豚のHCLSは全部位中最も高いスコア,部位のHCLSは各部位で最も高いスコアとした。比較のために統計分析として混合効果モデルを用いた。<br> 雌豚162頭の平均TCLS (±SEM)は9.5±0.44,雌豚のHCLS 0, 1,2, 3,4の割合はそれぞれ1.2%, 39.4%, 54.5%, 4.3%, 0.6%であった。PPDの床面で飼育された雌豚は,PRLよりも蹄球のTCLSが高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向は,他の部位および雌豚のTCLSとは関連がなかった。PPDの床面で飼育された雌豚は,PRLよりも蹄壁と蹄球におけるHCLS1の割合が高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向とHCLS2と3の割合は他の部位において関連はなかった。すのこ床の間隙方向と行動,繁殖成績は関連がなかった。結論として,PPDの床面は妊娠豚の表皮における蹄損傷に関連したが,行動と繁殖成績に関連がなかった。
著者
永井 久美子 佐藤 塁 纐纈 雄三
出版者
明治大学農学部
巻号頁・発行日
no.140, pp.9-23, 2004 (Released:2010-04-05)

本研究の目的は、滞在型の農業動物介在教育(FAAE)による体験が、都市生活を営む農学部学生の農業動物への認識や意見、そして気分や生理指標に及ぼす影響について検証することであった。このFAAEは、明治大学農学科の畜産実習・学生実験の一部として行われた。豚約50頭と他に肉牛と羊を持つ明治大学付属農場で実施されたFAAEの前後で2回、履修学生を被験者として調査をおこなった。FAAEは、大学寮での2泊3日で飼料給与、豚の体重測定や行動観察等を行った。さらに無作為に選ばれた学生については、血圧、体験の前・中・後で心電モニター図、脳波、気分を検査した。自己記入式質問紙法のPOMSで、6つの気分尺度、すなわち、活気、抑うつ?落ち込み、混乱、緊張?不安、怒り?敵意、疲労を測定した。有効被験者97人のうち、体験前後で農業動物が好きという回答が51.5%から62.5%に増加し、約75%が畜産に興味を持ったと回答した。彼等の農業動物と畜産への認識は体験で変化した。90%以上の学生がFAAEは農業と食育の重要性の理解、人格の形成に役立つと回答した。POMSでは体験前後と比較して、積極的な気分を表わす「活気」が体験中に上昇した。否定的な気分を表わす他の尺度は体験中に減少したが、体験後も変化はなかった。血圧と脳アルファ波占有割合は体験前後で変化しなかった。心電モニターからのR-R間隔は変化した。これらの結果から、FAAEは農業動物への認識、気分や生理にも影響があることが示唆された。
著者
飯田 涼介 金子 麻衣 纐纈 雄三
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.8-16, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,種雌豚の3産次までの生存割合が低い繁殖農場(LRR農場)の若雌種豚の育成法と生涯繁殖成績を特徴づけることと,低い生存割合に関するマネジメント因子を調べることであった。3産次までの生存割合は,3産次まで生存した雌豚数を初交配雌豚の数で割り算出した。若雌種豚の育成法と農場マネジメントについての調査(性成熟前の制限給餌の有無,育成雌豚の飼料の種類,自家育成雌豚の使用割合)を行うために,2008年に同一の生産記録ソフトを用いる115農場に調査票を送付した。回答のあった81農場(70.4%)の記録を2008年に導入された15,678頭の雌豚の繁殖成績と合わせた。3産次までの雌豚の生存割合の下位25パーセンタイル(71.6%)を基に,農場をLRR農場と普通農場に分類した。農場レベルの分析では,LRR農場は普通農場に比べて,分娩割合が3.4%低く,淘汰割合が7.7%高かった(P<0.05)。また,LRR農場は普通農場に比べて,制限給餌を行う農場,育成雌豚に妊娠豚用の飼料を使用する農場の割合が高かった(P<0.05)。さらに,LRR農場の自家育成雌豚の使用割合は,普通農場に比べて29.2%高かった(P<0.05)。雌豚レベルの分析では,LRR農場の雌豚の繁殖障害による1-3産次までの淘汰割合が,普通農場に比べて6.2-11.2%高かった(P<0.05)。しかし,雌豚の生涯平均離乳子豚数における農場グループ間での差は見られなかった(P=0.79)。マルチレベルの比例ハザードモデルでは,雌豚の淘汰ハザードは,性成熟前の制限給餌と高い自家育成雌豚使用割合に関連したが(P<0.05),育成雌豚の飼料の種類とは関連しなかった(P=0.21)。初交配後60週齢における生存確率は,制限給餌された雌豚で80.1%となり,制限給餌されなかった雌豚で84.1%となった。結論として,雌豚の長期生存性の実現に,性成熟前の過度な飼料制限は勧められない。さらに,自家育成雌豚を使用する際に,若雌種豚の繁殖形質の健全性に関する選抜をより厳しく行うことを勧める。
著者
高梨 ありこ 纐纈 雄三
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.10-14, 2011-07

本研究は、低生涯生産性を示す母豚(LE母豚)に関連する要因の探査を目的とした。要因は、初交配日齢(AFM)、産次0の種付け回数、産次1の生存産子数(PBA)とした。本研究では、101農場における2001-2003年に導入された34,728頭の分娩記録を用いた。LE母豚は、年間化生涯PBAの下位25パーセンタイルを持つ母豚と定義した。AFMは151-209日、210-230日、231-251日、252-272日、273-293日、294-365日の6グループに分類した。産次1のPBAは≦7頭、8-11頭、≧12頭の3グループに分類した。産次0の種付け回数は、初回種付けと再種付けに分類した。統計分析には混合効果モデルを用いた。母豚のAFMが151-209日から294-365日に上がるにつれ、LE母豚になる割合は、18.7%から37.3%に増加した(p<0.05)。再種付け未経産豚は、初回種付けと比べて、LE母豚になる割合が10.3%高かった(P<0.05)。産次1のPBAが≦7頭の母豚は、8-11頭と≧12頭の母豚と比べて、LE母豚になる割合がそれぞれ19.4%と28.5%高かった(P<0.05)。結論として、LE母豚になる割合を減らすためには、成熟した未経産豚における早い日齢での初交配、再種付け未経産豚割合を減少させること、そして産次1におけるPBAを増やすことが推奨される。
著者
榎田 将司 纐纈 雄三
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.32-38, 2011-07

本研究の目的は間隙方向が雌豚に対して縦(PRL)または横(PPD)であるすのこ床で飼育されている妊娠豚の蹄損傷、行動、繁殖成績を比較することであった。2008年に繁殖一貫経営農場に3回訪問し、雌豚の後肢蹄と行動を観察した。全ての雌豚はPRLまたはPPDであるコンクリートすのこ床があるストールで飼育され、両床面は同じ豚舎に混在した。蹄損傷は5段階のスコアを用い、後肢8つの蹄、それぞれ6部位と蹄球肥大を記録した。4つの蹄損傷の測定値として、雌豚の合計スコア(TCLS)、部位のTCLS、雌豚の最高スコア(HCLS)、部位のHCLSを用いた。雌豚のTCLSは全部位のスコアの合計、部位のTCLSは部位毎のスコアの合計とした。雌豚のHCLSは全部位中最も高いスコア、部位のHCLSは各部位で最も高いスコアとした。比較のために統計分析として混合効果モデルを用いた。雌豚162頭の平均TCLS(±SEM)は9.5±0.44、雌豚のHCLS0、1、2、3、4の割合はそれぞれ1.2%、39.4%、54.5%、4.3%、0.6%であった。PPDの床面で飼育された雌豚は、PRLよりも蹄球のTCLSが高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向は、他の部位および雌豚のTCLSとは関連がなかった。PPDの床面で飼育された雌豚は、PRLよりも蹄壁と蹄球におけるHCLS≧1の割合が高かった(P<0.05)。すのこ床の間隙方向とHCLS≧2と≧3の割合は他の部位において関連はなかった。すのこ床の間隙方向と行動、繁殖成績は関連がなかった。結論として、PPDの床面は妊娠豚の表皮における蹄損傷に関連したが、行動と繁殖成績に関連がなかった。