著者
湯浅 陽一
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.124, pp.1-36, 2012-03

2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発事故は、システム災害である。この2つの出来事を併記しなければならない現実は、私たちが形作ってきた社会システムの産物である。社会システムは複数のサブシステムによって構成されるが、本稿では、電力システムと地域社会システムを取り上げ、両者の性質と相互関係について検討する。電力システムについては現状の原子力システムと、代替案として提示されている再生可能エネルギーシステムを対置し、互いの相違点をみる。そして原子力システムと地域社会システムの相互関係について、立地手順や立地自治体の財政に与える影響から分析する。日本での原子力発電所の立地には、土地収用を用いず、主として広告や教育、交付金などの手法によって進められてきたという特徴がある。とくに電源三法交付金などの原発マネーは、立地自治体に対して一時的に、極度の豊かさをもたらす。しかしそれは持続可能なものではなく、地域社会の自律性を低下させていく効果をもつ。原子力システムと地域社会システムの関係は支配的システムと従属的システムとして成り立っており、このような構造のもとでは、立地の民主性と地域社会の自律性は相反関係を示す。原子力システムから再エネシステムへの移行は、単に技術的に発電施設を置き換えるということだけでなく、電力システムの基本的性質を変え、地域社会システムとの関係性も変化させながら、立地の民主性と地域社会の自律性を相乗関係へと切り替えていくことでもある。

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