著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-16, 2013-05

本稿の目的は、支援の中にある当事者やそれに深く関係するニーズについて捉え、支援と当事者性について考察することである。個別ニーズの存在をもとに支援を行うことは支援-被支援関係で一般的であるが、その「個別ニーズ視点」におけるニーズは支援者も強くかかわるものであり、被支援者にのみ存在するのではなく、また被支援者の「主体性」「強さ」を規定してきたのは支援者である。一方、「当事者主権」が示す自己決定権に裏打ちされた権利主体としての当事者は「ニーズの帰属する主体」であり、「承認ニーズ」は本人を基点として認められたニーズである。支援-被支援の協働においても双方向的に関係はあり、支援-被支援におけるラポールの形成・相互理解はニーズを把握する上で重要である。意思決定にかかる支援において支援者は決定に参画することに共生の形が見出される。支援-被支援関係は相互に欠くべからざる関係として展開されること、その中でこそ当事者の意思・ニーズを確認し尊重していくことができること、それは権利擁護や共に生きていく土壌を拓くものである。

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